ぶらり旅(拉麺編③)
魔王...麵の味を体験し、箸の持ち方を教わる
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
ラーメン屋の中...
そこには異様な2人組のお客さんが座って、ラーメンを食べようとしている。
片方は小麦色の肌をしている20代女性で、片方は小麦より褐色の巨漢だ。
その二人の目の前に置いてあるどんぶりを覗くと...また違和感が次に出てくる。
なんと...巨漢の前には普通のつけ麺が置いてあることに対して、女性の前に置いてあるのは真っ赤なスープのラーメンだった。
その赤色が物語るのは異常の辛さであり、さらに漂う匂いには危険を感じさせる。
しかし、それ以上に驚くべきのは...女性の表情だった。
それを見た彼女の目にはキラキラと輝いている...
辛いものが好きな人にとってはこの反応が正しいではないかと思われるだろう...
一方、謎の威圧感を放っている巨漢の表情は...険しい表情だった。
なぜ巨漢がそう思うのかというと...
いけない...
この小っちゃい木の棒を愛する我が君の真似でようやくきれいな真っ二つに割ったが...
この棒でどうやって食べるのか...分からない。
という心の声が聞こえてしまうほど...巨漢の表情は真剣そのものだった。
余の時代では、素手で食べ物を食す...それは当たり前だった。
調理には道具を使う場合もあるが、それはこの小っちゃい木の棒より何倍も大きい。
これでは調理には使えない...
では、これが食べ物に使うのは間違いないだろう...
待って...さっき愛する我が君が言った「イタダキマス」とは何だ...さらにその合掌...
もしかすると、この木の棒は何かの儀式に使うのか!?
神々にこの食べ物を捧げるや食べ物を頂くことを神に感謝するなどの儀式だったりして...それに違いない。
と考えた途中の余は自分の目を疑ってしまった。
目の前にいる愛する我が君はその小っちゃい木の棒を指と指の間に持ち、指で二つの木の棒を動かし、器の中の汁の中にある細く切られた長い何かをつかんだ。
それを持ち上げて、あの小さな口に運んだ。そして、その細長い何かを自分の口に吸い込んだ。
...
見たことのないものの食べ方だ...
余は驚きのあまりに目の前の食べ物を再確認した。
二つの器には汁と細長い何かが別々にある...
とりあえず木の棒の持ち方を先ほど愛する我が君がやったことを真似てやってみるか。
確か...この指と指...こう...
この木の棒...余の手では小さすぎて、うまく持てない...
うん...こう...
違う...
あ...この木の棒のせいで気が障る!
もう一層!素手で食ってやる!
と思って、余は細長い何かに手で取って、口まで運んだ後にはそれを飲み込まずに噛んで味を確かめた。
うん...この味は...馴染みのあるアレだ...
そう...小麦!
しかし、余が知っている小麦にはこのような形状で食べるものではない。
水に加えて小麦粉を形にして、火で焼いた平たいものならわかるが...
さらにこの触感...弾力がある...
この馴染みのある小麦の味が安心感を与えられて、斬新な触感が面白さを与えられる。
これで楽しめそうだ...
と思った余は愛する我が君の目に合わせようとしたとき、彼女の顔にはかなりの困惑を感じる。
そこで彼女が言った。
「手...行儀...良くない...正しい...教える」
と言ってから、愛する我が君は自分の手を余の手を取って、あの小っちゃい木の棒を余の指の間に置いた後に持つ位置を調整した。
それから、彼女は自分の方も小っちゃい木の棒を持って、指を動かして見せた。
なるほど...持つ位置が違うから、余の指でも持てるようにわざわざ修正してくれたんだ。
あ...何という慈悲深き愛する我が君よ...
余のために行動してくれたことは何よりも幸せ!至福!
否!至福の上の至福!
天に昇れそうな気分というのは...この気分だろうか...
と...待って...
至福を感じた余は何か忘れたような気がする...
...
...
...!?
さっき...確かに...愛する我が君は余の手を触ったのではないか...
お...
おお...?
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
今すぐ!
今すぐ胸の中に蠢く歓喜の気持ちを【咆哮】で解き放ちたい!
しかし、今ここで余の咆哮を解き放ったら、この建造物と周辺の全てが破壊されてしまう...
愛する我が君まで巻き込まれてしまう...
我慢するんだ...
呼吸を整えるんだ...
ふー
ふー
ふ〜
...
あ...
この歓喜はまさに今まで味わったことのない至福と言っても過言ではない...
余は、この幸せを味わえる資格なんてないと分かりながら...この瞬間をずっと噛みしめて味わいたい。
小麦の味と共に...これ以上にはないほどの幸福を...
神々よ...あなたたちに一応感謝しておく...
ありがとう...
しかし!
それより感謝すべきなのは寛大で慈悲深い愛する我が君の方だ。
自分の呼吸を整えて、高鳴る気持ちをようやく抑え込んだ余は再び愛する我が君の目に合わせた。
今度の彼女は余を見ながら、彼女の瞳に示された表情は焦りと戸惑いを感じる。
また木の棒を折ってしまったのかと思い、余は小っちゃい木の棒を持っている手を見ると、幸いなことに木の棒は高ぶる感情で折れなかった。
と少し安堵した余は別のことで目に取られた。
あ...余の肌色の方か...
と自分の肌色が真っ赤になった余は愛する我が君の表情の意味が理解できた。
この肌色になったのは、あの時以来だったな...
懐かしいと言うべきか...久しいと言うべきか...
あ...これを見せるのは少々羞恥心が働くが、其方にしか見せないこの色だからこそ...本当の気持ちが伝わればいいが、さすがに今では間が悪い。
一旦落ち着こう...
とりあえず肌色を元通りに戻すことにしよう...
今の状況では心が落ち着かせるわけがないが、ここは愛する我が君の迷惑になるわけにはいかないという別の考え方で感情を抑え込もう。
...
まずは元通りになったな...
これで愛する我が君も少しでも安心できただろう...
...よかった...
其方の今の安堵の表情もまた美しい...
しばらく其方を見つめていたいが、気を取り直した其方は言葉を口にした。
「メン...正しい...食す...方法...これ...」と言って、余の前に置いてある汁の器を取って、彼女はメンと呼ばれる細長い小麦の何かを小っちゃい木の棒で掴んで、次の瞬間...
そのメンを汁の中に少しだけ浸り、それを口に運んだ。
最後に彼女から器を返された。
なるほど...
其方にはすでに汁の中にメンが入ったから、浸る必要がないことに対して、余の方はその所作が必要というわけか...
これは...ツケメンというものか...
興味深い...
では、余もこの新しい食べ物に挑もうとしよう...
いざ!参る!
ようやく始まる...魔王の拉麵堪能記
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
今回もまた拉麺編の続きになります。
ついに...魔王はラーメン(精密に言うと...つけ麵)がようやく食べられると思ったら...麺だけを食べて、まだつけ麵としては食べていません!!!
何ということだ...挙句に箸の持ち方まで教わるって...
また待たせるのか、作者!(すみません...)
次回は続きになりますので、お楽しみにしてください。(これで食べられる!そのはず!)
何よりこの魔王の溺愛ぶりプラスこの男子高校生みたいな純情さのコンビネーションは何たる破壊力があるでしょう...よくこの展開にしたなと自分も感心しました。(笑)
なんだ?この突然なイチャラブコメ的な展開!!!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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