サンサーラ(輪廻②)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
明かされる真相...そして、キョウダイが出逢う
都内にあるバナナのジュース専門店「WUKONG」
賑やかな店内の中には一人の青年、設楽・羅亜夢と孫・悟空と名乗る真っ白な髪と肌、そして灰色の瞳をしている少女が面を向かって、店の一角の席に座っている。
知らない人から見ると、褐色の肌色をしているラームと真っ白なサトラのコントラストでかなり面白い組み合わせに見えるだろう。
しかし、近づけて会話を聞き取ると、コントラストのさらにシュールな雰囲気が増していった。
「と、いう訳だ...さっき話したことは全部俺の知っている旦那の話だ。厳密に言うと、あんたの先祖様かもしれないけど、あんたにも我が主、ラーマ王子の血が流れている以上...これから起きることに備えてもらわないといけないからな。」と少女からとは思えない言葉使いとしゃべり方でラームに説明を述べたサトラ。それに対して、動揺が隠せないが...真面目な顔で話しを聞いたラームは話し始めた。
「なるほど...もしあなたが言ったことが全て本当であれば、僕には叙事詩に登場する古代王国の王子の血が流れている。さらにそれはヴィシュヌ神の化身であって、これから起きるかもしれない世界の終焉に何とか阻止しないといけないということ...簡単にまとめると、こんな感じですね。」と話を整理したラームはさっきサトラが話されたこをまとめて、次にこう述べた。
「では、復活した魔王というのはあのランカー島の羅刹羅闍で、あの魔王には何かしら世界の終焉とは関係があるということはあなたもその線について考えているのですよね...」
「まあな...飲み込みが早くて、助かりますぜ。俺はあの魔王が復活したことには何かの理由があると思ったんだ。そこで俺は信頼できる情報源に確認して、実際にあの魔王と会ってきた。」
「あの魔王と会ったのですか!?」と目を丸くしたラームは思わず言葉が漏れた。
「まあな...正確に言うと、そこにいたナーガを一発で倒して、その後は魔王の攻撃を交わしながら、ときには挑発しながら、平和的な会話をしたよ。」
「え...と、それは平和的というべきなのか...ともかく何か分かったことがありますか?」
「あ...それはな...」と何かを言おうとしたサトラに女子高校生らしきグループが二人の席の前に近づいてきた。そして、その中の一人の子が話し始めた。
「あ、あの...すみません...もしかしてですけど、お兄さんとこの子は兄妹とかですか?」という突然の質問をされたラームは回答に少し戸惑った。
そこで、座っているサトラが立ち上がって、いきなりその小さな体でラームに抱きついた。
「そうだよ~この人はね...私のお兄ちゃんなんだ...お兄ちゃんだ~いすき!」とさっきの話をおっさん臭いしゃべり方で話した同じ人物だと到底思えないほどにすごく無邪気な表情をしながら年相応の少女のしゃべり方でラームまで恥ずかしいと感じるぐらいの激甘セリフを吐き出した。
この人?...ヤバい...いろんな意味でと何かを悟って、気を取り直したラームは、笑顔を見せてサトラの芝居に付いていこうとフォローを入れた。
「ハハ...サトラったら、いくらお兄ちゃんが好きでも皆の前で抱きついたりするのはずるいよ...お兄ちゃんを困らせたら駄目だよ。」と爽やかな笑顔を見せて、周りまで眩しい光が見えると錯覚するほど明るい雰囲気を全開した。
その結果、最初に話しかけた女子高生は「きゃ~可愛い!」と興奮し始めて、他の友達はどちらかというと、ラームの爽やかな笑顔に魅了されたかのように気絶しそうだった。
「写真を撮ってもいいですか!?」と言い出した人もいたが、「すみません...写真自体にはいいですが、この子もまだ未成年なので、あまりSNSに投稿されると困ります。」と丁重に断りをした。
「え~?残念...」と残念がっている女子高生がいたが、それは仕方ないということで、別の願いに切り替えた。
「妹さんが嫌じゃなければ、少しお話してもいいですか?」と聞き出した。その回答をしようとしたラームの先に「うん!いいよ!」と明るい声で返事したサトラ。ラームに抱きつくことをやめて、女子高生のところに歩いた。
その前にサトラはラームにしか聞こえない小さな声でつぶやいた。
「その天然たらしで人好しのところ…旦那とそっくりだぜ…」
それからは女子の輪の中にサトラが女の子らしく振る舞っていた。
さすが何千年生きてきた者...他者とのコミュニケーション能力が磨かれて、もう絶賛するしかない。
と感心したラームだったが、次に聞こえてきた言葉にラームの背筋を凍らせてしまった。
「兄さん...?」
その声が聞こえた方向を振り向くと、そこには一人の眼鏡の少年と20代の女性がラームの方を見ている。
女性のことは知らないが、少年の方はよくラームにとっては知っているも何も一番身内の人である。
「ラク...いつからそこに?」と気まずそうに相手に質問をしたラームに対して、ラクと呼ばれる少年は自分の眼鏡の位置をわざと直して、真面目なトーンでこう言った。
「お兄ちゃん大好きのところからだよ...兄さん...」
まるで何者かがこの出逢いをセットアップしたかのような絶妙なタイミングで本物の【兄弟】が出逢ってしまった...
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
真面目な話になるかと思ったら...なぜかお兄ちゃん大好き(ハート)の展開にひっくり返して、作者も困惑しています...(俺、何を書いてしまったんだ…笑)
今回のタイトルは33話以来の2回目にしました。ラーマーヤナの登場人物が繰り出す面白い話にしたいなと思って、これで同じタイトルをシリーズ化にしたいなと思います。
そして、最後の最後に...まさかの本物の弟登場!ついにラームとラクが物語で出逢いました。
さらにかなりヤバいことをしっかり目撃されたので、弟としてはどのような気持ちで、兄としてもどう説明するかはお楽しみです...笑
この人たちの出逢いはどのように物語の展開に影響を与えるか改めて乞うご期待!
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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