駱(科学と恋)
彼が考える...恋を科学的...に?
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
バナナのジュース専門店「WUKONG」の店内
何者かによって眠っている状態に陥ってしまった古海・香蓮のことを任された...というより放任された設楽・駱は店員用の休憩室を借りてもらい、彼女を横になれる休憩用のソファーまで運んだ。
一旦落ち着いたラクは安堵のため息をして、さっきまで店にいた自分の兄...羅亜夢の最後に言った言葉を思い出す。
「ごめんな...古海さんはお前に任せた。」
無責任だ...という言葉がラクの脳裏に浮かべた。
まだ事情もハッキリ説明していないまま、店を出てしまった自分の兄を心のどこかで睨みながらも、今まで起きた出来事を頭の中で整理し始めた。
いつも兄の代わりに不幸な出来事に遭ってしまった自分の仮説はさっきのことでなぜか阻止された。
さらに...なぜか自分が被災するはずの出来事は今眠っている古海さんまで巻き込んでしまった。
孫・悟空という謎の白肌の少女は風を操る不思議な力を持つと言われて、自分の目でも確かに目撃した。
数々の不思議な力を目にした自分は今でも信じがたいが、科学的に説明するには中々難しい。
本当に風を自由自在にコントロールする力...超能力の類いで言うと、テレキネシスと呼ばれるものとは類似するが、それもそれで超能力が存在すると肯定することにもなるから、まだ完全に認めたくない。
自分が今まで科学で証明しようとした不思議で不可解な出来事は結局科学では説明ができないという事実...ラクとしてはなんだか認めがたく、悔しい。
それより心配なのは目の前に眠っている古海さんだ。
その様子を見て、ラクは心配そうな表情をした。
苦しい様子は確認しなかったが、起きる様子もない。
本当にただ眠っているのか?
昏睡状態にも見えるが、このままだと病院まで行くことになることも考慮すべきだ。
とそこでラクは会った間もないときにサトラがカレンに言った言葉は脳裏に蘇った。
「ラクシュマナ様とあの眠り姫みたいに」...という言葉も気になる
つまり何?
俺はその王子の生まれ変わりとか?転生とか?
...
完全に否定したい気持ちでいっぱいだが、科学的には一つの可能性が残っている。
それは【遺伝】だ...
そう...なんらかの遺伝的に俺はその王子様の末裔であれば、極めて低いが...このような体質?には辻褄が合う...合ってしまう。
自分も詳しいわけでもないが、子供の頃からラーマーヤナの物語を燦々聞かされたから、ラーマ王子の弟であるラクシュマナ王子はどんなキャラクターなのかは覚えた。
子供のときに遭った不幸なことも王子様が遭った不幸にも重なったかのように一時的には自分も思っていた。
なんか...あの第三王子と似ているな...と
自分の名前だってラクだし、この名前を付けた両親には何か意図があるじゃないかと思った...今でも思っている。
その後は自分で科学的に原因究明しようと決めたから、その仮説...考えを振り払った。少なくとも心の片隅に置いて放置した。
しかし、最近体感して、出逢った人々の話から考えると、物語の登場人物は実在して、さらに今でも生きていることとか考えられる...あり得なくもないまで言わせないといけない状況だ。
と言いながら信じたくもないが...
と考え込んだラクは眠っているカレンのことを見る。
じゃ...古海さんは物語に出てくるラクシュマナ王子の妻で、彼が不眠不休でラーマ王子を守れるように代わりに眠りに入ってしまうあの眠り姫なのか?
状況は状況だが、まさか何年も眠ったままじゃないよ...な?
嫌な考えを否定しようとラクは強く首を振った。
...
でも...女性を自分一人で運んだのは人生で初めてだ。
お姫様抱っこと言うのが正しいかどうか分からないが、かなりそれに近い体勢で古海さんをここまで運んだ。
思ったより、軽かった...
たまには酔っ払った兄さんを家まで運んだというか、肩を貸してなんとか家までたどり着いたと言った方が正しい。
俺はどちらかというと筋肉が付いている体じゃないけど、こんな俺でもそれができるほどだ...
体重を推測するにはできるが、女性の体重を推測することには失礼だからやめておこう。
とここでラクは妙に何かを意識し始めた。
さっきかなり焦っていたから、意識していないが...
女性をお姫様抱っこに近い運び方で運んだって、周りの人にはどう思われるのか?
そんな場合じゃないと思うけど、今冷静に考えると...急に恥ずかしさがじわじわと湧いてくる。
慣れない感情だ...
いつも合理的で科学的に物事を考える自分らしくない感情が...突然出てきた。
鼓動が徐々に早くなってくる...
呼吸も...
なんだか体温まで上がってきたような気がして、少し熱くなった気もしなくもない...
さらに眠っているカレンをまた見ると、さっきの症状が悪化した。
ダメだ...今度は古海さんの顔が直視できなくなっている。
どうしたんだ...俺...
さっきまで何も感じないのに...興味深いの人だと思ってはするけど、この気持ちは...まさかのドキドキ...?
テストステロンやフェニルエチルアミンというホルモン...いわゆる俗に言う恋愛ホルモン...
そのホルモン等の分泌量が上昇した状態...今の自分の体の状態から考慮して導いた結論は...
俺...どうにかしている...
ここで眠り姫がいる...その姫様を目覚めさせるには...
王子様のくちづけ...
待って!
何を考えたんだ、俺!
おとぎ話で出てきた全く非化学的なことを...
と突然ラクの体が眠っているカレンの方に近づけようとしている。
体が...言うことが聞かないっ!
徐々に距離が縮んでくる二人...
これは...まさか...恋?...ダメだ...体が...抗えない...
ラクの顔が眠っているカレンの顔に近づき、唇と唇が重なりそうな...その瞬間
「さっさとやれば?」
っ!?!?
と何者かの声が背後に聞こえた途端、ラクは自分の体のコントロールを取り戻した。
その反動でカレンから離れようとした結果、ラクが椅子と一緒に後ろに転倒し、頭を打った。
その痛みで目が覚めたラクは後ろにいる者を確認した。
そこには謎の白肌の少女、サトラがいた。
「だから言ったんじゃ...二人は惹かれ合う...あの王子様と姫様みたいに...ね。」となんかニヤリと笑っているサトラ。その姿を見たラクは状況を整理しようとした。
「その話は置いといて...なぜあなたはここにいるのですか?兄さんは?」と質問をしたラクだが、サトラは肩をすくめて、やれやれみたいな顔をした。
「忘れたのじゃ?俺は分身ができることを...これはあくまで俺があんたの様子を見るために送ったんだが...まさかあんたも大胆なことをするとはな...ヒヒ」とまた楽しそうにラクをからかったサトラ。
「そんな話はいいから!俺をからかいに来ただけじゃないですよね?」と本題に切り替えようとしたラク。
「あ...あんたをからかったのが楽しいけど、それより...大事な話がある。彼女を目覚めさせることができるかもしれないじゃ...あくまでの提案だけどな。」という真剣な話をしたサトラにラクも真剣に話を聞いた...が
「ちなみにさっきあんたを彼女に近づけたのは俺が風であんたの体を操ったからな...まさか...恋に落ちたことで体が言うことを聞かなくなるとか本気で信じていた...こりゃ笑えるぜ...傑作だわ...ハハハハ!!!!」と大笑いしたサトラ。
ラクは思わず顔が赤くなった。それは怒り半分と恥ずかしさ半分の顔だった。
「あなたの仕業ですか...もう今は許しましょう...まずは真面目の話をしてください!」と恥ずかしさと怒りを抑えつつ、話を聞こうとしたラクだが、内心ではこう思っていた。
は...そういうことか...ホッとした。
この人の仕業だったとは...通りで展開が突然すぎる。
俺が恋に落ちたとかなんて...あり得ないから...
...
そう...なのか?
と完全に否定できないラクだった。
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
お待たせしてすみません。海外にいたため、2週間ほど休載しましたが、連載を再開しました!
今回は一人にされたラクくんの方の話になっています。
連載再開早々、まさかここでラブコメ展開をぶっ込むとは...笑
理系男子をドキドキさせるためにはこうするしか...というか恋愛ホルモンとは?調べたところにはドキドキとか惚れたときとかもホルモンの働きに関係します。名前は長くて、いっぱい使うと訳わからなくなりますので、代表的なものを使われていただきます。何か間違えたらすみません!
ドキドキの正体は?これは...恋?
なぜか完全否定できないラクくん...なんだか歯がゆいラブコメ展開になってしまいますね。一体この作品はどんな方向にいくのか作者も分かりません(おいおい!)
次は血の試練に戻りましょうかな...それともまた別の話?
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
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