魔王降臨(来日:その②)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
店員が語る...出来事の事実を
アジアンレストラン「Herb, Spice & Monkey」
とりあえず店の入り口でできた穴を布でなんとか覆って、外から見えないようにした。
オーナーのスリーヤは自分が作った仮の入り口を見て、ふーと疲れを飛ばせたように息を吹いた。
そして、ラクの親戚である店員が座っている店の奥の席の反対側の席に座って、両肘を机の上に立て、両手を口元で組んだ...すなわちゲン○ウポーズで話を始めた。
「じゃ、詳しく話してもらうか?その時何があったのか...誰がいたのか、お巡りさんに言ってないことも含めて、全部な...」
威圧感を覚えた店員はつばを飲み込んでから、語り始めた。
(ここからの実際に起きた出来事は店員の観点でお届けいたします)
オーナーとオオトリセンセイという人が店を出た後にしばらくすると、店の扉が開かれた。
「いらっしゃいマセ~ようこそ、ハーブスパイスアン...ド...あれ?どうしたの?そんな顔をして...蘭華チャン」
最初は蘭華ちゃんが店の入り口で立ち止まって、何か困っている顔をしたから...何があったのかなと気になって訪ねてみると、
「えーと...こんにちは。オーナーはいますか?」と蘭華ちゃんに質問された。
「オーナーはさっきお客サンと一緒に出かけたヨ。」と答えたら、少しため息をついた彼女を見て、
「オーナーと何があったノ?」
「いいえ!実はちょっとご飯が食べたいですけど...今はお金がなくて...ちょっとバイトの次の給料までツケておいてもらいたいですが、さすがにオーナーがいないとよくないですよね...」と少し照れながら、理由を述べた彼女。
蘭華ちゃんは結構何年前からこの店のバイトの接客として働いている。最初はインド料理が好きな女の子だけだなと思ったが、驚くことにネパール語もヒンディー語もペラペラで、さらにあの親しみやすく、明るい性格のおかげで接客業にはばっちり合っている。私だけではなく、オーナーも含めて、日本のお客さんにもインドやネパールのお客さんにも親しまれて、もはやこの店の看板娘になった。そんな彼女が困っている顔を見て、何も助けない訳にはいかないだろうと思った。
そこで「いいじゃないノ?今晩のご飯ぐらいはワタシのオゴリでもいいヨ...さあさあ、店に入って」と私の言葉に対して、彼女が申し訳なさそうな顔をして、こう返事した。
「えーと...実は私の分ではなく...この人のです...けど...」と彼女が後ろに目線を送って、話した。
彼女の後ろを確認すると、そのには高さ2メートルぐらいの巨漢が顔が見えるようにしゃがんでいる。
見た目は南アジア出身の私と似ているから、インドの方かなと思ったのだ。
あまり整っていない長い髭と一応頭の後ろにまとめた長い髪...
あと...よく外国の観光客が着る日本のお土産Tシャツを着ていた。
確かに...Iラブ東京と書いてある定番のTシャツだったかな。
日本語もネパール語が分からないようで外国から来た観光客を連れてきたかと最初思ったのだが、突然不機嫌になり、何かを叫んだ。その内容では分からなかったが、怒っていることはもう言わなくても分かった。
そこからは...入り口の穴が全て物を言っている。
「その後、蘭華チャンを片方の肩に肩車の形で乗せて、どこかに飛んで行ってしまいマシタ。私が知っていることはここまでデス。」
と店員の供述を聞いたスリーヤは何かを頭の中に整理しようとして、目を閉じながら、話を進めた。
「なるほど...ということは店の入り口の穴を開けた巨漢は蘭華と一緒にいるということだな...入り口を破壊した後にはどこかに逃走した。さらに蘭華は人質として取られて、どこかに連れて行かれたということも捉えるな...あの巨漢が飛べるところのはいちいち突っ込まないが...今は蘭華の安否が一番最優先だ。とりあえず蘭華の携帯に連絡してみる。」と言って、スリーヤは携帯を取り出して、連絡先の中に登録された椎谷・蘭華の電話番号を見つけて、電話をかけてみた。
しかし...出ない。
何回試したが...出る気配がない。
「まったく...やっぱり出ないか...うん...」と考え込んだスリーヤ。
こいつの言うことが本当なら、相手があの羅刹羅闍という確信にもっと近づけた一方、まさかそこでうちのバイトの蘭華が関わっているということは想定外だ。
何かどうなっている!
とそのとき、入り口を覆った布がめくられて、誰かの声が聞こえた。
「うわ!なんだ...これ...新しい入り口のリフォームですか?」
とその声の主を確認するために二人が入り口の方向を見ると、褐色の肌色をしている一人の好青年が目を大きくして、ビックリした表情と笑顔をしている。
その青年の顔を見て、スリーヤは少しがっかりした表情を混ぜながら、安堵した顔をした。
「ああ...ちょっと事故があってね。ところで...何か用事があるのかい?ラーム。」
この広い世界には一人一人の巡り合わせだけで物語は巡り巡る...もちろん好転するとは言いがたいが、それでも物語は廻り続ける。
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
あのゲン○ウポーズっていう言葉や表現がよく使われたのですが、実際にあのポーズを言葉にすると...ああ、なるほどこうするんだと実感しました(笑)
群像劇で様々な登場人物の頭の中をより表したいなと思い、今回は(まだ名前がない)店員さんの観点で物語を語ってもらいました。
あと、ずいぶんほったらかしたラームを登場させました(ちょこっとだけですが...)。ラームさんのファンの皆さん、お待たせいたしました(笑)
ご興味ある方はぜひ登場した言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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