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世界一の魔女になりたくて  作者: 銀楠
魔女ウルティアの復活
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授業③

前回魔法を使うと言いましたね。

すいません入りきりませんでした。許してつかぁさい。


 


「ロウェルは全然分かってないよ」

「いいえ、クラウこそ分かっていません」


 白魔法の授業前、私達は魔法基礎学と同じ教室で魔法基礎学と同じ様に座り……そして言い争っていた。


「白魔など地味ではないですか。炎や雷が出る黒魔こそ至高です」

「派手なのが素晴らしいと思うのは幼い子供くらいだよ」

「派手なだけではありません。黒魔は人の生活を豊かにすることに大いに役立っています。私達が使う寮だって黒魔の集大成のようなものでしょう」

「でも黒魔法は人を傷付けることも使われるじゃないか。黒魔法で傷を治すことは出来るかい?」

「さも白魔が治療に特化した魔法のように語らないでください。拷問や犯罪に利用されることがより多いのは白魔なんですよ?」

「それを言ったら黒魔法だって兵器に応用されているじゃないか。戦争を含めれば、黒魔法の方がずっと人を傷付けている。そして、白魔法がそれを癒してる」


 黒魔法が白魔法に負けているところなどない。魔法基礎学の教本にそう乗せたいくらいだ。

 が、クラウはそう思わないらしい。

 始業まで後僅か、決着は付きそうにない。それでもなお、私達は言い争った。


 ……ソフィアを挟んで。


「いい加減にしてください!」


 ソフィアが一際大きな声を上げる。

 その一喝に教室はシンと静まり、ソフィアはまた少し頬を染めて一つ咳払いをした。

 そして今度は普通の音量で話し始める。


「どちらも素晴らしいで良いではありませんか。何故お互いを(おとし)め合うのです。自分の好きなものの素晴らしさを語るならまだしも、相手の好きなものを(けな)すなど……とても恥ずかしいことですよ」

「ぐぅ」

「むぅ」


 鬼のような正論だった。

 確かに自分を客観視すると恥ずかしい。

 さすがは法国。ありがたい説教だ。

 

「しかし黒魔が白魔に勝っているという意見は変えません」

「私達はどこまでもやり合う仲のようだね」

「…まあ、それはそれで友達らしくて良いのでしょう」


 そんな話をしていると、時計塔の鐘が鳴った。

 始業だ。

 そして鐘の音に遅れること数分、白魔法の教師が入室してくる。

 青く長い髪を携えた男性だった。


「おー、イケメンだね」


 クラウが小声で呟く。

 確かに、教室の女生徒父も達は少しばかり色めき立っていた。

 私も小声で呟く。


「意外ですね。クラウも優男が好みなんですか?」

「いやいや、私は体で男を選ぶタイプだよ」

「なるほど、"らしい"ですね。………おやソフィア、どうしたのです顔を赤くして」


 一瞬、ソフィアが面食いであった可能性を考えてしまったが、どうもそんな様子ではない。

 熱でもあるのかと心配したが、どうやらそうでもなかったらしい。


「いえ……でもその……あまりそんなことは言わない方が良いですよ、クラウさん」

「えっ、どうして? 好みのタイプを語っただけじゃないか」

「で、ですが……か、カラダ…だなんて」


 どういうことでしょう?


「ソフィア、何が良くないのですか? 体格で相手を選ぶなんて、いかにもクラウらしいではないですか」

「えっ、体格?」


 その後ソフィアは一間空けて、燃え上がるように顔を赤くした。


「な、何でもありません!」


 悲鳴に近い声だった。

 それを見たクラウが何かを察したらしく、にんまりする。いやらしい笑みだった。


「…ははーん、ソフィアって意外といやらしい子なんだね」

「や、やめてください」


 などとじゃれ合っている二人だが、私にはまだ何の話だか分からない。

 妙な疎外感を感じて小声で話し掛けた。


「ソフィアがいやらしいって、どういう意味です?」

「わ、忘れてください!」

「うんうん、ロウェルにはまだ早いよ」

「同い年でしょう!」


 と話していると、教卓の方から大きな音がした。先程の先生が杖を振って音が鳴る魔法を使ったらしい。


「お嬢さんたち、もう授業を始めても良いかな?」

「「「すみせんでした」」」


 しっかり私語を怒られてしまった。

 先生はにっこり笑うと、杖を仕舞う。そして空いた手でチョークを持ち、黒板に自らの名前を書いていった。


「はい皆。ボクはエレン・ホワイト、白魔法の講義を担当するよ。ちなみに、白魔法は黒魔法と並んで最大の単位が出る科目だ。白魔法で最下点を取れば進級は絶望的だし、逆に最高点を取ればほぼ安泰。心して授業を受けること」


 ミスター・ホワイトはおそらく南方の出身だろう。

 特徴的な名前や小麦色の肌の色からそれが分かる。


「白魔法は生物に対して直接影響を与えることのできる魔法。良く活かせば救世の聖女に成れるし、悪く活かせば最悪の魔女にもなれる。君たちには是非前者に成ってもらいたいけどね」


 聖女に成る予定は無いが、悪いことをする予定も無い。

 しかし、白魔法が悪用されているのも事実だった。


「魔法基礎学でもやるだろうけど、白魔法には幾つか種類がある。生物の生命活動に影響を与える生体魔法や、生物の精神に干渉する精神魔法とかね」


 後者の精神魔法は母の得意魔法だ。

 心を読んだり暗示を掛けたりすることが出来る。

 ちなみに、精神魔法は白魔法の中でも特に難しい部類に入るらしい。大人の魔女でも出来ない人は多くいると聞いたことがあった。


「さて、今日は早速簡単な実技をやっていこう。本日の課題は、身体強化魔法。身体能力を上げることが出来る魔法だ。簡単で単純だけど、汎用性はとっても高い」


 ミスター・ホワイトが指を鳴らす。

 今のはおそらく、杖を使わない魔法だろう。簡単な魔法とはいえ棒状の物を介さない魔法はかなり難しい。

 さりげなくやっていたが、熟練の魔法使いということを私達に周知させていた。


 そしてミスター・ホワイトは少し歩き、最前列の長机を片手で掴む。

 そして、そのまま持ち上げた。

 優男の細腕からは考えられない怪力。

 勿論魔法のお陰だ。


「身体強化魔法はこのように筋力を底上げすることも出来る。厳密には、筋持久力と筋瞬発力の両方が飛躍的に跳ね上がるんだ。魔法使い同士の決闘だと必須の技能だったりもする」


 ミスター・ホワイトの授業は、今までのどの先生よりも丁寧で分かりやすい説明だと思う。おそらく、皆そう思っていると思う。


「勿論それだけじゃない。慣れれば、筋力だけじゃなくて動体視力や五感を強化することも出来るんだ。小声で話していたつもりかもしれないけど、ソフィアがどんな子かボクは知っているからね」

「ぴぃ…」


 ソフィアが奇声を上げて紅潮した。

 何だか分かりませんが、止めて上げてください先生。

 先生はそんな茶目っ気を挟んでから、私達に課題を提示した。


「今日の課題はボクが用意したこの箱を持ち上げること。成人男性でもまあまず持ち上がらない重さだ。でも、身体強化魔法をちょっと使えば君達でも持ち上がる。持ち上がらなかったら補習だよ」


 む…白魔法は得意ではないのですが。

 しかし、秘策はあります。今回は何とか乗り切れるでしょう。


「あっ、それと、黒魔法は使ったら駄目だからね」


 心を読まれたのかと思った。

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