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悲劇の妃の追憶~自由不自由~

古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍(ラクシャーサラージャ)「ラーヴァナ」との戦の末、羅刹羅闍が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...もしこの物語は運命によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか。


時は現代日本、ある女子大学生「椎谷(しいたに)蘭華(ランカ)」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車が再び動き出す...前の【先日譚】である...


運命は抗えずに同じことが繰り返す...そのようなこと、誰が言った?


断じて認めぬ!なってたまるか!


どれだけ運命に抗おうとしても...


例え神と戦うことになっても...



余は愛する人、「シーター」を幸せにする!

私は...「自由」というものは知らなかった。


決して...誰かの下僕になったり牢屋に囚われたりして、自由が奪われたわけではない。

生まれたときから...「自由」はどういうものか()()()()()()()()()だ。


父上と母上からたくさんの愛情で育てていただいて、何の「不自由」のない人生で今に至ったのですが...不自由は何なのか分かったのに、それでも「自由」は何なのか()()()()()()()


この広い宮殿の中に歩き回ることが許されることが「自由」だと何方かの定義で言われたら、それは自由だと認識することで良い。

しかし...宮殿の外で近衛隊が同行することで街を歩き回ることが許されることが「自由」だと何方かの定義で言われたら、私はそれが「自由」とは()()と思う。


その思いを胸の中にとどめて、彼女の美しくて虚しい眼差しは太陽の光が照らした宮殿の中庭を見つめながらふっと思った。


本当の「自由」はなんだろう...


もしここではない場所で私は王家の姫()の私ではない人生を送れば、本当の「自由」を手に入れるでしょうか。

いつかはどこかの国の王族の殿方と縁を結ばれて、愛されるかどうかはまた分からないが、今とあまり変わらない「不自由」のない人生を過ごし、いつか死んでゆく...そのような一生は「自由」だと呼ぶにはあまりにもほど遠いではないでしょうか。


本当の「自由」を手にするためにはどのような犠牲(代償)を支払う必要があるでしょうか...

代償(それ)を支払えば、私は別の私になり、真の「自由」を手に入れるにでしょうか...


彼女はふっとため息をついて、しばらく中庭を眺めていたそのときに誰かに呼ばれた気がした。


「...様」


「...様!」


「姫様!ここにおられましたか。お探しいたしましたよ。」と誰かの声が背後から聞こえてきた。


彼女は振り返ると、そこには一人の侍女が立っていた。

「何があったの?」と侍女の様子が少し慌ただしい感が完全に隠し切れないことから察して彼女は侍女に問いかけた。

「お忘れですか?今日はコーサラ国の王子の方々がこちらに来られて、これから儀式が行われる予定です。王子の方々はすでに到着しておりまして...今から「シヴァ神の聖弓(ピナカ)の儀」に挑まれるので、姫様がいらっしゃらないから王様が困っておりまして、私たち...皆が姫様を探しています。」


ピナカの儀...

そうか、シヴァ神の聖弓であり、持ち上げることさえも不可能だと言われるあの弓に挑戦し、それが可能にする人は私の...未来の旦那様になる...その決まりだった。


父上も中々悪趣味でいらっしゃる。そこまで娘を譲りたくないと言っても、シヴァ神の聖弓を利用して儀式まで行うなんて...


でもこの儀式には私も見届けなければならないでしょうね。これからの「不自由」のない人生を共にするかもしれない相手はどの殿方なのか...しっかり見届ける義務があるもの。


「分かったわ。今から行くから、支度の準備をしてくれないかしら?」

「はい。かしこまりました、姫様。」と侍女が頭を下げ、その場から立ち去ろうとしたときに姫様の声で止められた。

「王子たち...のお名前は聞いたのかしら?」と姫様が問いかけた。

「はい...コーサラ国の第一王子、ラーマ王子と第三王子、ラクシュマナ王子でございます。『シーター姫様』...」


ラーマ...


名前を聞いたその瞬間、私のこれからの人生が思わぬ展開に転がってしまうことはただの予感でしかなかった。


そう...本当の「自由」を手にすることはこれからだった...


()()()がいれば...


あなたと一緒ならきっと...


きっと...


きっと...


真の「()()」を...

最後までお読みいただきありがとうございました。

古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。


日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。


少しずつ聞き慣れない言葉が出てきますが、これはヒンドゥー教の神話に登場した人物や場所なので、興味がある方はキーワードとして検索してみても幸いです。


もしお気に入りやご興味があれば、「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も受け付けます。


毎日更新とはお約束できませんが、更新をできるだけ頻繁に続けますので、お楽しみください!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラーマヤーナは興味があったんですがちゃんと読んだことがなく、有名エピソードをつまみ食いした程度でしら。 南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品なんですね。これはちゃんと勉強しないと……
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