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最終話

 おっさんと女子高生のラブコメになる予定です。

 ラブコメが何なのか、よくわかってないまま書いていってます。

 よろしくお願いします。

「おじさんが変態かどうか、今、関係あるかい?」


 突然、会話に割って入ってきた変態がギロリとこちらを睨んでくる。

 あんたが変態かどうかは関係あるんじゃないかな。

 ここって学校の敷地内だし、いや、敷地外であってもブリーフ一丁のおっさんはヤバい。


「やっと会えた!おじさん!」

「ちょっと待とうか」


 抱きつかんばかりの勢いでおっさんに向かって走り出した女子生徒の腕を咄嗟に掴む。

 教師が生徒に触れるのも、変態と触れ合わせるのも、どちらも何らかのハラスメントになりそうだが後者よりはマシだろう。


「君ね、七不思議を探してるって言ってなかった?」

「おじさんがそうですよ!」

「おっさんみたいな猫って話じゃなかったか!おっさんじゃん。しかもヤバめの」

「猫ですってば!」

「はぁ?ちょっと、猫って‥‥、ネコってこと!?タチとかネコとかそういう、アレなのかね!君!」

「はぁ!?」


 たしかにこの年代の子どもたちにとって同性愛者というのは不思議というか、異質なものなのかもしれない。

 しかしだ、だからと言って七不思議扱いするのはどうなんだろうか。

 多様性が謳われる昨今、そういう考え方やスタンスは流石に放っておいちゃいけないんじゃないか。


「いいか、ちゃんと聞いてほしいんだけど。まず彼のことを七不思議扱いしてはいけません」

「そこの兄ちゃんのことは気に食わねーが、おじさんが七不思議じゃないのは言うとおりだぜ」

「ほら。ああ言ってるだろう?」

「先生、おじさん、ごめんなさい」


「今は多様性と言って、お互いの外見や考え方に対する差別や偏見を無くして、違いを認めていこうという方向に世界は向かっているんだ。例え同性愛者のブリーフ一丁の男性だとしてもだね‥‥」


 あれ?

 同性愛者依然に、こいつブリーフ一丁だな。

 とにかく明るい安村でもないのに。


「へ、変態だぁー!」

「そもそも同性愛者じゃねぇ!」


 言いながらドスドスと近づいてきたおっさんが掴みかかってくる。

 女子生徒が横で「キャー!オジサンカワイイ!」と言っているのが聞こえる。

 正気か、このガキ。


「一言言いたいことがある」

「な、何なんですかぁ」


 おっさんの圧に思わず敬語になってしまう。

 脂ぎった顔面が近づいてくる。

 サヨナラ、俺のファーストキス。


「その生徒に対する態度はなんだ!」

「えっ」

「この夏のアンタとお嬢ちゃんの会話は聞いてたがなぁ。生徒に子どもが嫌いだと悟られたり、悪い勤務態度を隠そうともしなかったり、恥ずかしくないのか!大人として!」

「恥ずかしくはあるけど‥‥、おっさん(変態)にだけは言われたくない!」

「口答えするなっ!」


 辺りにバチーン!と湿った音が響く。

 いきなりビンタされた俺の目の前は真っ白になっていた。

 俺の胸ぐらを掴み、おっさんは何度も俺を揺さぶる。


「教師たるもの常に生徒の模範であると誓え!」

「ち、誓います」

「まずはお嬢ちゃんに謝れ!」

「はい、あの、すみませんでした」


 俺、そんなに悪いことした?生徒にちょっと愚痴っただけじゃん、とも思ったが次に口答えしたら殺されそうだったので素直に謝る。

 今日までの女子生徒に対する態度は、うまく生徒指導ができないことへの八つ当たりがなかったか、と言えば嘘になるので謝ることに否やはない。

 謝った俺に対して、声をかけるでもなく女子生徒は「キャー!オジサンカッコイイ!」とハシャいでいる。


「あの、彼女があなたのことを猫だと言っているのは一体どういうことですか?」

「お嬢ちゃんには本当に俺が猫に見えてて、兄ちゃんには別のものに見えてるのさ」

「ずっとおじさんは猫だって言ってるのに。先生にはどう見えてるの?」

「どうって。真っ白なブリーフを履いた、裸の太った、妙に脂ぎったおっさんだよ」

「みたいだな」


 眼前の男は、おっさんであり猫でもあるらしい。

 いや、そんな存在が本当にいたんだったら七不思議だろ。


「こんなナリでも元は人間だったんだ」

「どうして猫になっちゃったの?」

「おじさんはずっと昔、この学校の教師だったんだ。これでも女子生徒からはモテたんだぜ」


 おっさんが「へへっ」と照れながら鼻の下を人差し指で掻く。

 何だこいつ。


「それがどうして、そんな姿になったんだ?」

「ある女子生徒から告白されてな、それを断ったら後ろからドスッよ。気づいたときには死んでしばらく経ってたし、なぜか醜いおっさんになっててなぁ」

「元は違ったんだ」

「告白される程度には整ったルックスだったさ。ただまぁ幽霊になったんだと思ってフラついてたら生徒に見つかってな。これは通報される!と思ったら『猫だ!可愛い!』とか言われたのよ」

「おじさんは可愛いよ」

「ちょっと静かにしてなさい」


「そこからしばらくは教師時代のクセでな。悩める生徒の前に現れアドバイスをしてたんだけどな‥‥」

「何があったの?」

「ある日、教師に見つかったときに騒ぎになっちまったのよ。それ以来ずっと隠れててな。お嬢ちゃんに見つかったときは驚いたぜ」

「俺が子供のころ、県内の学校で不審者騒ぎがあったってニュースになってたっけ。ここだったのかな」


「それが俺だったのかもなぁ。しかし兄ちゃんのお陰で謎が解けたぜ」

「何が?」

「不審者騒ぎになった理由のさ。大人には猫以外の姿で見えてることはあの騒ぎで分かってたんだが、何に見えてるのかは分からなくてな」

「そういうことね」


「私が大人になったら、おじさんは猫じゃなくなっちゃうのかな」


 沈黙が流れる。

 何と言うのが正解なのだろうか。


「どうなんですかね?」

「うーん、おっさんに見えるんじゃねーかな」

「そりゃそうですよね」


 俺とおっさんが互いに愛想笑いをしていると、女子生徒がおっさんに突然抱きついた。

 何やってんだ!君の中では猫に抱きついただけかもしれないけど、俺からすると事件が起きてるぞ!


「こらこら、やめなさいって!他の先生とかに見られたら洒落にならんぞ!」

「おじさん!私!おじさんが好きかも!」

「バッ、この不良少女は!いきなり変なこと言うな、おっさんも困ってるでしょ!」


 俺は急いで女子生徒をおっさんから引き剥がそうとするが離れない。

 握力ゴリラなんか、この子。


「いきなりじゃないよ!これを伝えたくて先生にもおじさんを探してもらってたんだもん!」

「それは初耳!」


 俺たちがおっさんを巡って争っていると、おっさんが女子生徒の肩に優しく手を置いた。


「そもそも、おじさんはもう死んでるんだ。お嬢ちゃんの想いには答えられないよ」

「ですよねぇ!」

「でも、あの、私が大人になっておじさんのことが猫じゃないように見えるまで待ってくれないかな」

「おい!少女漫画みたいな『片思いは許して』的なのやめろ!」


 学年主任に怯えていた()の叫びが校舎裏に響く。

 女子生徒が進学し、教育実習生になって俺の目の前に現れるまで、あと七年。


 大人になった彼女がおっさんに再び出会い、おっさんに抱きつくまで、あと。


「何この汚いラブコメ。まぁ当人たちが良いなら良いんだろうけど」


 そんな二人を見た俺が呟くまで、あと。


挿絵(By みてみん)

 最終話ちょっといきなりだと思ったでしょう。

 実は最終話は二話と三話の間にあらかた書いてたので元からこんな感じを予定してました。

 ラブコメって、結局何だったんですかね。

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