魔王降臨(来日:その③)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
新たな出会いと戦いが...始まる
「きゃああああああああ!」と大声で叫んだ蘭華。
目をつぶったままでも風を切る音が耳に入り、強い風が体に当たった感触で推測すると、自分が今のどの状況になっているか理解ができた。
そう...また空を飛んでいる。
そして、次に衝撃を感じると、今度は着地したようだ。
なんとか無事に着地できたみたい。
は...また生き残ってよかった...
と安堵した顔と共にため息をついたが、目を開けた蘭華は改めて隣にいる巨漢を見た。
この人?...どこまで飛んでいく気なの...
もう...
というか...帰国してからまた大変なことになってしまった。
ようやく空港から無事に自分の部屋に戻ってきたけど、疲れ切った私はとりあえずあの夜は何もせずに寝ていた。
目が覚めると最近の出来事は全て夢だったというオチを少し期待はしたが、朝目を覚めた自分が見た光景はその考えを全力で否定した。
いた...
部屋が狭いから、空いているスペースに座らせたあの巨漢がどこにも行かず、そこに座っている。
というかこっちの方を見ている...
正直言って、怖い...
昨日言われた言葉が記憶に蘇って、背筋にまた寒気を感じた。
まさか...私にこれからずっと付きまとうって本気なのかな...
でも、食われるとか危害を加えられる感じではないから、ある意味では害がないかもしれないけど...
さらに言うと、自分の仮説を立証するための立派な証拠は自ら日本まで来てくれたんだ。
ここはうまくコミュニケーションを取って、いろんな情報を得る機会でもある!
と蘭華は今自分が置かれた状況を相変わらずのポジティブさで楽観的に考えて、自分の頭の中で出した結論を納得した。
とそのとき、お腹の虫が鳴く音が部屋中に響いた。
しばらくの沈黙の後に蘭華は顔が少し赤くなって、巨漢に話しかけた。
「料理...食す...二人...行く...如何?」
最初は自分も含めてこの人?にもご飯を食べさせようと思って、バイト先でもあり、部屋から歩ける距離の店まで来た。南アジア出身なら、昔とは変わってもカレーのような料理とかであれば問題なく食べられるかなと思ったからだ。
あとはスリランカの旅で使った貯金も底についたため、外食でツケができるここならまだ安心だというもう一つの理由があった。
しかし、入り口の扉を開けて、中にいる店員さんに事情を説明した結果、奢ってくれると言われて、ホッとした直後...
隣の巨漢がいきなり叫んで、いきなり前みたいに楽器のヴィーナを魔法のように出して、あのデカい輪を召喚し、店の入り口をきれいな丸の形で見事に切り取ってしまった。
そして、私を肩に乗せて、飛んだ。
と今に至った...が...
さっき何があったの?のような問いかけをした結果、帰ってきた回答は
「猿...匂い...殺す...」と言われた。
伝承の話で猿が嫌いというか、敵視するのは分かるけど...そこに猿なんていないよ。
ああ...知られたら、オーナーに怒られる。
弁償するには給料いくらでも足りないよ(泣)
とトホホを言いながら、大きなため息を吐いた。
しばらくして自分の気持ちが整理できた蘭華はようやく周りを見始めた。
...ここはどこだ?
なんかどこかの学校の校庭みたいね...
日曜日だからか誰もいない。
...違う
ここは、廃校された学校。
建物の劣化から見ると、すぐに分かる。
知らないところまで飛んで来たようだ。
とここで隣の巨漢は一言を発した。
「...ナーガ」
え?
ナーガって...またあの大蛇が現れるの!?
ここ日本だよ!いや、最近の不思議な出来事は国とはあまり関係ないか...
それでも大変なことになるよ!
と思ったら、何者かの影が視野に入った。
目の前に現れたのは外観からは人間に見えるが、
目が...白目の部分が黄色くて、蛇のような細く黒い瞳孔をしている!?
そして、この異形の二人?のやりとりが始まった。
話した言葉はやはり古代言語で、片言しか聞き取れないが、必死に聞き取ろうとした結果はこのような内容だった。
「ナーガ...汝...目的...問う」
「我...主...使い...汝...試練...告げるため...参上」
「問う...主...誰...」
「回答不要...ここ...力...試す...我...決闘...申し込む」
「余...負ける...否...汝...殺す」
という話の末、両方が急に身を構えて、何か戦いが始めようとしている。
都合がよく、誰に見られないとはいえ、ここで戦いが勃発するのはさすがにマズい...
と言いながら、どうやって止めるんだ...?
どうしよう...と蘭華はこの後の展開には自分が何かできることがあるか考えたが、もちろん答えはなかった。
そして、目の前の戦いが始めた瞬間...
そう...それは一瞬だった。
戦いが始まる前に空から降ってきたような登場の仕方で何者が乱入した。
周りに舞い上がった土埃で姿が見えなかったが、
しばらくすると...ほこりが沈み、あの乱入者の姿がはっきり見えてきた。
それは...小柄の人のようだが、毛に覆われた...
白い...真っ白な毛をしている...一匹の猿がそこに立っていた。
その下には先ほど巨漢と話していたナーガだと見られる人?がその猿の足に踏まれて、倒れ込んでいる。
そして、その猿がこっちの方を見て、ニヤリと笑顔を見せた。
放った言葉は聞き慣れた日本語だった。
「見つけたぞ...羅刹の王様よ...」
と言って、すぐあの小柄の体が巨漢の方に接近し、想定したとは違う...思わぬ別の戦いが始まってしまった。
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ちょっと急展開すぎますかね...笑
これで店での出来事の説明はようやく伏線回収ができました。そして、次の展開に移ります。
あの白い猿の正体はお分かりいただけたと思います...次は戦闘の展開になりそうなので、楽しみにしていただければ幸いです。
ご興味ある方はぜひ登場した言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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