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世界一の魔女になりたくて  作者: 銀楠
魔女ウルティアの復活
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授業④

魔法というのは夢がありますね。

書いてて結構楽しいです。

ところで、作者はロウェルのようなクールなタイプの女の子が結構好きです。

マイノリティですかね?

 


強化せよ(ブースト)


 クラウが腕ほどの長さがある杖を振るう。

 一見何も起こっていないようだったが、クラウは堂々と箱に手を掛ける。しかも片手で。

 そしてそのまま、大の男でも持ち上げられないという鉄箱を片手で軽々と持ち上げてみせた。

 さすがは白魔法が得意と言うだけはある。

 教室の中でも、疎らに拍手が鳴った。


「素晴らしいよクラウ。片手で持ち上げられたのは今のところ君一人だけだね」

「有難うございます」


 と言いながらクラウはエミリーに流し目を送っていた。

 煽るな煽るな。

 後でまた面倒なことが起こりそうだと辟易していると、クラウが堂々と帰ってきた。

 入れ違いにソフィアが前へ出る。


強化せよ(ブースト)


 ソフィアが身の丈ほどある杖を振るう。

 やはり目で見て分かる変化はない。しかし、魔法事態は成功している。

 それを確かめたソフィアは両手で箱を掴み、思いっきり上へ持ち上げた。


「ふ、んん……ふんにぃ…!」


 しかし持ち上がらなかった。

 さながらパントマイムのように鉄箱は動かない。


「…クラウ、魔法は失敗しているのですか?」

「いや、私の見立てだけど魔法事態は成功しているよ。強力な強化ではないけど、あの箱を持ち上げるに足る力は出ていると思う」

「では何故持ち上がらないのです?」

「それはまあ……素の力がおそろしく弱いんだろうね」


 つまりとんでもなく非力ということだ。


 最終的にソフィアは手を滑らせ、見事に尻餅をついていた。

 教室中に笑い声が溢れる。

 ソフィアはまたしても頬を真っ赤に染めながら帰ってきた。


「…恥ずかしいです」

「い、いや。魔法事態は上手くいってたよ。うん」

「それがより恥ずかしいです」

「ソ、ソフィア、任せてください。私が代わりに貴女の雪辱を果たしてきますから」


 なんだかいたたまれなくなった私は、そう言って前に出る。

 教室中の視線が集まるこの場所は想像よりずっと緊張する場所だった。クラウが堂々と出来ていたのが不思議なくらいだ。

 しかし、気負うことはない。

 私は天才。苦手な白魔法でもやれば出来るはずだ。

 懐から杖を抜く。

 両親に貰った上品な黒い杖だ。


強化せよ(ブースト)


 一振り。

 見た目に変化はない。

 それは当たり前なのだが、感覚的にも変化がないのは良いのだろうか。

 慣れなさすぎて自分の魔法が成功しているのかどうかすら分からない。

 …いや、幾ら考えても何も変わらない。案ずるより産むが易し。やってみれば成功していることが分かるはずだ。


「……すぅ」


 箱を掴み上に引っ張った。




 この日、白魔法の補習をくらったのはソフィア・アルキナスとロウェル・シモンズ、この二人だけだった。







 ひたすら書き取りをするだけの地理学の授業が終わると、お楽しみの補習タイムだった。

 夕暮れ迫る空に急かされるように薬学の教室へ向かう。中庭へと向かう生徒達に逆らう私達は少しばかり恥ずかしかった。


「薬学の補習とはどういったものになるのでしょう?」

「んー、普通に風邪薬を作らされるだけじゃないかな」

「それなら今度は全部私がやりますので、クラウはやってるフリだけしておいてください」

「…ロウェルって結構辛辣だよね」


 そんな話をしながら薬学の教室の前に立つ。

 改めて、薬草の匂いが鼻に付いた。

 ここで立ち止まっても仕方がないのではいることにしよう。

 そう思って重い木戸を押し開けると、中には既にマダム・スミスが待っていた。


「良く来ました、クラウ・ルーズヴェルトとロウェル・シモンズ。貴女達には、補習を受けてもらいます」

「はい」


 背の高いクラウの陰から横にずれる。

 しかし、マダム・スミスが控える教卓にはあるべき薬草が置かれていなかった。


「マダム・スミス」

「なんでしょう、ロウェル・シモンズ」

「風邪薬を使うのに必要な材料はどこにあるのですか?」

「ロウェル・シモンズ、クラウ・ルーズヴェルト。貴女達に、調合は、させられません。危険すぎますから。今日は、補習の代わりに、わたくしの手伝いを、してもらいます」


 おや、酷い言われようである。

 クラウはともかく私だけなら大して問題は無いはずだ。調合はやったことはないが、私なら完璧に(こな)せるはずだ。


 しかしまあ、ここでごねても仕方ない。

 黙って先を促す方が良いだろう。この後、白魔法の補習もあるので。


「それで先生。私達は何を手伝えば良いのですか?」

「貴女達には、わたくしの植物園で、植物の採取の手伝いを、していただきます」

「植物園?」

「ロウェル・シモンズには、時間がないようですから、早速移動しましょう」


 お気遣い感謝します。







 全面ガラス張りの大きな建物。

 校舎の外れに設置されていた植物園は、まさしく園と呼ぶに相応しい美しさだった。

 採光に気を使われた立地のお陰で明るい。ある場所では濃密なミストが溢れ、またある場所では光を遮るシートが施されていた。


「ここは、わたくしが校長から賜った、植物園です。ロウェル・シモンズとクラウ・ルーズヴェルトには、植物の採取を、手伝ってもらいます」

「それ、補習になるんですか?」

「製薬が、魔女の伝統的な仕事であるように、その材料の採取もまた、伝統的な仕事です。リリアーナ魔女学院は名門ですので、カリキュラムには組み込んでいませんが、補習として点数を出すことは、出来ます」

「なるほど…」


 この時、私とクラウは"楽しそう"などと、呑気なことを考えていた。

【作者のお願い】

『面白い』または『続きが気になる』と感じていただけたらブクマや評価をお願いします。

また感想なんかも頂けたら飛び上がります。

作者のモチベーションに繋がるので、良ければお願いします

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