蘭華(帰国)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
彼女が帰る...生まれ育ちの国へ
日本
成田国際空港第○ターミナル
現在から遡って3日間
椎谷・蘭華...帰国完了。
ようやく入国手続きが済ませた蘭華はすっかり安心したせいか体中の力が抜けて、とりあえず荷物受け取りのベルトコンベア周辺で荷物を待っている間にはずっとベンチに座り込んだ。
誰かの荷物が一個ずつ裏側から出てきて、ゆっくりと動くベルトコンベアの上に乗ったその様子をただ無心で見続て、荷物もまた乗客によって一人一人、1個...2個...3個...
一個ずつ取られた様子も蘭華はただポカーンと見るのみであった。
もちろん、自分の荷物が出てきても取りに行かず、またベルトコンベアの果てまでに運ばれ、見えない裏側のゾーンの中に入ってしまった。
そして、荷物はまた現れて...消える...
何周目の繰り返しになったか分からないが自分自身の荷物のスーツケースしか残っていないところになるまではベンチから動かなかった蘭華はようやく自分の荷物を取りに行った。
そこで、蘭華は一息をついて、またスーツケースと一緒にさっきまで座っていたベンチに戻って、また再び座り込んだ。
疲れた...いろんな意味で...
今回のスリランカの旅で体験した出来事は一生分の...何だろうな...
うまく説明できない何かを使い果たしたみたいな気分だった。
怒濤な展開の数々...滅んだはずの羅刹羅闍との出会い...そして...お別れ。
自分が立てた仮説の立証にどれほど近づけたかと思ったら、すごい進歩だった。
しかし...立証に使うための唯一の証拠を日本に持ち帰ることができないという点は一番残念だった。
さすがに...パスポートもビザもなしの謎の巨漢を一緒に日本に連れて帰る訳にはいかないよね...
は...とため息をついた蘭華。
一応空港まで来てくれたけど、別れるときには本当に骨が折れた。
一緒に帰れないということを必死に古代言語で説明しても、
相手の巨漢が中々納得した表情も言葉も出てこなかった。
そこで、私はきっぱりに...「付いてきたら、あなたのことを恨む」というかなりきつい言葉を片言で話したら、なんか相手の巨漢もその言葉にビックリした反応を見せて、おとなしくなった。
別れ際には後を付いてくるか二度三度ではなく、何度見したな。
彼?に申し訳ないけど...また会えたら...
...
また会えるかな...というか魔王をそのまま放置してもいいのか...
うん...
まあ、魔王だし...
死にはしないだろう...
世界征服とかを企んだり...しない...よね
と考えたら、冷や汗が出始めた。
まあ、大丈夫だろう!と妙にポジティブシンキングと現実逃避がマリアージュした感覚で現時点の蘭華の脳内の結果はそのような答えを出した。
とにかく...いろいろ起こりすぎて、疲れた。
あと...無事に問題なく入国できたことには本当に安心した。
決して悪いことをしたという訳ではないが、なんだかやってはよろしくないことをやったみたいで少し申し訳なさと最悪感を感じた。
何をやったかと言われると、大蛇から逃げるために魔王と呼ばれる謎の巨漢が世界遺産の一部を破壊...かな...
と考えたら、また冷や汗が出てきた...
と!ともあれ!...日本に帰ってきた!
スパイスの香りが辿るトロピカルの空気もよかったが、いつもの日本のこの空気が一番!と決してホームシックではないが、ただただ普通にいつもの日常に戻ると実感させるからか毎回帰国する度に思ってしまう。
しかし、その空気をゆっくり楽しむ余裕が与えられず、蘭華の目に映った光景が彼女の歓喜ムードと彼女が言う【日常】の全てを破壊してしまった。
迎えに来てくれる人がいないはず...
しかし...
空港の出口を出た瞬間、想定外の迎えが蘭華の帰りをずっと待っているようにそこで仁王立ちしている。
あの巨漢が...そう...あの魔王ラーヴァナだ!
そして、その巨漢が最初に発した言葉は無論「お帰り」ではなく...
「愛する我が君」だった。
...
なんで...
...
なんでここにいるのよ!!!
というか上半身裸じゃない!?
どどどどどうしよう!と蘭華は脳内は混乱の状態に陥って、言葉が脳内のプロセスから出てこなくなった。
えーと...まずは...そう!着る物...服!
そこで蘭華は「ここ...待つ...動く...否」という意味が入りそうな言葉を選び、巨漢に伝え、とりあえずもう一回空港の中に入ることにした。
再び戻ったときには一枚のTシャツを持ってきた。
「この布...着用...今」と話したら、巨漢が素直にTシャツを受け取って、着ようとしたが、着方が分からないようだ。
それはそうだ...現代の服の着方が分からないよね...
「そう...その穴...首...否!...こ・の・穴!...然り!...この左...右の穴...腕!」とTシャツの着方を説明するためだけに一苦労だった。
ふ~...服を着たとして、いつでも破れそうなこのピチピチ感...
これ...空港で売っている一番大きなサイズだけどね...
まあ、まずこれで良しとしよう。
そこで改めて、蘭華は巨漢にここに来る経緯について問いかけた。
「問う...ここ...来る...どの...手段?」
と目の前にいる巨漢に問いかけると、彼?は指をどこかに指した。
その指が指した先にある物を見て、蘭華は目を丸くした。
「嘘...あれで日本まで来たの!?」
そう...空を飛んでいる黄金の戦闘用馬車...すなわち古代戦車が日本の交通ルールが分かったように駐車可能のところで停まっている。
馬がいないものの...
あの金ピカ...
目立ちすぎだろう...これ...
「あれ、しまって!...違った...えーと...あの...車...収納...希望する」
と日本語が通じないことに気づいた蘭華はまた片言で必死に説明しようとした結果、相手の巨漢は首を傾けるように振って、手を一振りすると、あの黄金の戦車が一瞬で消えた。
ああ...何千年経っても、南アジアの人って、さっきみたいな首の振り方がイェスという合図とはやはり少し混乱しちゃうわね...と内心で考えた蘭華だった。
いやいや...関心するのはそこじゃないでしょう!
消えるのはいいけど...これもこれで派手すぎる...
いけない...
すでに周りには人が集まってきた。スマホで写真や動画を撮り始めた。
とにかくここから離れないとと思った蘭華は片手でスーツケースを引っ張って、もう片手は巨漢の手を取って、引っ張ろうとした。
しかし、その巨漢がビクッとも動かなかった。
この人?...まるでデカい岩を引っ張ろうとしたみたいだ。
逆に蘭華の手の関節が悲鳴を上げた。
「痛~...行くよ!今!」と痛みと怒りが混じった口調で巨漢に命令した。
それに対して、巨漢はある言葉を発した。
「一生...付く...離す...否...」
蘭華はその言葉に伝わる内容を自分なりの理解能力で脳内整理すると...
あなたを一生付きまとうという翻訳にされた。
そこで蘭華は突然背筋が凍ってしまうほどの危機感を感じた。
私...この世界で一番危険な存在をまたこの世に解き放ってしまったではないかと今更ながら考えてしまった。
(このミスコミュニケーションはいかにこの後の二人の関係性をこじらせるか...今は見守るしかない)
その後...二人?...一人と一体は大人しく都内までのエアポートバスに乗った。
周りの景色の新鮮さで興味深い表情をしている魔王と呼ばれる巨漢と疲れ果てた蘭華...
疲れで眠りに落ちそうの蘭華の脳裏に浮かんだのはある気づきだった。
そういえば、私...この人?と一緒に空を飛ぶ戦車に乗って、あの場所に行ったけど...
なぜだろう...
そのときの記憶が曖昧だ。
そう...蘭華と魔王ラヴァーナと呼ばれる巨漢がスリランカで訪れたのはかつて物語にも登場したアショクバティカ庭園があったとされる場所...ハッガラ植物園。
シーター妃がランカ島に囚われた時に滞在した場所とされ、物語と関係する場所や寺院も存在する。
実際にはその近くにある村や寺院などの場所の名前までシーターの名前が付いているほど物語との深い関係性を示している。
その場所に行くことを希望した巨漢と一緒に宿屋の屋上に行った後、いきなりあの戦車を呼び出したように屋上に召喚した。
私たちはそれに乗って、空を飛んだ。
不思議な体感への耐性が付いたせいかいちいち驚くことがしなくなった蘭華の感想は...
交通費ゼロはいいけど、心臓に悪いよ~
何回か落ちそうになったけど、隣の巨漢が何回か手を伸ばして、抱えてくれたおかげで落ちずに済んだ。
正直言うと、少しドキドキした...
これは!あのかの有名の吊り橋効果では?と思ったが、
まあ...映画の主人公じゃあるまいし、相手とはそこまで胸キュンの展開がなかった。
でも...やっぱりどこかで懐かしい気持ちが胸の奥に感じる。
なんだろう...この気持ち...
そして、到着したことは確かだが...その後の記憶が思い出せない...
まるで私じゃない誰かがその場所にいたみたいだ。
そう...蘭華は知らなかった...正確には覚えるはずがなかった。
その庭園で何が起きて、なぜ魔王が蘭華を日本まで追ってきたのか...
全てが...あの庭園の中心に立っている大樹を触れた瞬間から...
再び【運命の歯車】が動き始めた。
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
空港の荷物受け取りのベルトコンベアから出てくる荷物の順番ってどのような仕組みか気になりますか?自分もかなり先に荷物を預けたのに...思ったより早めに出たり、遅めに出てきたりしました...その順番はどう決めるでしょうかね...とそんな話じゃなかった(笑)
この第41話でようやく10万文字突破しました!4ヶ月で10万文字とは早いのか遅いのか分かりませんが、とりあえずここまで書けました!読んでくれた方々に感謝です!
そして、物語もまた面白い展開になりました。ついに本当に魔王が来日しました!と言いながら、パスポートもビザなしで、大丈夫なのか(汗)今後の展開...そして、あの場所で何が起きたのか乞うご期待!
ご興味ある方はぜひ登場した言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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