7話
王国へと帰る日がやってきた。
ルシアは上手く交渉事を纏めたらしい。
そして、僕の腕に抱きついているアッティラ。
異民族の町では、昼はアッティラと夜はルシアと共に過ごしていた。
最初は戸惑っていたが、慣れとは恐ろしいもので今ではこの状況を受け入れてしまっている自分がいる。
アッティラも僕たちに付いてくるとの事だ。
ちなみに、ルシアとアッティラの仲は良好である。
僕達を乗せた馬車はゆっくりと王都に向かって進んでいく。
「ねえ、トニー」
ルシアが声をかけてきた。
「どうしたんですか?」
「今日も、一緒に寝ても良い?」
「別に構いませんけど……」
「やった!」
無邪気な笑みを見せる彼女。
「私も混ざって良いか!?」
「ええ、勿論」
「ありがとな」
アッティラも笑顔を見せた。
この光景を見ると少しだけ心が落ち着く。
そんなことを考えながら窓の外を眺めていた。
「なあ、トニー。一つ聞いてもいいか?」
「何ですか?」
「お前さ、なんで俺たちと一緒に居ようと思ったんだ?」
「それは……」
僕は言葉に詰まる。
「いや、言いたくなければ言わなくて良いぞ。」
「すみません…ただ恥ずかしくて……」
「謝る事は無い。ただ、ちょっと疑問に思っただけだ。」
「僕はその…アッティラやルシアみたいな可愛い子に言い寄られて嬉しかっただけで…」
「へぇ〜そうなのか。」
アッティラはニヤリと笑う。
しかし頬が赤く、少し恥ずかしがってるのがわかる
「もしかして、トニーは幼い女が好みか?」
「え?」
「だって、俺やルシアもちっちゃいだろ。」
「確かに……言われてみると……」
僕はハッとする。
「アッティラさん!それは違います!ロリコンというのはですね……」
「ロリコンというのには興味ない。」
「そうですよね……」
僕は肩を落とす。
「私が聞きたいのは、どうしてルシアや私のことを好きになったのかってことだよ。」
「うーん、そう言われると難しいですけど……」
「どんなところが好きなんだ?」
「やっぱり優しいところとかですかね……。あと、ルシアは凄く美人だし、アッティラは凄い元気で居て楽しいし……」
「ふむ、なるほどな。」
「はい……」
僕は顔を赤らめる。
「でも、僕は二人に迷惑をかけてばかりで……」
「それは違うぜ。」
アッティラは僕の言葉を遮る。
「トニーのおかげで毎日が楽しくなった。それにルシアとも仲良くなれたのはトニーのおかげだ。」
「私も同じよ。」
「そう言って貰えると嬉しいです。」
「だから、ありがとう。」
「私からも礼を言うわ。」
「いえ、こちらこそ!」
こうして、僕たちは笑い合った。
それからしばらくして僕達は王都へとたどり着いた。
ルシアとアッティラは今回の報告の為、別行動だ。
僕は久しぶりの自室へと戻ろうとした所、部屋の前にメアリー王女がいた。
「あれ?メアリー様じゃないですか。」
「トニー。おかえりなさい。」
「はい、只今帰りました。」
「今回は大変だったみたいだね。」
「何の話でしょうか?」
「ほら、逆ハーレム生活はどうかなって思って。」
「あの……」
「もう、ここまで来たら分かるよね?」
「えっと……」
「私ではダメ?」
「そういう訳では……」
「それなら良かった!」
メアリー王女はニッコリと微笑む。
僕は彼女の圧に押されていた。
「とりあえず中に入っていい?」
「どうぞ……」
「お邪魔します」
彼女は僕の部屋に入ってくる。
そして、椅子に座った。
「それでどうだった?」
「どうだったと言われましても……」
「うん?」
首を傾げる彼女。
「その、楽しかったです……」
「そう…」
「はい……」
「他には何か無かった?」
「他ですか……」
「例えば……アッティラとキスした?」
「しました……」
「そう……」
「はい……」
「じゃあ、私にもして。」
「えっ!?」
「嫌なの?」
「そういう訳ではないのですが……」
「私とは出来ないの?」
「そんなことはありませんけど……」
「じゃあ、早く!」
「はい……」
僕は覚悟を決めた。
そして、彼女に口づけをする。
(柔らかい……)
メアリー王女の匂いにくらくらする。
数秒後、唇を離す。
「これで満足していただけたでしょうか?」
「まだ足りない……」
再び顔が近づく。
「ちょっと待って下さい!」
僕は彼女を押し返す。
「何?」
「これ以上はマズイかと……」
「どうして?」
「僕たちの関係が悪くなってしまうかもしれません……」
「それは困る……」
「ですよね……」
「わかった。我慢する……」
「ありがとうございます……」
「そうだ、抱きついてきていいよ?馬車に乗って疲れたはず」
「いや、流石に……」
「大丈夫、私は気にしないから」
「わかりました……」
僕は恐る恐る、彼女の体に手を回す。
「もっと強く抱きしめて……」
僕は言われるがままに抱きしめる。
すると、彼女の心臓の鼓動を感じる。
ドキドキしているようだ。
「次は頭を撫でてあげる」
「はい…」
小っちゃい手が僕の頭を撫でてくる。
甘い匂いに、あったかい体温。
そして頭をやさしく撫でられ僕は脱力していった。
「ねえ、トニー」
「何でしょう?」
「私だけの物にならない?」
「ルシアやアッティラがいるので…」
「私の物になってくれればずっと甘やかしてあげるよ」
「うーん……」
「じゃあ、私の物にならなかったら……」
「ならなかったら?」
「死ぬかもしれない……」
「え……」
「冗談だよ。」
「そうですか……」
「でも、本当に私の物にならなくても良いの?」
「それはどういう意味でしょう?」
「そのままの意味だよ。」
「うーん……」
「やっぱり、ルシアとアッティラの事が好き?」
「え?」
「だって、ルシアといつも一緒にいるし向こうでアッティラとも仲良くなったんでしょ」
「すみません……」
「謝ることないよ」
「でも……」
「最後は私を選んでくれるわ」
そう言って頭を撫ででいた手を止めより強く僕に抱きついてくる。
「そろそろ時間だね……」
そう言うと彼女は僕から離れる。
「今日はこれくらいにしておいてあげる。」
「ありがとうございました……」
「また来るよ。その時は私を選ばせてみせる」
そう言い残しメアリー王女は自分の部屋へと戻っていった。
評価、感想もらえると嬉しいです。