終焉の伝承(終末論)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
元鳥の王が語る...この世界の終焉を
都内の某大学
一人の男性は昨日の自分に対し、少量の後悔と大量の不甲斐なさを感じている。
その男性の名は鳳鷹雄。
大昔の鳥の王、サムパーティの生まれ変わりの姿だと本人が以前に証言したが、見た目からでは普通の中年男性にしか見えない。
特徴があるとすれば、ツルツルとした禿頭は一番目立っている。
中途半端より完全に髪がない方が逆にかっこよく見えなくもないが、本人曰くやはり自分の頭のことをイジられることに関してはNGらしい。
そして彼は現在、この大学の教授を務めている。
専門は考古学、特に南アジアの神話や叙事詩についての分野ではかなりの知名度で知られている。
日本ではメジャーな分野ではないからこそ、本格的な研究をしようとしている人々の本気と熱量が半端じゃない。
一方、そのせいかあまり熱心に講義を聞く生徒がおらず、大抵は単位が簡単に取れるという噂があったためにたまたま彼の授業に参加しただけという生徒もいた。(大半落とされたにも関わらず、なぜかその噂が消えない)
もちろん、熱心に参加したガチ勢の南アジア好きな生徒も何人かいたが、どうやら俗に言う変人扱いされている。
その変人扱いの生徒たちはほぼ現在の鳳の研究室に所属している。
それはさておき...今日もまた講義があるため、鳳は今自分の研究室で準備している様子。
本当に私のしたことが...
昨日は酔っ払いのせいではっきり【透視能力】が使用できなかったが、
今度こそ!と思ったら、二日酔いに襲われてまだ完璧に能力が制御できなかった。
まさに今の頭痛と気分の悪さが自分の酒の弱さという事実に押し付けられて、呆れた表情を見せた。
不覚...
でも、二日酔いはどうであれ...仕事としてはしっかりしないといけない。
そのため、これからの授業もそろそろ行かないとなと気づき、鳳は水を少し飲んでから、部屋を後にした。
そして、講義室にあと少しでたどり着くところ、鳳は誰かと遭って、二日酔いが治ったかのようなびっくりする顔をして、そこからは一変表情が変わった。
遭遇した相手も思わず...「ゲッ!」と声が漏れた。
そして、鳳は不機嫌な表情を隠す気もなく、激怒のオーラ全開で相手に氷点下を感じさせるぐらいのトーンで話し始めた。
「おはよう...最近研究室に顔を出さないと思ったら、スリランカまで行ったらしいな...椎谷くん。」
それを聞いた相手も表情が固まって、何かを言おうとしたが、かなりの恐怖を感じたのか冬でもないのに体が震えている。
子鹿が狼の前に立つところを見たかのような雰囲気で通りすがりの人々が二人を見ないように早足でその場から避難する。
「お!...お!おはようございます...鳳先生...これから講義です...か?」と強ばってしまった笑顔で雑談をしてみたが、鳳はそれを無視して話を進めた。
「スリランカの話についてはぜひ聞かせてもらいたいが、これから講義があってね...ぜひ君にも参加してもらうよ...もちろん拒否権はありません。」
「は!はい!ぜひ参加させていただきます!」と強制的に講義の参加をさせられた椎谷...蘭華であった。
講義室内では、参加した生徒の人数がそこそこいるが、本当にこの講義に興味があって参加したのはあまりいないということが透視能力を使わなくても鳳はとっくに悟った。
そこで、講義開始の合図もせずに鳳はいきなりある質問を投げた。
「皆さんは世界の終わりがいつ来るか考えたことがありますか?」
その瞬間、室内の空気が一変した。
皆が同じ顔をしなくても、同じ意味を持つ表情になった。
それは...【困惑】
まるで顔にその言葉が書かれているような感じだった。
そして、生徒のリアクションも待たずに鳳は説明を続けた。
「よく聞いた話では、まあ...キリスト教などアブラハムの宗教系統に伝わる【アルマゲドン】ですかね...むろんとある有名な映画みたいに隕石が地球に衝突するだけじゃありませんよ。それ自体は最終戦争であり、世界の破滅ということです。別の有名というと、北欧神話の【神々の黄昏】ですかね。」
とズレた眼鏡の位置を直して、話を続けた。
「ここで皆に一つ問いかけてみたいです。世界の終わりはよく聞くかと思いますが、いつ来るのかという問題も実に興味深いです。各宗教や世界中の信仰の中では異なる伝承が語り継がれました。例えば、皆さんはもうご存じの方が少ないかと思いますが、2000年ではある預言者によっては世界が終わるという預言があったのですが、この通り...皆さんは私と一緒に今講義中で、世界は終わっていません。マヤ文化の太陽暦もある日まで存在するので、それ以上世界が終わったと言う人もいます...仏教では、釈迦、すなわち皆さんが仏様と呼んでいる存在は自分の涅槃から約5000年後、この世界はまた混乱に墜ちるという伝承もあります。日本ではよく使われる世紀末とかそういう言葉はまさにその世界に近い時代かもしれません。そして、7つの太陽が現れ、全てを焼き尽くすの話もありました。しかし、そもそも仏教ではサンサーラの繰り返しなので、始まりや終わりの概念がキリスト教の終末論のようにはっきりありません。私もそこまで詳しくないが、ただ言えるのは仏教の教えである【諸行無常】です。永久不変は存在しません。」とここまで説明した鳳は講義室の中の空気を見て、やはり皆は困惑しながら、真剣に彼が述べた話を聞いてくれそうだ。その調子で彼は説明を追加した。
「そして、私が研究しているのはヒンドゥー教ではすでに三神一体では創造神、守護神、そして破壊神がいるから、まさにこの世界の理そのものですね。さらに、この世界では4つの時代に分かれ、最後の暗黒時代が訪れて、人々が混沌に包まれるとき、伝承の中ではヴィシュヌ神の最後の化身、【汚物を破壊するもの】が白馬に乗って、その時代を終わりにして、新たな時代を導く...だそうです。よく聞いた白馬の王子様と真逆の話になってしまいましたね...」とここでなぜか彼も少し笑ってしまった。講義室内の空気も始まったときに比べて少し和らいだ気もする。そして、笑顔から真顔に戻った鳳は次を述べた。
「さっき話したヒンドゥー教の終末論もそうですが、キリスト教などではイエスの復活と再臨の話や仏教でも弥勒菩薩が次に現われる未来仏の伝承もあります。世界の終わりはいつ来るか分かりませんが、それと共によく語り継がれるのは【破壊】の後には必ず【再生】があるということです。それだけは覚えてください。え~もちろん他の宗教や教団では自分の伝承があり、それもそれで興味深いですが、話せばもっと長くなりますので、割愛します。興味がある方はどうぞお調べください。では、本来の講義に戻りましょう。」
...
講義の後
何かの悟りを得たような顔で講義室を出た生徒が何人かいる中、一人の生徒は鳳のところに来た。
「鳳先生!」と真面目な声で鳳を呼んで、鳳が振り返ると、少し笑顔を見せた。
「今日も参加してくれたね...設楽くん。」と話の相手は前の講義で鳳の話に興味を持ち、結果的にその後も一緒にハーブ、スパイス&モンキーで食事しながら、いろんな話を聞いた男子大学生、設楽駱である。
「先日は本当にいろいろ話を聞かせていただいてありがとうございます。」と改めて御礼をしたラク。
「こちらこそ私の話に興味を持ってくれて、さらに今日も参加してくれてありがたいね。ぜひうちの研究室に入れて欲しいよ。」
「僕は一応理系なので、転入は難しそうです。ところで...先生...そちらの方は?」とずっと鳳の隣に石みたいに固まった女性のことについて尋ねてみた。
「あ...私の教え子で優秀だが、卒業ができるか危ういギリギリ8年生の椎谷くんだ。」と辛辣な自己紹介をした鳳に対して、蘭華は石化状態から治ったみたいにラクの方を見て、自分でもう一回自己紹介した。
「椎谷です。椎名林檎の椎と谷で椎谷...蘭華です。」
「こちらは設楽ラクくんだ。昨日の講義でラーマーヤナに興味があるってな...そのあと一緒に食事しながら、いろいろ話した。」と鳳は説明を足した。
「設楽...?」と頭の上にはてなマークが現れるような顔で蘭華はラクの顔を見た。
「はじめまして。設備のセツと楽しいの楽で設楽と呼びます。よろしくお願いします、椎谷さん。」と真面目さが欠けずに自己紹介をしたラク。
「ランカでいいよ...もう先輩...とあまり言える資格ないけど...へへ。設楽くんね...もしかして...」と何かを考えている蘭華に対して、ラクが少し首を傾けた。
「どうかなさいましたか?」
「いや...最近知り合った人と苗字が同じで驚いただけだ。」
まさか...ねと蘭華は内心に思ったことを言葉にせずにその疑問をしまっておいた。
「そうですか。では、僕はここで失礼します。」
「私も...ゲッ!」と蘭華もその隙で逃げようとしたが、やはり元鳥の王の目からは逃げられなかった。
「君は一緒に研究室に行くんだ...もちろん拒否権はありませんよ。」
「次は私の研究室にも歓迎するね。いつでも来てもいいよ。では、またね、設楽くん。」と鳳は最後に声を掛けて、ラクは「は、はい。また...」とお辞儀をしてから、その場を去って行った。
そして、鳳先生の研究室であり、蘭華の所属の研究室である部屋にたどり着いた。
座った鳳もゲン○ウポーズして、蘭華に質問し始めた。
「さて...聞かせてもらうか...スリランカで何が起きたのか?実は昨日その後、知り合いからある電話があってね...興味深いことを聞いたよ。君が一人...一体の巨漢と一緒にいるということを...」
どうやらここでは逃げる選択肢はない...
説明するしか選択肢がない...
心を決めた蘭華は語り始めた...スリランカの話...そして、今に至る話を
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
終末という言葉は様々な作品で使われますが、やはりなんかロマンというか不思議に興味を持ってしまいますね。いろいろ調べましたが、もはや一話で納める情報量じゃないので、とりあえず有名な話をネタにしました。本当に世紀末になったら、自分が生き残るか考えたことがありますか?自分はなぜかよくゾンビ映画のような世紀末の世界でサバイバルする夢をよく見ます(笑)
ここで蘭華を登場させて、さらにラクに遭わせることでまた次の展開につながるようなないような感じで書いています。時系列がめちゃくちゃですみません >_<
ご興味ある方はぜひ登場した言葉(今回はもう多すぎたぐらい珍しい言葉をいっぱい載せました...超大盛り級で!)をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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