ぶらり旅(近所編)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
心を探す旅が始まった...ぶらりと...
余は、シーターと一緒にあの狭い空間を出て、外を歩くことになった。
しかし、ただ外でのんびりするだけではない。
愛する我が君が...何だ...ブラリタビとか言ったが、これは余の心の欠片を探すという目的が兼ねている。
外は程良い気温と涼しい風...
さらに、愛する我が君のあの小麦色の肌とまとまった黒髪は太陽の陽差しに照らされることでさらにその美しさが増してゆく。
あ...眩しい...眩しすぎる。
太陽神よ...この瞬間だけではあなたに感謝する。
愛する我が君の美しさをあなたに見せることには少し気は乗らなかったが、仕方あるまい。
しかし...今回もまた唐突な出来事だった。
しかも、心の欠片の行方とそれを探す方法を考えている途中...
突然何者かの声が余の頭の中に聞こえたという新手。
あの謎の声...聞き覚えがある。
その声が話したのは、
「あなたが探し求めたモノの居場所の方向だけを教えましょう...どうか...思い出してください...そして、心と自分を取り戻してください...では、ご武運を...我が王よ」という内容だった。
何者の声までは分からないが、どこかで懐かしく...どこかでこの不完全な余の心が少し痛みが走る。
驚きのあまりに余は立ち上がり、頭が天井を突き破ってしまった。
気が付いたら、愛する我が君を困らせてしまった。
言葉が通じなくてもその困惑の表情を見た余は理解できた。
すまなかった...
その件はいくらでも罰を受けるつもりだ。
ただし、今は余の心の欠片を見つけるのは最優先だ。
こうして、自然的にあの方向に行けば、余の心の欠片があるということが分かった。
距離などは知らないが、方向に辿れば...必ず見つかる。
最初は余が所有する戦車、プシュパカ・ラタを召喚しようと思ったが、愛する我が君が歩きたいと言われたから、其方が言うままに余は従うことにした。
少なくとも余よりこの国を知っている其方なら、何かの方法が分かるかもしれない。
余の今の状況はもはや進むべき方向を伝えるための道具に過ぎない。
あの狭い空間が集合する建物を出ると、細い道がある。
両側には木や茂みまたは石の壁が並べている。
余の前に歩く愛する我が君の姿がずっと見たいと思ったため、他の景色は気にしていなかった。
しかし、突然ある石の壁のところで何かを見ている愛する我が君を見て、余もその視線が差したところを見た。
そこには珍しき生き物がいた。
「ネコダ!」
これは...ネコダという生き物なのか?
余の国では見たことがない生き物だが、あの小さな毛玉...
そうだ!ヒョウ!
この生き物...ヒョウの子供なのか!
行けない!シーター!危険だ!
と思ったら、愛する我が君は素手でそのヒョウの子供だと思われる生き物を触った。
かなり動揺した余はヴィーナを召喚し、攻撃をしようとしたが、様子が...何もなかった。
かなり手懐けしただろうか...あの生き物は攻撃をするところか気持ちよさそうに愛する我が君に撫でられた。
あ...余が生きてきたこの生涯で別の生き物になりたいという気持ちが初めて湧いてきたかもしれない。
というより、余もあのように愛する我が君に撫でられたい!
いかん...考えれば考えるほど嫉妬の感情が...溢れてくる。
静まれ...余の不完全な心よ...
欠片が全部集めて揃えば、余もそのように愛する我が君とより共に過ごせるんだ。
ここであの生き物に嫉妬する場合じゃない。
と考えると、愛する我が君は余の方を見て、ふっと笑い出した。
何が可笑しいのか分からないが...笑っている其方を見るだけで幸せだ。
その後はしばらく歩いて、細い道を抜けると、大きな道が見える。
そこで、余が愛する我が君が今生活しているあの狭い空間に入る前に衝撃を受けたあれにまた目撃した。
すごい早さで走った輪が付いている鉄の箱がいくつか並んで、道の上に走っている。
早さには関心を持ったが、あの早さでもよくお互いぶつからないというところは余にとってもっと感心した。
余の持つ戦車は空に飛べるため、空の中では何者かの故意ではない限り、ぶつかることはない。
しかし、地上では違う...
あの鉄箱を操る人間はよほど兵のように訓練を受けたのでしょう。
そうではなければ、ここまでの秩序が保てるとは考えがたいことだ。
無論...人間は過ちを犯す生き物だ。それは例え時間がどれほど流れようとしても簡単に変わることがない。
しかし、人間共も大きな道の端にある細い道で鉄箱が走っている大道の隣に何も驚かずに歩いている。
ここにいる人間共にとってはいちいち驚くことではないであろう。
この国に何日間しか滞在しないが、まだ秩序が保てる方だと余が思う...もはや感心したところだ。
余の生きてきたのは殺戮と征服しか道がない世界。
戦わなければ、生き延びない。
食うか食われるかの繰り返し...そのような世界だった。
何回も言うが、愛する我が君が会うまでという話だ。
だから、この平和の雰囲気には馴染めないが、嫌いではない。
...
余の気のせいなのか人間共はチラチラと余を見ながら、通りすがる。
ふむ...この偉大な羅刹羅闍の姿が見られるだけでありがたいと思え!
よく拝めばいい!
そうだ...と最優先の目的を忘れるところだった。
ここから余の心の欠片があるとされる方向を確認すると...こちらの方向だ。
しかし、その方向に振り向こうとしたとき、愛する我が君が別の方向に歩き始めた。
そして、或る場所に止まって、ここに入るように促された。
そこは建物の入り口で階段があり、地下への道とつながる。
白い光を照らす細い筒みたいなものが壁や天井に設置されたおかげで足下は見えるが、ここはどのような場所につながる階段か見当が付かない。
一応場所の名前は言われた。
ここは【ホンゴウサンチョウメ】という場所らしい。
その言葉の意味は分からないが、とりあえず其方に付いていくことは例え冥界だとしても余は大丈夫だ。
万一、其方に危害を加えようとした者がいれば、抹殺するのみ。
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ついに始まりましたぶらり旅...ようやく始まったね...作者もうれしさで溢れています(話をここまで延ばした張本人、何を言っているんだ...笑)。
古の魔王にとっては様々なことが初体験のはずだが、その一方ではヒロインへの溺愛ぶりのおかげであまり他のモノには興味がないという感じで書きました。もちろん、関心を持つモノはちゃんとあります。
犬の散歩をする人とかいろんな店の人々などもこれから物語に入れたいなと思います。なにぜよ...旅が始まったばかりなので...これからもすれ違いと拗らせたっぷりの二人?のやりとりを続けたいと思います!
ネコのように撫でられたい!という心の声...作者も少し引きました(笑)
ちなみに...インドなどでは野良猫が少ないイメージが強いです...ネパールに行ったときも野良犬(と牛さん)しか見かけない気がします。調べると、そもそもペットとして飼う文化がない上に宗教的には不吉のイメージになってしまったようです。
同じ動物なのに、国によっては扱いや見方が違いますね。感慨深いです。
地下への階段に降りた先には何が待っているでしょう...特に分かったと思いますが...多分次回はまた別の話になります。(群像劇なので、あと少しお待ちしていただければ幸いです)
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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