不可解な出来事(エンカウント)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
新たな出逢いがもたらす...さらなる謎
都内にあるバナナのジュース専門店「WUKONG」
香蓮は、一緒に店に入った男子大生、設楽・駱の妙に真面目な表情がより真剣になったことを見て、先ほど言われた言葉を思い出す。
あの男性の人は設楽くんのお兄さん?
遠くから見て、あの褐色の肌色なら...外国の方と間違われるな...って、実際の兄弟のこっちの設楽くんは正反対の白肌だよ...兄弟でこんなに違うのか?
あと...一緒にいる少女は...妹にしてはなんか違うし...あ、なんか言った。
お兄ちゃん大好き...
え~!?
本当に兄妹なの!?
設楽くんに...確認で聞きたいけど...彼は今ただあの二人から少し距離があるところで立ち尽くしている。
たぶん今すぐその二人の会話に入り込むタイミングを見計らっているかな...?
あ、さっき何が起きるとか...離れて下さいとか言われなかった?私...
そして、少女の方は女子高生たちのところに行ってから、ようやく彼が動き出した。
しかし、こっちから見ても、兄弟にしてはなんか距離があって、ぎこちない感じだった。
「その子は誰?」という質問に、私はあの少女がこの二人の妹ではないと分かった。
「あ...ちょっと話せば長くなるけど...俺の使命を教えてくれる...的な人...かな?」という男性の曖昧な答えに、設楽くんは呆れた表情でため息をついた。
気のせいか...自分と親友の蘭華とのやりとりでよくため息をした自分がふっと自分の頭の中に浮かべた。
「相変わらず、非科学的で理解し難いことを言いますね...使命というのはどのような使命ですか?」
「うん...世界を終焉から救う?いや、魔王を倒すの方が近いか...まあ、そんな感じ!」と謎な笑顔をした男性と共に出てきた答えに対して、設楽くんは片手で頭を抱えて、またため息をついた。
「フィクションの話がしたいなら、相手が僕じゃなくてよかったですね...僕なら耳を貸しもしないから...呑気な人には話の相手にはなりません。」と冷たい言葉を口にして、後ろに向いた。そして、私に少し頭を下げて次のように言った。
「お待たせしてすみません。もし可能であれば、場所を変えましょうか?ここでは、状況的には様々な要因で都合が良くありませんので。」
「あ、ああ...あなたには気まずいと感じたら、それでもいいよ。ここは私がまた来ても問題ないし...」と彼に言った。
よっぽど仲が良くないというのは分かるけど...なぜそこまでお兄さんのことに冷たいのかな。
あの不可解で不思議な出来事とは関係があると思うけど、今のところは何も...ん?
と私が気づいた。
この兄弟のさっきの立ち位置はある程度の距離を置いたことを...それとは何か関係があると考えたら、さっき感じた距離とは違って、物理的な距離のことに理解した。
二人で店を出ようとしたそのとき、突然目の前に何者が現れた。
それは、さっき女子高生のグループに囲まれているはずのあの真っ白な少女だった。
それが不思議だと思って、女子高生のグループが座っているところを見ると...なんと...
目の前にいる少女と同じ姿をしている少女はまだ無邪気な笑顔で女子高生たちと駄弁っている。
目の前の光景にはまだ脳が追いついていない私たちは目の前にいる少女に視線を戻した。
そこで、その少女はしゃべり始めた。
「あ...あれは俺の分身だから...いや、俺は分身か...まあ、どっちでもいいけど、あなたに聞きたいことがある。」と少女は設楽くんにその無邪気な灰色の目を見て、小さな声で話した。
私にもあまり聞こえないけど...聞き取れた内容は、「旦那の匂い...でも違う...ナーガのも...」と、その内容には私には理解できなかったが、それを聞いた設楽くんも訳が分からない顔をした。
「えーと...あなたは誰?」と私がつい質問をした。そうしたら、今度は私に質問した。
「お姉ちゃん...この人の恋人?」と無邪気な声で唐突な質問をされた私は不意打ちに遭い、すぐ回答ができなかった。
「え?あ、ああ...えーと...あの...」とまだ回答に戸惑っている私の代わりに設楽くんが何かを言ってくれそうな様子だった。
「違います。僕はこの古海さんという方の友人の部屋探しを手伝うために同行しただけであって、現在は恋人の関係ではありません。」とハッキリすぎるぐらい私との関係を明確にしてくれた。
なぜだろう...少しがっかりしてしまった。
何に対して?この真面目なメガネくんに私たちの関係をハッキリされたのに対して?
何を期待してるんだ...
でも...現在の関係というのは、今後の関係にはまだ...期待できるのか...な...
って何を考えているんだ、私。
そうそう...この子、なぜ同じ姿が二人いるのかまずそこだ...
なんか分身とか言っていたけど...まさか忍者の術みたいなやつ...いや、それよりすごいものかも...
「えーと...そこに座っている女の子はあなたの双子かな?」とまずは常識の想定内で質問してみた。しかし、帰ってきた答えはより私を混乱させた。
「あ...俺...違うな...えーと、あたし...風を操ることができてね...それで空気中の粉塵とかを圧縮して、分身の姿を作ったんだ。だから、今のあたしには声が本体から伝わるけど、体は触れないよ。」と少女がサラッと説明した。
...え?忍術というより...普通に空気からそれが作れるの?
「なるほど...だからか、同じ姿だけど...なぜか物量というか重さを感じない...そう...光に反射した粉塵が圧縮されたんだ…空気と話しているみたいだ...実態がない幽霊と話しているというのもこんな感じですかね...興味深い。」となぜか少女の説明にすっかり理解できた設楽くんを見て、苦笑をしてしまった私だった。
「そこは不思議だと思わないんだ。」とツッコミを入れたが、彼の目には少しキラキラに見えた。
「あくまでその仮説には僕が賛成するだけなので、実際にはどのような仕組みについては大変興味があります。」とメガネの位置を直して、私に真面目な顔で言った。
「あ、そう...」と私は少しやれやれと思いながら、軽く返事をしたそのとき、後ろから声が聞こえた。
「ラク!」と言う声に振り向いたら、そこには先ほど設楽くんと話した彼のお兄さんだった。
彼はこっちに歩いてきて、何かを説明しようとした。
「信じがたいことかもしれないけど、俺はネパールに行ったとき、突然不思議な存在と出逢って、自分の使命を思い出せとか言われて...ばかばかしいだと思われても構わない...でも、今回の件には俺も自分なりに真剣に考えた結果で今ここに来たんだ。あの子と会って、少しずつ理解してきた...」と話の途中に、設楽くんは「近づくな!」と突然叫んで、険しい表情をした。
それを聞こえた彼のお兄さんも足を止めて、そこに立ち尽くした。
店の中の注目が設楽くんに集まった。
明るい店内の空気が急に重く感じた...
そこであの真っ白の少女は女子高生が座っているテーブルから駆け出して、こう言った。
「お兄ちゃんたち...ケンカはダメ!」という言葉に少々場の空気が和んだ。
そして、設楽くんのところに来た少女は彼のズボンを掴んで、泣きそうな顔をした。
「ダメだよ...ラクお兄ちゃん...お兄ちゃんと仲直りしないと...」と言ってから、掴んだ手を離さずにラクを引っ張った。子供だと思えない力で設楽くんは抵抗できず、お兄さんのところに連れてきた。そのとき、彼が言った。
「ダメだ。この人に近づけると、また何かが起きる...っ!」と彼が上を見て、目を丸くした。
その視線に辿ると、上に設置されている丸いペンダントライトの照明が突然落ちてきた。
思わず私も危ないと言おうとしたとき、なぜか落ちたペンダントライトが空中に止まってから、元の設置された位置に戻された。
まるで【魔法】だった。
と思ったとき、少女に呼ばれた。
「お姉ちゃんも一緒に座って...話があるの...一緒にお話しよっ!」と笑顔で呼ばれたが、正直さっきのことではまだ完全に受け止めきれない私には何が何だか...
だから、とりあえずその少女と設楽くんとお兄さんの4人でテーブルに座ることになった。
「こうやって話すのも初めてだな...ラク。」と言い出したのはお兄さんの方だった。そこで設楽くんはまだ状況が把握しきれないまま、ただ頷いて...「そうだね...兄さん...こんなに近くいたのに僕に何も起こらないって初めて...」と返事した。
そして、少女は設楽くんの方を見て、話し始めた。
「あんたはラクだというなら、全ては想定済みだ。大丈夫...もしまたさっきみたいに物が落ちたり飛んだりしたら、俺の風であんたたちを守るから...安心しろ。そして、あなた...」と今度は私に目を向けた。
「え?私?」とビックリした私に少女は笑顔であまり理解し難いことを口にした。
「あなたも大変だね...この兄弟に巻き込まれて、さすが苦労人属性の人が惹かれ合うのかな...そうそう...ラクシュマナ様とあの眠り姫様みたいに...」
不可解で不思議な出来事のオンパレードのせいか、カレンの頭にはもうパンク寸前に追い込まれた。
その状態の彼女の脳裏に、彼女の親友の姿が浮かんだ。
ランカ...あなたなら、この状況が理解できるのかな?
鬼の王と名乗る巨漢と今を何をしているだろう...
今、どこにいるのよ...
今の私を助けて~
というか、誰か...ちゃんと私に説明して!!!
と内心で叫びながら、目の前のことから現実逃避したい気持ちで頭を抱えたカレンだった。
この最新話の最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
兄弟が出逢うことで何かの不可解で不思議な出来事が起きると最初に書こうと思ったのですが、なぜかその謎の少女がいろんなことをやってしまったせいで...結果的にこの兄弟が近づけられるということになり、少女は彼らを守るというかなり最初に思った展開と違っていた。(マジで自分が何を書いてしまったのか...分かりません...笑)
風を操るって...分身まで作れるの!?と必死に考えた結果...なんとか説明ができたような...ないような(まあいっか...ワロタ)
そして、結局巻き込まれたカレンちゃんには...一体これからはどうなるか...
この人たちの出逢いはどのように物語の展開に影響を与えるか改めて乞うご期待!
何より、次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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