昔話(ある宮司の話)
これは昔々の話...ある宮司と鬼王の話
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
昔々...と言いながら、現代と比べてかなり昔の室町時代。
現在のシンジュク区にはある村、オオクボ村が存在しました。
その村の西の方向には神様の使者、キツネを祀る稲荷神社が建てられました。
後には別の神様が同じ境内で祀られたことになりましたが、稲荷様の次にここで祀られたのは【鬼王権現】という名の大変珍しい神様でした。
鬼は、よくいろんな物語で悪者とされることが多い。
なのに...鬼の王と書いて、鬼王と読むこの神様はなぜその辺の村人たちに受け入れられたのか...今でも謎だという。
逆によく聞いた話では江戸時代の中にある百姓が熊野への参りの途中、病にかかった。
そこで、彼は鬼王権現によって癒やされました。
その感謝を込めて、この神社で勧請したという話が言い伝えられました。
しかし、なぜ鬼という名前になったのかそれは謎でした。
というのは、謎として隠す必要があるからです。
私は、この鬼王神社の宮司を務める大久保と申します。
この神社を代々守ってきました。
私の代になってしばらく経ったとき、ある百姓が神社にあるモノを持って訪れました。
彼が言うには自分を助けてくれた鬼から渡されたモノで、神社に預かってもらいたかったとのことです。その鬼がこれを取り戻しに来るとは思いませんが、御利益があるようなモノは神社で祀ることに賛成した私は、その石の破片のようモノを境内の片隅で丁寧に小さな神社の中に納めた。
私たちの神社は独自の風習として行われている行事があります。
昔から人々にとっては身近で栄養の高い豆腐をあえて断ち、神様に身をゆだねて、体調の回復を祈ります。
それを並行して、うちの独自の御守り【なで守り】を用い患部をなで、病気の平癒を祈るものもあります。
御利益は人伝で広まり、遠方からわざわざ来る人もいたそうです。
果たして...この御利益はどの神様から授かったものであろう。
確かに、鬼のような者からもらったあの破片を神社に納めてから、御利益が増したと気がしなくもない。
もちろん、それは大変喜ばしいことである。
一つ思うことろがあるとすれば、ここでこの神社の名前を正式にしたときには、鬼王権現の名前を使っていいだろうか迷っていた。
昔から悪の象徴である鬼は人を助けて、持っているモノが御利益をもたらすという話は今まで聞いたことがない。
しかし、真相はどうであれ...その鬼だと思われる者と百姓に渡したモノには私たちが知らない不思議な何かが隠されているはず。
その上に、あの百姓の話が噂として広まり、この辺の人間は鬼王権現の御利益を信仰することになったのも確かだ。それで受け入れられたのも不思議なことではない。
他の地域はなんと言おうが、ここは鬼王を祀る場所として知られて、御利益が本物だと分かってもらえばそれでいいと思います。
敢えて言いますと、鬼は悪の象徴だとしたら、鬼の王はその全てを総べる存在だからこそ、災いを全て振り払うではなく...それを抑制する存在ではないかと...私が思います。
...
そして、時代が流れて、江戸時代末期に移った。
先ほどお話しをしたのは私の祖父である先々代の話です。
私の代では、かなり激動の時代でした。
私には直接なにがあったというわけでもありませんが、唯一大変なことと言えば...境内の片隅の神社に祀られた鬼王の欠片と祖父に呼ばれたモノが何者に盗まれました。
他の貴重なものは全く盗まれず、これだけが盗まれたのは一番不可解なことでした。
なぜこの鬼王の欠片だけを盗んだのか。
そして、盗んだのは何者か...何も分からずにずっと謎のままでした。
それからしばらくして、鬼王の欠片が見つからないまま...ある別のモノが神社に奉納されました。
それは大きな鉢を支える鬼型の水鉢でした。
奉納した元の持ち主によると、この鬼の石像の後ろには何者かが刀で切られた跡が見つかり、それからは不思議な病や不吉な出来事が多発したため、この鬼王神社には鬼の祟りが鎮められそうではないかと思い、奉納したいと言いました。
水鉢を境内に置いて、大きな鉢を支えたところから、力持ちの鬼だと見た私は...力様と呼ぶようになりました。
それからある夜...力様から不気味な音...というより声が聞こえてきました。
聞こえたのは...熱い...痛い...という繰り返しでした。
なぜ石像が話せたのかというより、なぜ熱いと言ったのかは一番気になりました。
大きな鉢を支えたから、痛いのはなんとか気持ち的には理解できましたが、水鉢であるものの...寒いと全く正反対のことを感じることには何かがあるはず。
ともかく...その言葉の繰り返し以外には何もできませんが、それでも私が思う。
この力様は、信じがたいが...生きている。
それからは周辺の子供や村人は不思議な病にかかった。
この力様と消えた鬼王の欠片には関係があるではないかと思いましたが、これは...もしかしたら鬼王の欠片がなくなった代わりに呪いをかける力様がいたせいなのか...
熱くて痛いと訴えた力様に何ができることがないかと考えた結果、せめてその苦しみを少しでも和らげるなら、毎日水をかけて介抱すると決めました。
そうしたら、その不思議な病は治ったり、良くなったりしました。
その後からは、私...そして、私の跡継ぎになる人々に毎日欠かずに力様に水をかけて介抱するように遺言を残した。
これで力様が楽になることが難しいが、少なくとも苦しむことが少し解放されるといい...と私が思います。
そして、現代になっても力様は私たち一族がずっと世話をさせていただきました。
まだまだ謎が多く残っていますが、力様の世話をして、鬼王を祀る神社としては御利益がみんなのためになるであれば、それは誇りであり、何より嬉しいことです。
めでたし...めでた...し?
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
今回は前話の第97話と何かの繋がりを感じる昔話風シリーズにしました。
ここまで読んできた方はすでにその鬼の正体もご存じかと思います。(気になる方は白鬼の話をご参考ください。」
鬼という名前の神社は大変珍しいというかここしかないじゃないかと思うぐらいです。
この神社は実在します。フィクションにするため、ある程度話を捻りました。検索したら、すぐ出ます。もし機会があれば、ご参拝に行ってはどうですか?(作者は参拝に行きました!)
代々この神社を守ってきた一族の話なので、時代を少しずつずらして、こんな感じにしました。
竜王の試練とここで登場した力様...その正体は果たして...神社の謎も...
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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