眠り姫の夢(学食)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
夢の中の学食で...思い出が語られる
これは...夢...だよね?
目の前の光景が夢であることを完全に受け入れきれない香蓮は、疑いの目をしている。
まずは目の前にいる女性は自分の親友である椎谷・蘭華だと錯覚してしまいそうだが、この人に名前は【シーター】であると聞いた。
シーター...って、ランカによく話されたあのラーマーヤナに出てくるヒロインだよね?
まさか...と言う考えは最近体験した不可解で不思議な出来事のおかげでそのまさかという考えは大分なくなり、これはあり得るという考えの方に移り始めた。
でも、なぜそのお姫様の容姿はランカと似ているのか?という疑問はやはり残っている。
その疑問の目を感じ取ったシーターと名乗った女性は笑みを浮かべて、次のように説明した。
「たぶんあなたは今...なぜ私とあなたの親友のランカが似ているのか気になると思いますが、その回答の前に食事はいかがかしら?」と唐突の誘いにまたえ?という表情になったカレンだった。
「食事...ですか?今は夢の中ですよね?食事は必要ないではないでしょうか?」というド真面目な言葉を口にしたカレンに対して、シーターと名乗った女性は思わずクスッと笑ってしまった。
「ふふっ...あ...失礼...あなたの言う通りよ。夢の世界では食事は要らないと思われるのも、実際に栄養が取れた訳でもなく、敢えて言うなら心が満たされることぐらいかな?...と言っても不可能じゃないわ。何だって夢だから...あとね...今あなたの心が映し出した光景はこの食堂だと見えたから、ぜひ何かが食べてみたいなと思っただけだわ...」という彼女の少し恥ずかしそうにも見える笑みと言葉に対して、カレンはなぜか納得してしまったような表情に変わった。
「ああ...ですよね...夢だから、そこはツッコまないことにしましょう...私の心の中にはここが一番安らぎだと感じるのも今納得しました。では、あなたからどうぞ...そちらに行って、食べたいものを注文すれば、あとは隣の受け取り口で受け取って...まあ、お金を払うのは必要ないか...あなたの口に合う料理があるかどうか分かりませんが...何か特に食べたいものがありますか?」という配慮も含めた説明をしたカレンだったが、目の前にいる女性はただ微笑みを浮かべて、想定外の言葉を口にした。
「そんな必要がないわ。想像するだけで料理が現れるから...これは夢だと忘れたかしら?」
「あっ...そうだった...ということは想像するだけで料理が出てくるのですか?」とまだ半信半疑のカレンは思わず再確認した。
「そう...目を閉じて、食べたいものを想像してみて...そして、目を開けたら、現れるはずわよ。」という言葉に信憑性というより、今更疑っても仕方ないと思い、女性の言うことに従った。
目を閉じて、カレンは考えた...
うん...何を食べようかな...というか夢の中で食べたい料理を考えることもまたシュールだね...
まあ...これに決めた!と思ったカレンは目を開けると、目の前に自分が食べたい料理が机の上に現れた。
それは...生姜焼き定食だった。
驚くことにいつも自分が頼んだライス少なめと味噌汁の代わりに豚汁に変更させたという自分のカスタマイズまで再現された。
「すごい...ここ...大学のときいつも頼んだやつと同じだ。」と感心したカレン。
そして、もう一つの肝心なところを気になるカレンは向こう側に座っている女性が食べたい料理を確認するために見ると、驚きのあまりに絶句したカレン。
なぜかというと...お姫様だと思われる女性が想像で出現させた料理は...この食堂以外でもどこにもある...一般的で定番な料理のカレーライスだった。
ここはまさかという言葉を使ってもいいか...まさかカレーライスだとは...さらにこれ...インド料理のカレーではなく、肉とジャガイモとにんじんが入っている日本定番スタイルのカレーライスだった。
「現代の日本ではこのカリーをご飯に乗せて一緒に食べるという独特な食文化があると聞いて、一度試してみたかったわ。まあ...現実世界では味わってみたかったが、私は現実の世界にはもう存在しないから...せめて夢でもと思って...」と寂しさが感じられる彼女の今の微笑み。それを感じ取ったカレンは質問をせずに手を合わせて、こう言った。
「いただきます!」と言って、箸を手にして、生姜焼き定食を食べ始めた。
それを見た女性は、少し安堵の笑みを見せて、同じ仕草で小声で「いただきます...」と言って、スプーンでカレーライスを食べ始めた。
うん...この味付け...本当に懐かしい...甘さと塩っぱさのバランス...あとはショウガの絶妙なエッセンス...これこれ、大学でよくランカとたわいのない話しをしながら、よく頼んで食べたもの。
最近は大学に寄ってもランカの話を聞くだけですっかり学食でご飯を食べていないしな...
安らぎを感じる場所...か...
それは本当かもしれないな...
大学生活は、4年経っただけでこんなに懐かしく感じるのかな...
それとも最近は疲れたせいかな...それで大学での思い出が安らぎを感じるのかな...
「本当に懐かしい...」と思わず口から言葉が出てしまった。
それを聞いた女性はスプーンを皿に置いて、いつもの笑みを浮かべながら、カレンに質問した。
「あなたにとってここは安らぎの場所...それは、あなたの親友もその安らぎだと感じる要因に含まれているかしら?」
「そう...ですね...いつも振り回されましたけどね、あたし...ハハっ...そんな能天気の性格で...南アジアの話になると話が止まらない奇行タイプのランカは、そもそも私とかなり正反対なのに...ここまで親友になったこと自体でも今考えたら、ある意味不可解で不思議ですね...」と言って、カレンは笑みを浮かべた。そして、彼女は話を続けた。
「そう...あなたが食べているカレーライスで思い出しました。ランカに一回聞きました。本場の南アジアスタイルのカレーが好きなのに...なんで学食ではカレーライスも食べるの?って。ほら...本場の人から見て、日本のカレーはカレーじゃない!と言う人もよく聞いたことがあるし、気になって聞いてみたんです。そこで答えはですね...ふふっ...確かにこれは本場のカレーとは違うけど、あくまで別の料理だと思えばこれもこれで美味しいよと呑気の笑顔を見せて、さらに...カレンちゃんとここでいろんな話をしながら、食べるカレーもさらに美味しくなったよ。友達と食べることってまるで魔法のスパイスがかけられたみたいだねって...それまで言われました。...あっ、すみません。なんか...あなたの顔を見ると、本人に告白したみたいでなんか...何を言ってんだ、あたし...」と耳まで赤くなったカレンは自分がしゃべったことをかなりの恥ずかしさに襲われて、相手の顔をまともに見られなくなった。
そのカレンを見て、シーターと名乗った女性はほっこりした気持ちで優しく微笑んだ。
「あなたは本当に友達思いですね。ランカもきっと...あなたと同じくあなたのことを大事に思っていると思うわ。」という言葉にさらに赤面になったカレンは恥ずかしさを誤魔化そうとして、話題を変えた。
「あ...あなたの話にも聞かせて...あなたは何者ですか?」という質問に対して、カレンの目の前にいる女性は相変わらずの笑みでこう答えた。
「その前に...冷めないうちに食事を済ませましょう。話はその後お話しますわ。でも...確かに...友達のような存在と食事したときの料理って、さらに美味しくなったわ。」と再び笑みを浮かべて、スプーンでカレーライスを食べることを再開したシーターと名乗った女性。
夢の世界と彼女の物語はまた食事の後に続く...
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
今回はなんと...唐突の飯テロ回です...(なんでこうなったか作者も分かりません(笑))
最近はグルメ関係のドラマを見過ぎたせいか...ちょうど夢の中では学食だから、これは使える!とピンときて、このような形で書きました。
誰だって思い出になる料理とか誰かと食事することで幸せを感じる時があるではないでしょうか?(作者はどちらかというと孤独のグルメ派ですが(笑))なんか思い出すと、ほっこりします...
カレンちゃんとシーターと名乗った謎の女性...どのような話の展開になるでしょうか...これからも夢世界で現実世界と並行して、物語を進めようと思います!
完全に他のキャラのことが忘れられた気が...(そんなことありません...ただ登場を遅らせるだけです。次回はあのキャラを!...たぶん...)
本当にここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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