ぶらり旅(地下鉄編③)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
途中下車から始まるぶらり旅...
地上に戻った魔王...ぶらり旅スタート
余は、走っているデンシャのすごい速さに関心を持っている...
中に何人も人間に乗せたまま、この大きさの鉄箱はどのような仕組みで速さを保ったままに走れるだろうと考えてしまう。
人力や戦車馬のような力などは到底不可能の力で進んでいるこの鉄箱は何が源で動いているだろう。
それに対して、揺れることを感じたものの、探知した振動にしては微動で大変乗り心地が良い。
まあ...余はその気があれば、空が飛べる戦車に乗って、空を自由に走れるが、今の時代の人間の技術の進化には改めて感心した。
まあ、我々種族の神々どもに対抗するために蓄えた魔力と身に付けた魔術のほどではないが、褒めてやろう...
それにしてもこの長い席にも座り心地は悪くない...そして何よりこうしてシーターと一緒に座ることができたら、実際の玉座より何億倍も幸せを感じる。
あ...この時間を永遠に噛み締めたい...本当に余の傍にいる愛する我が君は今余のことを見向きもせず目をそらしたが...それで良い...余はこのような瞬間を一緒に其方と過ごすことができるだけで至福の時とも言えるんだ。
この幸せの雰囲気が他の人間に伝わったかのように他の人間は余と愛する我が君のこの瞬間を邪魔しようともしなかった。
あ...本当に...
本当に...このデンシャは特別な空間だと感じてしまった。
例えあの恐ろしい女神の元に連れて行かれているとしても構わない。
とその幸せの瞬間の余韻さえも浸る時間が与えられず、自分の体には何かに反応した。
これは!?
余の心の在処が示す新たな助言か?
どこだ!
今は地下の大きい穴に走っているデンシャの中に閉じ込められたため、ハッキリとした方向が分からない。
そちらか...否、こちらか...動いているデンシャのせいで方向がいちいち変わってしまった。
こうなったら、感知できた方向に自分の頭をその向きに追いつけてやろうじゃないか...
首が曲がっても死なないしな...
うん...集中するんだ...
余の心の在処を見失わないために...
としばらくそれに集中したばかりで、隣にいる愛する我が君の声でその集中が途切れた。
何?...この行動を止めて欲しい?
駄目だ...また新たな助言がいつ来るか分からない以上、今の機会を逃すわけには...
と余はできるだけ言葉で説明したが、言葉が伝わったかの問題の先に、すごく困惑している愛する我が君の顔を見て、余はふっと気が付いた。
其方に困らせてしまってどうする...
しかし、これよりいい方法は...と戸惑った余にそのとき、突然愛する我が君に腕を引っ張られ、デンシャを出ることになった。
しばらくデンシャから出た場所で立ち尽くした。
うん...今動いていないから、ハッキリと方向はまだ分かる...あの方向だ。
少し安心した。
と言いながら、距離はどれぐらいあるか分からない。
地上に上って、確かめることにするか...それしか方法がなさそうだ。
なぜか分からないが、余は普通に愛する我が君に向けて話そうとしただけで、其方がすごく安堵とした表情になった。
気のせいだろうか。
まあ、それはどうでも良い。
その後、またあの自動に動く階段に乗って、またあの薄っぺらい門がある場所と遭遇した。
ふっ!余は二度と失敗を繰り返さないぞ。
何せよ...この「キップ」という通行証があれば、そしてこの小さな隙間にこれを入れれば...
と背後に愛する我が君が「マッテ!」という声が聞こえたが、間に合わなかった。
その門は再び余の前に閉ざした。
...
この...
この身の程の知らずの薄っぺらい板の分際が!!!
余の通行を邪魔する者は何者であろうが、消してやる!
ここでこの門を全て破壊してやろうか!と怒りが溢れ出そうとした余だったが、背中に軽く叩かれて、それに振り向いた瞬間、さっきの怒りはまるで最初からなかったかのように刹那でもかからないぐらい消えていった。
その理由は愛する我が君の笑い声と笑い顔を見たから...
あ...なんという愛おしい笑顔なんだ...
幾万回を見ても、その笑顔を呆れる気がしない。
其方の笑顔のために余は幾度の試練に遭わされようとも...受けて立つ。
この笑顔が見えるなら...其方以外にこの世の全てが滅んでしまっても構わない...
と自分の心の中の感傷に浸るうちに、愛する我が君は余が手に持っているキップを取って、また近くにある何かの光る板のところに行って、戻ったときには新しいキップを渡された。
どうやら...通過料が足りないらしく、さっきのキップのままでは通れないとのことだった。
そうか...人間はこうやって定められた通過料であのデンシャに乗って、自分が行きたい場所まで運んでもらうということだったのか...
昔のようにどこに行こうが、自分の足か乗り物さえあればこのように通過料がかからないのに...しかし、あの速さでかなり遠い場所までは短時間で移動できる点と言うなら、納得する。
とにかく...あの女神のところに行くことではなさそうで、余も安心した。
あの女神との戦いになれば、愛する我が君を守りながら戦わないといけないからな...
それは容易いことだが、万一を考えて戦いは避けた方が良い...
無事にあの門を通った余と愛する我が君は地上への出口らしきにたどり着いた。
そこにある階段を上り切ると、どうやら地上に着いたようだ。
出発した場所から...この辺ではより高い建造物の数が増えてきた。
その出口からは橋とその向こうに小さな川らしき水のたまり場が見えた。
川沿いでは緑色で彩られ、太陽の光が水に反射して、一瞬の騒がしい人間の人混みから静寂が感じられるほどきれいな光景だった。
森と比べたら小さすぎる緑だが、森に住む者ではなくてもたまには緑色の光景が見たくなる。
今の時代ではどうやら余の時代に比べて森がかなり減ってしまったようだが、せめての安らぎの光景だ...ひとときだけでいいと人間も同じことを考えて、その緑を残すだろう。
と少しの安らぎを感じた余は改めて自分の心の在処の方向を確認すると...後ろにいた気配を感知した。
後ろを振り向くと、また別の小さな門がいっぱい並んでいるところが見えて、これはデンシャに乗るための別の建造物か...ここは地下に行かなくてもデンシャに乗れそうだ。
上に看板には何か書いてあったが、いつも通りに読めない。
愛する我が君の説明からすると...今の場所は「イイダバシ」という場所らしく、これから食べ物を探しに行くらしい...
その料理の名は...「ラーメン」
それは一体、どのような料理だろう...
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
今回はぶらり旅の続きです!と言いながら、魔王の視点から始まって、そしてついに地上まで戻りました!
相変わらずの溺愛ぶりに書いている途中に作者もかなり引き気味になっています(笑)。
傲慢で上の目前で短気でありながら、あるところに繊細なところもあり、何より愛する我が君への一筋?一途?...そういうところはこのキャラクターのポイントにしたいと思って、こんな形になりました。
お金が足りなくて、改札の門が閉ざしたことって、誰でも経験があるかと思うので、ネタにしてみました。というか...あとでSUI●AやPAS●Oを持たせましょうか?(笑)
さーて、「ラーメン」という料理はどんな料理ですかね?魔王の知らない言葉をカタカナにしてみたら、まさかこっちもカタカナでした...笑
まあ、たぶんみんなが知っているラーメン...のはずです。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は新作も書いています。
現在は17話まで投稿しましたので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~【鬱】という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
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