終焉の伝承(完全なる魔王)
元鳥王が考える...魔王を完全にするためのカギとは
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
都内にある料理屋
飾りがかなり素朴であり、静かな雰囲気の中に独特な音色の音楽が流れていることで、日本と全く違う異国感を感じさせる。
その店の中で一人の男が座って、何かを考え込んでいる。
ツルっとした頭とメガネが印象的なその男が今考えていることを真剣な表情の中を覗き込むと...
連絡が...
取れない...
と自分の携帯をずっと見て考えた男は某都内大学の教授である鳳だった。
困ったな...
一番魔王の隣にいるはずの自分の教え子の椎谷・蘭華に連絡を試みたものの、連絡がつかなかった。
正直、これは初めてのことではない。
彼女との連絡がつかない状況なら、前にも何回もあった。
大抵音信不通になったのは、彼女が教授である私に何も言わずに突然南アジアのどこかに旅立ったときが主な理由である。
その後は私に捕まったか自分で出頭するかだが、提出されたレポートの出来具合が素晴らしいということで今まで見逃した。
今回は彼女には非がない。
ただ...自分が立てた仮説をいち早く立証したい気持ちで焦っている。
さっき【透視】能力を使ったが、確かに椎谷くんは魔王と一緒にいることは確認済みだ。
しかし...突然2人のところに行って、どうもとかは流石に不自然すぎる。大学の通学路ならまだしも、別の駅で会ったことのない私たちには怪しまれる。
むろん、私の正体と能力には彼女には知られていない。
そして、もう一つのリスクはもし今魔王と接触することで自分の正体がバレたり、警戒されたりしたらまずい。
ここでは慎重に待った方が良さそうだ。
とにかく...今はご飯を食べる時間だ。
わざわざちょっと遠目に来てみたんだが、面白そうな店だ。
たまたまテレビを見たときに紹介されたが...
写真から見て、かなりインパクトある一品だ。
これも今は待つしかないな...
そして、鳳はまた考える。
魔王が復活した...
それは暗黒時代に突入する予兆だと...それは私の仮説である。
しかし、そんな簡単になるのかというのは残りの課題だ。
合図が...ない
復活しただけで暗黒時代が訪れるなら、もう今は世界中で騒ぎになるはず。
そうならないのは、まだ最後の引金がないから...と私が考える。
もしかして...
何か別のからくりが...
何かの仕組みが...
と彼はもう一度入手した写真を見た。
確かにこの肉体と外見は古の魔王本人に違いない。
じゃ...欠けるのは何だ。
魔王が完全なる魔王には何かが欠けている。
何かが...
ダメだ。考えがまとまらない。
とここまで考えたうちに店員の声と共に料理が運ばれた。
「お待たせいたしました。こちらはエマ・ダツィになります。」
と鳳の前に置かれたのは白ごはんと器の中にある白いシチューみたいなものだった。
おう...これは噂の【ブータン】料理か...
エマ・ダツィ...唐辛子のチーズ煮...
スプーンで白いシチューというよりスープの中をすくってみると、中には日本の人としては多すぎる!と思うほどの青唐辛子がたっぷり入っている。
ブータンでは3食唐辛子を食べるという驚くべきの話を聞いたけど、本当にそうなのか?
まさかと思うけど、メニューを見た限りは、
肉の唐辛子炒め...
この唐辛子のチーズ煮...
逆に唐辛子が主食でしょう、これ!
そこまで辛党なのか...ブータンの人は...
と驚きが隠せない鳳だが、
とりあえず...食べてみよう
スプーンですくった唐辛子を口まで運んで、味を試してみた鳳。
うん...
うん!見た目よりまろやかだ。
ド直球に唐辛子が来るのかと思ったが、乳製品が辛さを包まれて...抑えられ...た?
と思った次の瞬間、辛さがじわっと湧いてくる!
辛い!
確かにド直球じゃないけど、これもこれでかなりじわじわに来る。
あと、通常のカレーとかは甘味が多少あるけど...このエマ・ダツィには甘味が全く感じない!
ブータンでは、海もなく山の中の国だから、砂糖の入手が難しいなのか...逆に保存できる唐辛子の方に走ったかと思われる。
あくまで私が考えた諸説にすぎないが...
いかん...考えるうちに辛さが!
とここで彼が白ごはんに手を伸ばした。
ご飯を食べて辛さが和らぐ...
おさまったと思った途端、なぜか痛みより食欲がそそる。
これは!ごはんが進む!
唐辛子!汁!ご飯!
この無限ループで中年男性がただただ黙ったまま、夢中に食事を進めた。
さっきの考えも仮説も忘れてしまうぐらいに...
あっという間に完食した。
ふ〜
大変興味深い...
甘味がない分、この辛さと塩気で真っ向勝負してくるとは、本当にご飯が何杯も足りないぐらいだ。
そうか...惣菜が少ない分、このインパクトある一品だけでたくさんご飯が食べられるという考え方だな。
ほ...興味深い
と頭から汗が次々と流れてくる男は幸せそうで面白そうな表情をした。
あ...なんだか頭が冴えた。
次の瞬間、彼は何か気づいたようで目が大きく開いた。
そう...
そうか...最後の【劇薬】は足りないんだ!
私の憶測しか言えないが、さっき味わった辛さでこの考えが出てきた。
もしかしたら、魔王の完全な存在になるためには刺激が必要かもしれない。
例え、魔王の心が動かされるほどのものがあったとして...今の現状では足りないかそもそもないかと考えたら、今の状況には説明がつく。
それがカギになる。
それを見つければ、少なくとも終焉を遅らせるぐらいはできるかもしれない。
うん...
この新しい考えを思いついてよかったが、今度はカギは何なのか考えないといけないことになってしまったな。
うん...
魔王の心が動かされる存在...
以前なら無論...溺愛したシーター妃になるけど、もう彼女はいないはず...
念のためにこの眼で確かめるか...
サンサーラで様々な出逢いを経験したからこそ、その可能性を否定しない。
万一...シーターの生まれ変わりがいるとしたら...
と鳳は一回メガネを外して、集中し始めた。
そして、目が光った状態で何かを見ようとしたそのとき、彼は自分の眼で見た者を...疑ってしまった。
何ということだ...
もうゆっくりにしてはいけない!
とすぐに支度して、会計を済ませた後に鳳は急いで店を出た。
シーター妃はもういない...
しかし、私が見えたのは...
彼女の血筋だ...
さらに...血筋を継いだ人は...3人もいる。
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
これもまた久しぶりにこのキャラが登場しましたね。
鳥王!鳳先生!もしかして隠れファンがいたりして(本当にいたら嬉しいですけどね)
久々に登場させたのに、なんと!なぜかここで飯テロ回(それとも孤独のグ〇メ回と言いましょうか)www
店の名前を控えますが、ネットではすぐに出てくる都内にある本当の店です。そして、本当に食べに行きました!
鳳先生の感想はあくまで作者と創作が混ざった感想なので、実際に食べてみたら別の感想があるかもしれません。でも、本当に美味しかったです!辛さに弱い方には要注意ですが。
鳳先生が考える魔王を完全な存在にするカギとランカたちが探している心は何か関係があるでしょうか。さらにシーターの血を継ぐ者は3人だと!?
謎が深まる一方ですね。(ややこしくするのは自分の仕事ですので、はい…笑)
登場キャラが多すぎて、次には誰が出るか分かりましぇん。(おい!)
では、次回はあの人を登場させましょうかね...(誰だw)
あと、前回登場した時の謎の電話も結局明らかになっていませんな…
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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