香蓮(未知との遭遇)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
彼女が遭遇する...未知なる存在と
香蓮は思った。
日常は辛い。
しかし...決して非日常を求めるわけではない。
だから、彼女が目にしている者は彼女自身の理解を超えた。
ようやく脳内回路の停止から復旧した香蓮は表情が固まったまま...
思わず自分の気持ちが声で出てしまった。
「え~~~!?!?」
この人は誰?っていうか何!?
想像と全然違う...
ワンちゃんとか猫ちゃんをまた拾ったとか...それだとすっかり思ってしまった。
まさか人を拾ったとは...
って!それはアウトじゃない!?
最近JKを拾ったとかそういうタイトルの小説を本屋で見かけたことがあるけど、
これ...完全におっさんだよね...
さらにTシャツがピチピチになるぐらいのムキムキおっさんじゃん...
ホームレス?とは何か違うし...
そう...一番の違和感は濃い褐色の肌色...
さすがに日本の方とは日焼けサロンの常連とかじゃない限りは難しい色だ...
さらに南アジアオタクの親友である蘭華を考えると...
別の可能性はまた浮上した。
スリランカから帰ってきたことから推測すると...答えは一つ!
「蘭華...あんた...」と香蓮は蘭華に向かって、次のように話した。
「まさか...スリランカから人を攫ったの?」
さすがにぶっ飛んだ考えだが、考えられる可能性はまず最悪のシナリオから頭に浮かんだため、質問がこうなった。
「えー!?香蓮ちゃん...私が人攫いをするような人間だと思っているの?」と目を大きくして、親友からの質問というか自分がそう思われることに対してかなりショックを受けた蘭華。
「あんたなら、その可能性があると思っただけよ...本当に攫ったとは思っていないわ。じゃ、なんでこの巨漢があんたの部屋にいるのか説明できる?」と誤解を解いた同時にさらに説明を求めた香蓮はまた目の前にいる巨漢を見た。
親友は、巨漢と同居している。
という言葉が合っているか微妙だが、とりあえず今は同じ部屋にいるという意味にしている。
「というか、あんた...こういうのがタイプなんて...付き合いがかなり長かったけど、知らなかった。」とまた次に爆弾発言を投入した。
「違うよ!香蓮ちゃん!急に質問のベクターが変わったよ!まあ...確かにボリウッドの俳優さんはかっこよくて、素敵な方がいっぱいいるよ。三大カーンの方々とか最近注目されたヴィドゥユト・ジャームワールとか...やはり南アジアでは東アジアと違って、イケメンとマッチョが一緒にセットで来るという傾向があるけど...私の好みを言うと、ムキムキじゃない方だよ。細マッチョまではOKぐらいかな。」と必死に弁明した蘭華だが...そもそも質問も回答も可笑しい方向に走っている。
「あたしが今本当に聞きたいのは、なんであんたの部屋のこの大男がいるのかということよ!」とそこでなんとか軌道修正をした香蓮は改めて蘭華に問いかけた。
「えーと...説明するには時間がかかるけど...」と少し面倒さそうな顔をして言った蘭華。
「ぜひ...詳しく聞かせてもらうわ...」と目が笑っていないままで笑顔でこう述べた香蓮。
「分かったよ...この人に少し説明するから、ちょっと間ってね。」と言って、隣にいる巨漢に話しかけた。
香蓮が聞き取れない言語でのやりとりで...
しばらくして、蘭華と香蓮と謎の巨漢が部屋の中に入り、部屋の中央に置いてあるテーブルを囲んで座った。
そして、斯く斯く云々と説明した蘭華。
「なるほど...とこんな話が信じられると思うの?」と香蓮の反応はやはりこうなった。
「スリランカのシギリヤロックで謎の少女と会って、謎の牢獄で閉じ込められたこの巨漢を解放して、突然デカい蛇が現れて脱出...そして、戦って突然魔法みたいに鎧やら剣やらを召喚して、あの蛇を倒した。そこで突然現れた謎の子供にぶっ飛ばされ、あんたがしばらく看病して、旅を一緒にした末...そこの空港で別れた...と思ったら、飛べる戦車で日本まで追いかけてきた...で?今はあんたの家に居候している...本当にあんた、頭大丈夫?いろんな意味で...」とここで心配そうな顔になった香蓮に対して、「全ては真実だけど...信じられないよね、普通に...」と蘭華はただ苦笑しかできなかった。
「信じるか信じないかの前の問題よ...例えあんたが言ったことが本当だとしても、この人は何者か先に説明してもらわないと...」と相手を責めない態度で普通にただ心配していることが伝わるようにしている。
「よく聞きました!そう...この人?こそは私を卒業に導く...私の仮説を立証してくれる正真正銘、羅刹なんだ!」と自信満々に言い出した蘭華。
「この人が?...あんたが探している鬼?」と首を傾けた香蓮。
「なんというか...イメージとは違うというか...一見では人間と大差はないけど...大きさ以外は...」と香蓮は意見を述べた。
「でしょう?まさに私が考えたことと一致しているんだよ...羅刹とは皆が思うような容姿とかではなく、人間に近い姿なんだって!」と自信溢れることで説明を追加した蘭華。
「で?この人と喋られるの?」という素朴な疑問を香蓮が蘭華に投げた。
「えーとね...古代言語の片言なら、今では意思疎通がある程度できるよ...そうそう!自己紹介を教えた!」と何か思い出した蘭華は巨漢に向けて何か話した。
そして、その巨漢は香蓮の方を見て、言葉を発した。
「ハジメマシテ...ワタシ...ナマエ...ラージャ」
「喋った!え、えーと...はじめまして、私の名前はカレンです。」
「ナマエ...カレン...」とりあえず香蓮は自分の名前が分かってくれたみたいで昔の映画みたいな未知との遭遇の気分を味わっている。
「すごいでしょう?まだ一週間しか経っていないけど、まずはこれが言えるようになった。へへ」と自慢げになった蘭華。
「ペットにお座りを教えることに成功したみたいな感覚だけど...まずは意思疎通ができることだけでまあ...安心したよ。」と少し安堵の表情を見せた香蓮。
「で?これからはどうするの?」とここで香蓮は話題を変えた。
「そこだよね...」とさっきの自信が一気に消えたみたいで、落ち込んだ蘭華。
「は...やはりノープランだよね、あんた。」と呆れた顔を見せてから、香蓮は「ここまで来たら、手伝うわよ...」と渋々に言った。
「香蓮ちゃん...本当に優しい香蓮ちゃんに彼氏がいないのはやっぱりおかっ」と感動した蘭華が言った言葉に途中で香蓮の手で口を塞がれた。
「本当にあんたって余計なことを言ってくれたわね...は...あんたが言ったことが本当なら、この人は今違法滞在しているということになるけど、まずはそこからなんとかしないと...このまま隠し通す訳にはいかないし...」と現実味のある話題を言い始めた香蓮に対して、蘭華は思わぬことを口にした。
「パスポートと在留カードならあるよ」
「え?」とまた香蓮の脳内回路が再びフリーズした。
そして、香蓮は開いた【非日常】への扉の中に片足を踏み入った形で謎がまた深まる一方だった。
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
久々に親友の香蓮ちゃん回でした...蘭華の言動に翻弄されながら、親友のことを思って心配してくれる香蓮ちゃんの良い脇役感を感じていただければと思って、こんな感じにしました。
さらに少し未知との遭遇(E.●?)みたいな感じを出したいと思って、とりあえず自己紹介ぐらいは...と思って、なぜかまたカタカナになっています。ナゼデショウネ?
謎が明らかになるとは見えないですけど...次回もどうぞお楽しみに!
(誰が登場しますかね...)
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。(特に急に出てきたボリウッド俳優さんとか...笑)
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実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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