ヴァーユの子の追憶~緊箍児~
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
一匹の猿は思う...忠誠心とは何かと
旦那...
人間であるあんたは、俺がこれ以上道から外れないために必要な存在なんだ...
暴れすぎたときにはしっかり叱り、偉業を成し遂げたときは素直に俺を褒めてくれた。
スグリーヴァが猿の王になったときでも、俺にとってはただの称号に過ぎなかった。
俺は本当に忠誠を誓うのは我が主...旦那だけだ。
例え神々でも俺に指図されることは断じてない!
逆にされると、俺は天まで昇り、気が済むまで暴れ回る。
実はあんたがもうこの世にいなくなったときはそれをやった。
旦那がいなくなった現実に対する逃避感と虚しさのあまりに山に籠り、いつの間にか俺の体が石化してしまった。
もう動くことをやめたせいかな...
旦那がいないこの世界では一層このまま石になってしまってもいいと思ったが、風神の親父はそれを認めないらしく、その石を風で割って、俺を目覚めさせた。
起こされて不機嫌と鬱憤の感情の塊を抱えた俺は、冥界に潜ったり天に昇ったり、神々にひたすら喧嘩を押っ始めた。
おかげで【大聖】という名前までつけられた。
聖が付いていること自体はあまり性に合わないが、実際には神聖とはほど遠い行いをやったことに対しては神々の皮肉だと思う。
暴れ回った結果に天が荒れ果てた。
それでも俺の憤怒が収まらなかった。
まあ...そのあとはめっちゃ偉い方に捉えられて、破れない牢獄に入れられたけどな。
だから、あの坊主が現れたときには驚いた。
旦那の匂いがする。
俺の悪戯などを許してくれたその優しさと寛容さは旦那のことを思わせる。
でも、あくまで似ている雰囲気だけで旦那じゃない。
その優しさの一方で俺の頭に輪っかをはめられて、力を封印されることにはその証拠だ。
本当の俺を信頼しきっていないではないか少しだけ不信感を抱いた。
旦那なら、このようなことはやらないはず。
まあ...か弱い人間には俺の力を抑えた方がいいか...
あまりに余った力を扱うこともまた難しいことだ。
そして、俺と坊主とあと3人?の仲間の旅がしばらく続いた。
その旅の終わり、俺の罪状の全てが免除されたらしく、自由の身になった。
いろんなことをやらかしたのは一応反省した。
だが、その後はまたあの虚しさが胸に芽生えてしまった。
【自然】から生まれた俺はこの世に風が吹く限り、俺は不死身だ。
だから、これから目的なく時間を過ごすのもじっとするのもどうにもできない。
とか言って、また暴れることでどうなるか身に沁みるほど理解した。
だが、時間が経つことにつれて、だんだんそれがどうしたと考え始めた。
この世界を見てきた不死身の俺はあることを悟った。
その行いが善か悪か他人が勝手に決めてやればいいさ!
俺は自分の好きにやらせてもらう...
まあ、めっちゃ偉い方に怒られない程度に...な
変わらないことがあるとすれば、それは一つ...
それは旦那への【忠誠心】だ!
そう...あんたとまた巡り合える日まで...
例えこの世界が滅んで、この不死身の体はこの世界と共に滅んだとしても...
俺の不滅の忠誠心は最後まであんたへの忠誠を誓う!
そして、俺はようやく気づいた。
俺にとってあんたは、俺の【緊箍児】だった。
俺の力を抑えるためではなく、俺の良心を保ってくれたんだ。
そう...
あんたは...
俺の【良心】そのものなんだと...
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ついに...ラーマーヤナに登場するヴァーユの子が別の物語の登場人物と見事にごちゃ混ぜしてしまいました...テヘ(笑)
もともと同一人物論があるので、そこからインスピレーションをもらいました。
やってしまった感がありつつ、それがどうした!という気持ちもあります。
実はこのキャラの今後の展開にもまた隠し球があります(少しネタバレ)ので、どうぞお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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