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世界一の魔女になりたくて  作者: 銀楠
魔女ウルティアの復活
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入寮②

入寮編は今話でおしまいです!

二話と短いものでしたが、主要キャラクターの紹介的には十分だと判断しました。

寮自体にも色々ありはするのですが、そろそろ学校らしく授業に移りたいと思って切り上げてしまった…。

 


動け(フロート)


 懐から出した杖を一振りすると、三つの椅子が同時に動きだし円陣を組んだ。

 自己紹介をするなら座ってやりたい。


「……いや凄いけどさ。それくらい自力でやりなよ」

「なぜ魔女が椅子を出す程度のことを自力でやらなければならないのですか?」

「見解の相違だなぁ」

「ふふっ…」


 白い髪の彼女がくすりと笑った。

 儚くも上品なその仕草に思わず見詰めてしまう私とクラウ。それに気が付いた彼女は赤面して俯いてしまった。


「あっ……いえ……何でもありません。すみませんでした」

「いや、謝ることじゃないよ。むしろ、私達の方がすまなかったというか…」

「ええ、決して不快だった訳ではありませんよ」


 俯く彼女に二人がかりでフォローを入れる。

 さて、場も和んだところで早速自己紹介といきましょう。


「ではまず、私から」


 何事も挑戦という。私は一番に立候補した。

 自己紹介。

 家の中でのみ育った箱入り娘の私には初めての経験だ。

 親は勿論のこと、お手伝いさんも私のことは良く知っている。自己紹介の必要など勿論無い。

 お客様に挨拶をしたことはあるが、それを自己紹介と呼べるかは微妙なところだろう。

 少なくとも、"自分のことを知ってもらう"という意図での自己紹介は人生初めてだった。


「私はロウェル・シモンズ。家は共和国で商業をやっています」

「………」

「………」


 おや、スベったような空気になっている。

 何かおかしなことを言ってしまっただろうか……。


「えっ………終わり?」

「はい。以上ですが?」

「いや…『何か問題でも?』みたいな顔されても困るから。もっとこう…趣味とか特技とかあるじゃん」

「ああ、なるほど…」


 趣味……特技……


「特技は黒魔、趣味も黒魔ですね」

「黒魔法が趣味って何ですか…」


 今度は白い髪の彼女に呆れられてしまった。


「んんっ……では、クラウが自己紹介とやらを見せてください」

「ああ、いいとも」


 そう言うと、クラウは背筋を伸ばした。

 背が高い彼女がしゃんとすると、より高く見える。


「私はクラウ・ルーズヴェルト。父は王国で騎士をやっている」

「はい、知っています。ルーズヴェルト様は高名ですから」

「ありがとう」


 クラウは父親を誉められて本当に嬉しそうに喜んでいた。

 上機嫌で自己紹介が進む。


「趣味…というか、好きなことは食べること、特技は剣術、得意魔法は白魔法全般かな」

「へー…剣術なんて出来たんですね」

「まあ、これでも騎士の娘だからさ。英才教育ってやつかな…」

「凄いです」


 以上でクラウの自己紹介が終わった。

 彼女らしい一面の再確認と知らない情報の盛り合わせ。これが自己紹介というものなのか…。

 比較的外向的な彼女のお手本のような自己紹介が終わると、私とクラウの視線が残る一人に集中する。


「私の番ですね。名前はソフィア・アルキナスです。趣味は…読書でしょうか。小説などが好きです」

「へえ、良いね」

「ありがとうございます」


 小説…私は読書家だが小説はあまり読まない。黒魔法の専門書ばかりが積まれた自室を思い出す。

 しかし興味はある。


 …そうだ、今度彼女に借りてみましょう。


「実家は何をなさっているのですか?」

「孤児なので実家はありませんが、養父はアルディア法国で神父をしています」

「えっ、法国!?」


 クラウの反応は早かった。

 サファイアブルーの瞳を見開いて驚いている。


「クラウ、法国だと珍しいのですか?」

「それはそうだよ。リリアーナ魔女学院の立地を思い出してみて」

「はて…」


 そう言われて頭の中に地図を引っ張り出す。

 地理はからきしなのでほとんど真っ白な地図だったが、クラウの言わんとしていることは分かった。


「確かに、この学院は共和国と王国の境にありましたね」

「そう、だからリリアーナ魔女学院は王国と共和国の子供がほとんどで、法国の人はほとんど居ないんだ」

「そうですね。悲しいことに法国、共和国、王国は三国戦争中です。私もここまで来るのは少し大変でした…」


 冷戦中とはいえ国同士の仲はすこぶる悪い。

 敵国の領地を横断しなければならないのは命懸けと言っても良いほどだ。


「ミス・アルキナスは…」

「ソフィアで良いですよ、シモンズさん」

「では私もロウェルで良いですよ、ソフィア」

「ついでに私もクラウと呼んでくれ、ソフィア」

「はい。ロウェルさん、クラウさん」


 それで、何の話だったか…。

 ……………。


 ああ、思い出しました。


「それでソフィアは何故この学院に? 別の学院でも良かったのでは?」

「それは………お恥ずかしながら男性が得意ではなくて。通うならどうしても魔女学院に通いたかったのです」

「そうなんだ」

「……?」


 何だか今の理論は引っ掛かるものがある……のだが、まあ良いか。

 まだ知り合ったばかり。そう深く詮索するものでもないでしょう。


 それよりも…


「さて、自己紹介も終わったところでソフィアに提案があります」

「はい」

「私と、友達になってくれませんか?」


 右手を差し出す。

 ソフィアは少し面食らった後、柔らかく握り返してくれた。


「ええ、是非」

「おっ、ズルい。私も入れて」


 クラウが手を重ねてきて、私には二人の友人が出来た。







お母様へ


 本来なら時候の挨拶を書くべきですが、家族宛の手紙に毎度のごとく書いていては疲れてしまうので以後は省略させて頂きます。

 本日、無事に入学出来ましたのでそのご報告を。

 それと早速友人が出来ました。

 レストレス王国出身のクラウとアルディア法国のソフィアです。

 友人のなんたるかは未だ分からぬ私ですが、リリアーナ魔女学院で日々邁進していきたいと思います。


ロウェル

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また感想なんかも頂けたら飛び上がります。

作者のモチベーションに繋がるので、良ければお願いします

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