眠り姫の追憶~束縛~
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
眠り姫が語る...献身と束縛
私は、シーターとは違う。
決して姉上を嫌って、このような言葉を選んだ訳ではない。
ただただ私は私であり、別の人間である。
姉上は、自由が欲しいと口にしたことをたまに聞いた。
そのとき、自由とは違って...私も自分なりに何かを求めている。
脳内に浮かべたのは、一生を共に過ごせる相手が欲しい。
いわゆる自由とは真逆の【束縛】を望んでいる。
それが手に入れば、これ以上何も望まないと私が思っていた。
そして、ある日私の運命を変えた方が現れた。
その方の名はラクシュマナ様...
コーサラ王国の第三王子であり、父上が姉上の未来の旦那様を選ぶために行われている儀式に参加する第一王子...つまり王太子のラーマ王子と共に訪ねてきた。
彼はもともとその儀式に参加するつもりもなく、自分はただ付添人だと思っても構わないと言っていた。
他国の王室の方を目に掛けた機会が何回もあったが、普段はたくさんの従者を連れてきて、自分は何もせずに従者に世話させたのは王室の人間の権利であり、常識だと思った。
そのためなのか...ラクシュマナ様に興味を持った。
結果的にラーマ王子は儀式を成功させて、姉上と結婚することになった。
さらにその流れで私までラクシュマナ様との結婚が決まった。
その後、コーサラ王国の宮殿での暮らしが始まった。
ある日、私は彼に質問をした。
儀式に参加するとき、なぜ付添人を連れて行かないのかと...
そして、彼が答えた。
自分がいれば、それで十分だと...
最初に聞いたとき、あまり理解できない私は不思議だと思った。
自分だけで十分というのはラーマ王子の世話をするには従者が要らないという意味なのか自分が従者の代わりに世話をするということなのか...
しかし、私が考えたことの両方が外れた。
なぜかというと、この二人には汚れが全くなく、沐浴はあくまで黙想をする前に身をより清めるためだった。そもそも世話をするなんて必要がなかった。
それに気づいたときには、自分の中の別の感情が湧いてきた。
この汚れなき人をこれから独り占めるという事実...
なかなか手に入れることではないものが独占できるような欲望...
それだけで私の心が満たされる...と思っていた。
しかし、それは叶わなかった...
私が独り占めしたい人の目には...私ではなく...決して他の女性でもなく...
彼がずっと見つめている相手...
それは、義兄上のラーマだった。
私は愛されない訳ではない。
しかし、私が望んでいる形の愛とは違っていた。
彼の心の中にはラーマ王子への【敬愛】の気持ちは揺るぎもなく、私の愛で彼の心の隙間に入り込む余地が決してない。
それを悟った私は自分の気持ちに蓋をして、諦めようと思った...
そのときだった。
義兄上の追放が命じられたときだった。
姉上とラクシュマナ様が共に行くと知ったとき、私は一緒に行動すると決意をした。
しかし、私は引き留められた。
足りない...
この人を縛り付けるにはまだ足りない...
一緒に行動するだけでもあなたを独り占めすることができない。
そのとき、ラクシュマナ様の悩みを一つ聞いた。
自分はずっと不眠不休でラーマと姉上を見守ることができるば...という一つの願い。
それを聞いた私は眠りの女神、ニドラにお願いした。
ラクシュマナ様が寝る必要がなくなる代わりに、自分が眠り続けることを...
それを聞いたニドラは私の願いを叶えようとしたそのとき、ラクシュマナ様が反対した。
「そこまでしなくてもいい...ウルミラ。私は君にここに残してほしいのは父上と母上の傍にいて欲しいだけだ。あの妃の企みで兄上と私がいなくなったら...父上と母上は悲しむだろう。だから...」と説得された。
「自分の人生を捨てるようなことをして、眠りから目覚めたのは何年になるか分からない。私は、兄上の傍にいないといけないというのは私のわがままだ。勝手なことだ。君に付き合わせるわけには...それで君までこんなに残酷な不幸をさせては...」と最悪感が汚れなきこの人が襲っている様子を見て、私はなぜか内心ホッとした。
ああ...汚れなきでもこの人も聖人じゃなく、悩める人間だな...と...
しかし、あなたは嘘をついた。
私のことを心配したのは嘘じゃないが...
あなたの心の中にはラーマと姉上を必ず守るという使命感しか...ないから...
それなら私は...
「大丈夫ですよ。私はただ眠りにつくだけ...例え何年経っても...私にとってはただ長い一夜の夢から目覚めるだけ...私が何より望んだのは、私の次に目覚めたときにはあなたが無事にここに戻った姿が見られることです...」と答えた。
私を愛さなくても構わない。
もし目が覚めてから私と共に一生を過ごせることができれば、それだけで十分だ。
それまでの辛抱だと思えば...
ここであなたが束縛できれば...それが本望です。
一つわがままを言われてもらうと...
今夜だけ...
今夜だけは...
「私が眠りにつくまで一緒にいてください...それだけで十分です、ラク様」
これであなたは決して私から離れることはもうできない。
ずっと私の献身であなたを縛り続ける...
私だけの...ラク様...
どうか...強欲な私をお許しください...
では、いつかあなたが私を目覚めさせる日まで...
おやすみなさい...
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
今回は追憶編になりました。お兄様に敬愛しすぎる第三王子と彼の妻の話...実際にはこの出来事でウルミラはシーターより純粋たる自己犠牲の心がすごいではないかとも言えます。あまりスポットライトに当てられなかったので、書いてみようと思ったら...なぜかすこーし(ではない)歪んだ感情が交ざってしまいました。これは自分なりの解釈です。
原作では14年間眠り続けると書いてあったので、もはや元祖の眠り姫かもしれませんね...
なぜここで書いたのか...ウルミラは現代には何の関係があるのか...一つの伏線を置いておきます...(いつ回収するか分かりませんが...笑)
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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