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世界一の魔女になりたくて  作者: 銀楠
魔女ウルティアの復活
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授業⑦

仲良し三人組

ロウェル、クラウ、ソフィアの見た目のイメージって伝わっているのでしょうかね…

 


 魔法基礎学を含めた午前の四つの授業を乗り越え食堂で昼食を済ませると、午後は待ちに待った黒魔法の授業だった。


「第二演習場ってここですかね?」

「そうだと思いますが」


 黒魔法の教室は荘厳な鉄扉で締め切られていた。見上げるほどの鉄の塊はとても少女の力では開きそうにない。

 そう思っていたのも束の間、その扉は誰の手も触れないうちにゆっくりと開いた。


 そしてその奥から大きな杖を携えたミズ・マクミランが顔を出す。


「何をしているのです一年生たち。早く入りなさい」


 私達はカクカクと頷いた。


 第二演習場は教室という風貌ではなかった。

 寧ろまさしく演習場。

 教室はすり鉢型になっており、外側は階段状の椅子、中央は砂のひかれたグラウンドがある。

 そのグラウンドにミズ・マクミランは立ち、外側の椅子に自由に着席するよう促した。

 一年生は全部で百人以上いるが、演習場が広すぎる故に全く密度を感じない。寧ろ空いているようにすら感じた。


 そんな生徒に囲まれたミズ・マクミランは見た目の年齢からは想像できない、シャキッとした大きな声で授業を開始した。


「良く集まってくれました。私は黒魔法の授業わ担当するオリヴィア・マクミランです。貴女達にとっての初めての黒魔法の授業ですので先ずは諸注意から」


 威風堂々といった風貌だった。

 誰もが息を飲み、注目し、傾聴する。


「黒魔法は簡単に人を傷つけることが出来る大変危険なものです。貴女達にとって最も大切な科目であると共に、最も危険な科目でもあることをお忘れなく。もしも違反があれば厳罰が下りますし、私の判断次第では退学もあり得ることを良く覚えておくこと」


 それは穏やかではない。

 そう誰もが萎縮する中、一人の生徒が手をピンと挙げた。もはや掲げたと言っても良い。


 そう、掲げられた手の主は言うまでもなくエミリーだった。


「ミス・カサンドラ、何か?」

「はい先生。たった今違反と(おっしゃ)りましたが、規律の方を教えていただいておりませんわ」

「そうでしたね。ミス・カサンドラ、席に着いて」


 ミズ・マクミランは落ち着き払ってエミリーを座らせる。

 そして、私達を見回して言った。


「この教室のルールは簡単です。授業中は決して私の許可なく魔法を使わないこと。使った魔法とその結果もたらされた被害の度合いに応じて罰を下します。再度忠告しますが、最大で退学もあることをお忘れなく」


 私は口を尖らせた。

 魔女が魔法を使わないと魔女である意味がない。大半の魔女にとって魔法とは生活の一部だ。

 椅子を引いたり、カーテンを閉めたり、ランプを消したりと魔法が生活の根幹を為している魔女は多い。

 私なんてランプの()け方も消し方も知らない。

 授業中だけとはいえそれを禁止するのは、ミズ・マクミランの提示したルールは少し厳しすぎるようにも感じた。


「ミス・シモンズ、何か不満でも?」


 肩が跳ねた。

 先も言ったが、ミズ・マクミランと生徒との距離はかなり遠い。

 とてもではないが87歳の視力で表情を読めるような距離ではない。


 そんな私の脇腹をクラウが肘でつついてくる。


「白魔法には老化を軽減する魔法もあるんだ。だから魔女を見た目で判断するのは良くないよ」


 そうクラウが耳打ちしてきた。

 そういえばそんな魔法があった。母が(しき)りに練習していたのを覚えている。

 しかし、それは白魔女である母が使えない程に高度な魔法なのだ。黒魔女であるミズ・マクミランが使えるのだとすると、それはとても凄い。


 そしてそのミズ・マクミランはこちらを真っ直ぐに見詰めながら言った。


「聞こえてますよ、ミス・ルーズヴェルト」


 この距離で今の声が聞こえるのは、もはや老化とかは関係ないと思う。







「運動魔法は黒魔法の初歩の初歩であり、最も重要な魔法でもあります。日常生活でも頻出する魔法であるため白魔女、黒魔女問わず自家薬籠中(じかやくろうちゅう)の物としなければなりません」


 クラウがソフィアをつついていた。

 そして懲りずに耳打ちする。


「ソフィア、"じかやくろうちゅう"って何?」


 私もそっと聞き耳を立てた。


「自分の薬箱の中にある薬のように、自分の思うままに使える物にする、という意味です」

「へぇ~」


 ならば普通に極めると言えば良いのではないだろうか。

 と思ったのだが、ミズ・マクミランに目を付けられては堪らないので努めて真顔をキープした。

 私は賢いので同じ轍を二度は踏まない。


 私が人知れずそんな苦労をしている間にも、授業は進む。


「これから運動魔法でこの鉄箱を持ち上げて貰います。貴女達が白魔法の授業で使った物と全く同じものです」


 そう言ってミズ・マクミランが鉄箱を三つ地面に下ろす。

 砂の地面に食い込む様から鉄箱の重さが良く分かった。よくアレを少女に持ち上げさせようと思ったものである。


「課題は簡単。今から三人ずつ前へ出て、一人につき一つの箱を魔法で浮かせなさい。空中に一分間浮かせられればクリアとします」


 それはまた簡単そうである。

 しかし、クラウとソフィアは真っ白な顔をしていた。


「二人とも、どうしました?」

「たった今私の補習が確定した」

「私もです」


 今日の放課後は一人か……なんて思った。

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