集い(トリムルティ)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
神々が集う...美酒を堪能するために...
都内で土地の価格が高いという誇りを持つギンザ
その中にそびえ立つ摩天楼の最上級に構えるのは最高級バーだった。
「Triad」
このバーは会員制であり、常連客に招待される者しか出入りが許されないため、客はすでに顔見知りの人同士ばかりだった。
薄暗い照明の中に流れている生演奏のジャズ音楽...
漂う酒の香り...
棚の上にオシャレなウィスキーなどの洋酒のボトルが数え切れないほど壁一面を埋まっている。
そして、その棚の前に立って、手慣れな動きでお酒を作っているバーテンダー服の店員。
見る人が魅了されるほど洗練された動作の一つ一つ。
ようやく作りの過程が終わり、ガラスに注がれた多彩なカクテルが客のところまで運ばれた。
運ばれた先のテーブルには3人の客らしく人物が座っている。
「お待たせいたしました。神様」
と言って店員が丁寧にコースターを先にテーブルに置いてから、一つずつ飲み物ガラスを置き、テーブルの上にスライドさせる形で客の前に提供した。
「こちらは【ゴッドファーザー】でございます。こちらは【セブンス・ヘブン】でございます。最後に【フォールン・エンジェル】でございます。」と順番にカクテルを注文した客の前に出してから、「ごゆっくり...」とお辞儀の後に去っていた。
薄暗い照明の下に照らされたのは人影らしいの3人...
顔は見えないが...話し声から推測すると、3人とも男性らしいの声で話している。
「考えてみると、なぜかカクテルの名前は天使やら天国やらが付いているモノが多いですね。そう思わないか?兄さん。」と一人の客が言い出した。
「そうね...特にキリスト教関連のワードが多く、本当に西洋と呼ばれる方の人間の影響とは...気がづいたら、世界中に広がって、そちら側から見て...自分たちがまるで世界の中心だと錯覚してしまうほどね...ね?お兄様。」と話しかけられたもう一人の客が別の三人目の客に声をかけた。
「この世界の成り行きは私の管轄ではない。だから、あえて意見を出さないことにするよ。しかし、自分が作り出したこの世界で何が起きているか...愛着が少し残ったせいか、気にはなる。で?なぜ私にそんな話を振ってくるんだい?世界の守護神である君が...維二郎」とここでお兄様と呼ばれた客が声をかけた相手に名前で呼び、質問を質問で返した。
「まあ...こうなるとはすでに把握済みだよ。【創造】が終わったら僕に世界を丸投げしたお兄様に意地悪してみたいだけさ。それともまた破壊して、無から作り直しましょうか?ね?壊三」と維二郎と呼ばれた客はまた今度別の客を名前で呼び、話題を振った。
「構わないけど...兄さんがやれと言うなら、俺はただ【破壊】するだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。」と冷徹な目でハッキリ答えたのは壊三と呼ばれた客だった。そして、「ところで...兄さん。なぜ僕たちは今人間の世界でカクテルを飲むことになっているのか説明してくれないか?」と彼は維二郎に問いかかけた。
「ふっ...【永遠】に近い時間と共に過ごしたのに、今でも僕の思考が読めないのか?」と鼻で笑って、皮肉のような言葉で返した維二郎。
「俺たち、少なくとも俺は自分の役目以外なことには興味がないよ...ずっとこの世界を【維持】する兄さん以外はね...」とただ淡々と言葉を述べた壊三。
「だ・か・ら...ここに連れて少しでも話そうではないかという僕の意図をくみ取って欲しいね...まあ、別に問題がある訳ではないけど、最近よくあるじゃない?神様が下界で何かを企むというやつ...単なる暇つぶしだ。ね?造一兄様?」と今度は別の客に話題を振った。
「なぜ私に振る...」とめんどくさそうな顔をした造一と呼ばれた客。
「そもそも...私たちは共同体であり、上下なんて概念はない。人間のように兄弟ごっこをする必要があるのか?」と素朴な疑問を言い出した造一。
「兄弟ごっこというより、もはや人間ごっこだよ...お兄様。ここで人間と同じ目線で物事を見ることもたまにはいいですよ。傲慢な神とかに呼ばれないためには...」と維二郎は前に置いてあるカクテルを一口飲んでから、
「悪くないでしょう?人間が作った酒は...【ソーマ】とか【アムリタ】は格別に美味だが、そればかり飲むと、何もかもが飽きてしまうよ。」と維二郎はさらに言葉を加えた。
「確かに...これも美味だ、兄さん。でも、俺の質問の答えにはなっていない。俺たち、三神一体が集う本当の理由を教えてくれ。」と壊三はまたその冷徹な目で維二郎を見つめて、問いただそうとした。
「本当に2人とも...なんでそこまで急かすなのかな?永久の存在はこのバーで一日でも一ヶ月でも一年でも世界が終わるまで酒というものを楽しんでも何も変わりがないのに...」と肩をすくめて、また皮肉を言った維二郎。
「君のことだから、この世界の必然に関わることがないと、こんな茶番をやらないと知ったから、君がよく言う人間的に言ったら、いつからの付き合いだと思っているの...というやつだ。」と呆れそうな顔をした造一。
とここでさらに皮肉の度合いを上げたように拍手したのは誰でもない維二郎だった。
「さすが...聡明な創造神のお兄様...物分かりが大変よろしい!ハハハ!」と笑い声が店内に響いた。
しかし、他の客がその笑い声に反応することもなく、ただ会話と飲食を続けている。
「何をしても、認知すらしない限り、俺たちの声も姿も捉えないのに、なぜそんな大声で笑ったのか...兄さん。」とここで表情を変えずにツッコミを入れた壊三。
「だから笑うのさ!この可笑しくても面白い僕たちの世界に...」という維二郎の回答に理解しがたい表情になった造一は「僕たちのというか...君の管理下の世界だ。」と述べた言葉を訂正しようとした。
「そうですよ...お兄様...あなたが作り出した世界を管理し!いつか壊三に壊してもらうこの世界だ!この世界の【均衡】を維持するのは他の誰でもない...この守護神である僕だ...」と自慢げに言い出した維二郎。
「均衡...ね。時々自分の都合に合わせるように干渉する張本人がよくそんな言葉を口にしたな。」と今回は造一が皮肉を言い始めた。
「それは間違いだよ...造一兄さん。」とここで言い出したのは維二郎ではなく、壊三だった。
「維二郎兄さんは...自分が干渉した後の世界の変化に興味があるんだ。自分の都合に合わせるつもりではない。」となぜか維二郎の代わりに弁明する形になった。そこに便乗したように維二郎はさらに高笑いをした。
「さすが人間からの崇拝ランキング1位の破壊神様!よく言ってくれた、愛おしい弟よ!」
「人間的に言うと、君は今明らかに悪役の態度を取っていると思うが...言っても変わらないか...」ともうどうでもいいと思ってきた造一。
「壊三が言った通りだ、お兄様。僕は確かにこの世界に干渉するときがある。しかし!それは僕の思惑通りに行っても行かなくても、それは重要ではない!それに対して、この世界が...人間たちはどう学習し、進化するのかは一番楽しみなんだ!」と熱弁した維二郎に対して、大きなため息をついた造一は「君の管理下の世界だ...好きにすればいい...」と言った。
「いつ終焉が訪れたら、呼んでね...まあ、呼ばなくても時が来たら、壊すけど...」と少し笑顔を見せて、その笑顔と相反する言葉を口にした壊三。
「では...せっかくの美味しい酒だ!この集いにまずは祝杯を挙げましょう。」と改まって仕切った維二郎。
「夜はまだまだ長い...この機会を楽しもうじゃないか?ね?二人とも...」とさらに言ってから、ガラスを挙げた。
「仕方ない...」と渋々に言いながら、ガラスを取った造一。
「では、維二郎兄さんは乾杯の音頭を取って...」と言い出したのは壊三だった。
ここで3つのガラスが掲げられて、乾杯の挨拶が始まった。
「では、私たち...トリムルティのさらなる【栄光】と下界の素晴らしい【破滅】に...乾杯!」
「...乾杯」
3柱の神の集いがギンザの地で密かに開催したことは無論、人間が認知できる領域ではないようだ。
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
完全違うところから新キャラの登場...会話から読むと、ただ者じゃないのはすぐ分かるけど、果たして正体と目的は...またのお楽しみに...
神と書いて、シンと読むのもポイントです。造一...維二郎...壊三...という名前を見て、全然隠す気もないな...作者(自分...笑)
書いているうちに維二郎のキャラが段々ヤバい方向に走っているけど...どうしよう(何もしないで、次の展開を考える作者...笑)
次は誰を登場させようか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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