羅刹羅闍(生配信)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
RASETSUチャンネル...生配信開始
とあるインターネットカフェ
狭い一人用の個室席の中に一人の人物がパソコンの前に座っている。
部屋が薄暗い上に逆光のせいではっきり区別できないが、体格から察するに男性ではないかと推測する。
その男性はヘッドホンをしながら、ドリンクバーから取ってきたコップを手に持っている。
パソコンの前に漫画が何冊積んでいるが、男性の注目で見ているのはモニターが映し出す映像である。
それは...某有名配信プラットフォームの動画...
よく見ると、それは生配信の動画である。
そこには鬼の仮面を被っている人が何かを話している様子。
(ここからはその配信の内容をお届けいたします)
「RASETSUチャンネル!そして生配信を見ている皆さん!こんばんは!鬼ならぬ...羅・説でございます!今日はなんと話題沸騰中のあの動画と共に解!説!しちゃいまーす!」と元気な声で仮面の人が画面に向けて、手を振っている。
「えーでは、このチャンネルを見ている皆さんのコメントを見ながら、今日の話題を紹介します...ふむふむ...今日も相変わらずのメンバーの名前が見えていますね...ハハ...人気チャンネルへの道はまさに修羅の道!羅刹の道!と言いますね~どれどれ?」と自分の知名度に対して、自虐ネタで流して苦笑しながら、目の前にあるタブレット端末の画面を確認した。
「おお...オーキッドさんだ!いつも見てくれてありがとうございます!あとはSomchai66さん...鬼ぎりさん...Narayaさん...あれ?一人が足りないですね。」
そこでパソコンの前にいる男性はその生配信のチャットルームにログインしました。
【Axeがチャットに参加しました】というメッセージがチャットルームに表示された。
「おお!Axeさんが来ました!こんばんは!」
Axe:遅れてすみません<m(__)m>
オーキッド:Axeさん、お疲れ様です。
Somchai66:Hello
鬼ぎり:乙~
Naraya:ご苦労だったな...Axe
「これでいつものメンバーが揃いますね。では、今日の話題の紹介をしちゃいまーす。」
Somchai66:Yeah!
Axe:ドキドキ
「要するに...いつも私が主張した羅刹...つまり鬼は実在するという仮説を証明できる証拠を...なんと!信頼できる情報源から入手いたしました!」
鬼ぎり:よ!待っていました!
Naraya:本当に証明できる証拠でしょうね?
オーキッド:楽しみ~
「先週私が紹介したスリランカでの出来事は皆さんは覚えていますよね?シギリヤロックの中から飛び出したあの人影...そこで私は確信しました!羅刹...鬼の正体は!あの動画に写った者ではないかと...その動画に写った人影だけだとUMAのような扱いでしたが、その人影を高画質で分析すると...」と配信中に見せた動画をさらにズームアップして、解像度をさらに上げられた。
「その正体は空色の肌色をしている巨人だった!巨人と言っても2メートルぐらいの大きさだから、極めて人間に近い...ということは鬼は人間より少し大きめぐらいの大きさを持っているという仮説になります。皆さんが想像した巨人とは違うかもしれませんが、実は私たちのイメージの鬼はあえて大きさを人間が思えないぐらいのデカさにしたことで恐怖を具現化するために描かれたではないかと私は思います!皆さんはどう思いますか?」
鬼ぎり:確かに大きさは様々ですね。納得納得
Naraya:恐怖を具現化するために造られた虚像を信じるとは...人間というのは愚かな生き物ですね。
Axe:空色の肌色を見ると、さすがに人間の常識では思えない色ですね。
「そうです!Axeさん!その通り!この空色の肌色をしているのは何よりの証拠です!日本の鬼でよく語られるのは赤鬼とか青鬼ですからね...やはり肌色もまた通常の人間と違うから、その違いから人間の恐怖の象徴となったではないかと...そして!この空色の肌色をしている羅刹と言えば?皆さんがよくご存じのあのラーマーヤナに登場する羅刹の王!そう!魔王ラーヴァナ!」と仮面の男は別の画像を画面に上げた。それはネットの百科事典でアップされた写真...検索のタイトルはラーヴァナ。
Somchai66:Tossakan!
鬼ぎり:出た!魔王!というか頭が多過ぎ...草
Axe:頭だけではなく、腕も20本あります。
「その話もそうですが、やはり神話などで登場する怪物や魔物の形状といったら、いっぱい頭や腕があるというポイントもまた人間と一番かけ離れたところですね。そうすることではっきり人間とは違う存在に区別、悪く言えば差別することができますから。と言っても、あくまで伝説上の架空な存在としているので、では!もし人間に近い形をする魔物がいれば、どう思いますか?」
Naraya:人間という者は何かしら相手との違いを理由にして争う生き物だから、結果としては変わりませんよ...愚かだな...
Axe:Narayaさんと同じ意見です。形が近くても、昔の白人が黒人や東洋人にしたこととはあまり変わりがないかと思います。
「真面目なご意見、ありがとうございます。その話題は社会問題の話になっちゃうので、あくまでここは羅刹や鬼の存在の話をしましょうね、ハハ」と少し焦った仮面の人
Somchai66:Kenkashinaide
Naraya:それはともかく、これは先週も話したが、新しいネタはないですか?」
「はい!待っていました!その質問!実は入手したネタは今ネットの一部で話題になったあれです!じゃーん!」と仮面の人は別の画像を画面に共有した。
「これは先日成田空港で撮影された写真です!空港の出口で謎の上半身裸の大男が立っていたこの写真!ネットではこの大男の正体は誰なのか騒いでいます。そして、しばらくすると」と次の画像を共有すると、仮面の人は話を続けた。
「一人の女性がこの大男に近づきます。この女性は誰なのかプライバシーのためにここでは詮索しませんが、気になるのは次の画像です。」とまた別の画像に切り替えた。
「注目してほしいのは大男の後ろにあるあの金ピカの戦車です...信頼できる情報源によると、その大男がそれに乗って、空から降りたらしいですよ!さらにさっきの写真と今の写真で分かったようにあの戦車が突然消えました!もちろんネットでは消えた瞬間を撮られた動画までありました。」と次にはネットで拾った動画を見せた。
Somchai66:Wow!Magic!
鬼ぎり:空を飛ぶ戦車とか...ファンタジー世界か...草...って消えたし
「そうです。もはや魔法のようで、まるでファンタジー世界で登場されるものですよね。そこで調べると、なんと!魔王ラーヴァナは空を飛ぶ戦車を使ったという話ができました!」
Axe:ということはこの大男は魔王ラーヴァナですか?
Naraya:ネットの職人をなめないでください。このようなもの...今の技術ではいくらでも加工できる。
「私が信頼できる情報源から得た情報はこれで以上ですが、ネットの一部ではすでに私と同じ意見かまたは単純に魔王が降臨したという投稿が多いですね。スリランカでの話と今回の話、とても偶然だと思えません。もしかして、本当に羅刹の王が日本にいるという話は現実になっているかもしれません。皆さんはどう思いますか?えーと...オーキッドさん?まだいますか?いつものようにコメントをくれないですね...どうなさいました?」
オーキッド:すみません。ちょっと取り込み中で...
鬼ぎり:本当なら、まず日本が征服されちゃうか?草
Somchai66:End of World...
Naraya:人間は滅ばれても当然だ...
Axe:まずはもっと情報が欲しいですね。
「私もこらからもっと信頼できる情報源からも聞き込みもして、もっと深掘りしたいと思います!では、今回の生配信はここまでになります。いつものメンバーですが、話を聞いてくれてありがとうございました。次回!魔王の謎に迫る!乞うご期待!では、また!RASETSUチャンネルのご視聴いただき、ありがとうございました!アーカイブはまた後でアップします!高評価もよろしくお願いいたします!羅・説でした~」と仮面の人が最後に挨拶して、手を振りながら、配信終了の画面に切り替わった。
オーキッド:すみません。あまり話ができなくて。お疲れ様でした。また!
Somchai66:See ya!
鬼ぎり:さらば!乙!
Naraya:次回はすでにこのチャンネルもこの世界も滅ぼされたりして...クク
Axe:お疲れ様でした~また次回~
【オーキッドがログアウトしました】
【鬼ぎりがログアウトしました】
【Narayaがログアウトしました】
【Somchai66がログアウトしました】と次にログアウトされたチャットルームの中に...
Axe:時が来た。
というメッセージを最後にチャットルームに残し、
【Axeがログアウトしました】というメッセージがチャットルームに表示された。
しばらくすると、そのAxeというハンドルネームの男性は携帯...ガラケーを取り、誰かに電話した。
「もしもし...久しぶりだな、タカオ。なんか具合悪いの?あ...分かった。写真を送るから、ちょっと明日の朝でも見てね。」と言って、電話を切った。
「さてと...ドリンク、もう一杯お代わりにするか...」
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ある日YouTubeを見たら、なぜか今回のような演出のアイディアが出ました。底辺YouTuberとガチファンの視聴者とのやりよりが浮かびましたので、こんな感じにしてみました。さらにチャットに参加している謎の英語の海外?の人も登場させました...笑。よく見かけますよね?本当に日本語が分かるのか分かりませんが...
話の内容はここまで読んだ方にはすでに把握したかと思います。ネットではどれぐらい話題になったのかはまあ...実際にあったら、もっと騒ぎになるじゃないかと思いますが、ネットの世界って何でもありですから...
そして、登場したハンドルネームにも注目してほしいです。もしかしたら、その正体が分かるかもしれません (*`ω´*)ドヤッ
ご興味ある方はぜひ登場した言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けますので、お楽しみいただければ何より幸いです!




