悲劇の妃の追憶~待望~
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は運命によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
妃が待つ...いつまでも...
言ってしまった...
あの羅刹羅闍に...言ってしまった!
なんというカッコつけた言い方だろう...
恋愛経験皆無の私にとって、何が正解か分からないし...
正直、あの雰囲気の中にいるからこそ放った言葉だった。
相手がどう受け止めるかは一番気になるが、無口になった魔王はまた後日訪ねると言われて、去ってしまった。
申し訳ないことをしたのだろうか...
いや、これは試練なんだ。
本当に私のことを愛するであれば、ここでは終わらないはず。
そう...これは今の私の答えしかない。
ああ...それでも恥ずかしい...
無知の自分に...穴があれば入りたい!
じゃなくて...
穴は...あの力で簡単に作れるが、入っても何の解決にならない。
だって、殿方と付き合う経験がないのに、すぐその告白を受け入れるというのもどう考えても適切な判断ではないと思うし、断りをした方が一般的な反応だと恋愛無知の私でも思う。
ああ...相手がその返事をとりあえず憤怒ににならずに受け入れてくれたのは一番助かったところだった。
あの魔王が...純愛を求めるなんて最初思いもしなかった。
しかし、あの態度...
体が真っ赤になったあの反応...
ふふっ、本当に魔王でも緊張するんだな...
とクスッと笑ってしまった。
だから、待っていますよ...
誰が先に私を迎えに来てくれたのか
そう...
ここ【アショクバティカ庭園】で...
だから...あの時は断った。
そう...あの夜
外でどうやら騒がしい...というか物が破壊された音まで聞こえてきた。
物騒な音がこの静寂な庭園まで響いてきた。
そして、しばらくすると何者が私の背後に現れて、私に声を掛けてきた。
「あなたは...シーター妃だね?」
振り返ると、そこは一匹の猿が立っていた。
聞いたことはあるけど、実際の猿を見たのは初めて。
人間の子供ぐらいの高さだが、2足で立っているし、人間の言葉でしゃべっている。
「そうだが...あなたは?」
「旦那...じゃなくて、我が主、ラーマ王子の代わりにお迎えに来ました。俺...ヴァーユの子、ハヌマーンだ。」
「あなたが迎えに来てくれたの?ラーマ...私の夫は?無事なの?今どこにいるの?」と急に不安になった私はハヌマーンと名乗ったヴァナラに質問攻めした。
「あなたの旦那、ラーマ王子は無事だよ。今は俺たちの主として羅刹の王国を目指して行進している。俺は捜索隊として、勝手ながら俺の力でここ、ランカ島まで飛んで先に乗り込んだ。これで一番手っ取り早く、終戦に決着をすると思ってな...ついでに宮殿をぶっ壊して、敵の数もある程度減らそうと思った。さっきはまあ...邪魔者が襲ってきたので、すでに一暴れしたわ。あ、すみませんね。俺...すっかり忘れた。はい、これ!」と彼は何かを取り出して、私に見せた。
あれは...【指輪】
そう...間違いない...
これは、ラーマの指輪だ。
この指輪で誓い合った。
それは彼が持っていた片方の結婚の証。
「これを見せれば、旦那...ラーマ王子のお使いだと分かるって言っていた。さあ、さっさとあなたを連れて、帰ろうかな...たぶん追っ手はもうすぐ来るから。」と周りを警戒しながら、一緒に脱出することを提案された...が
「行きません...」
「そうそう...早くいこ...は!?」と猿でも人間みたいな驚きの表情ができるんだとそこで初めて見た。
しかし、私の答えは変わらない。
「だから、私はあなたとは一緒に行きません。」
「なんでだよ!このやり方の方が簡単だし、もうこれであなたも旦那のところに戻れるじゃないの?」と慌てて説得したヴァナラだが、それで私はこう答えた。
「ラーマにお伝えください。必ず自分で私を迎えに来てと...」と言った私に対して、ヴァーユの子であるそのヴァナラは呆れた表情でため息をついた。
「は...参ったな...羅刹の王国を半壊状態にしてもあなたを連れて帰れないじゃ、旦那に怒られる...勝手にここを荒らした問題の方も含めてな...本当に、人間の考えってわかんないや。」と聞いた私は彼に微笑んで、こう答えた。
「ヴァナラにはこの感情があるか私には分からないけど、人間には愛という複雑で摩訶不思議な感情があるのよ。だから...」と続きを言おうとしたその途中に彼は話を割り込んだ。
「まあ...好きにすればいいよ...俺が勝手にやったことだし...囚われのか弱い人間の姫様を助けに来てみたら、案外芯が強いよね...あなた...まあ、せいぜいあなたの王子様の到着を待ってくれたまえ...」と後ろに振り向いて、
「伝言は預けておく...じゃな...妃様」と言ってから、飛んでいった。
行ってしまった。その後も破壊音が度々聞こえたが...
あのヴァナラ...
すごい力を持っているね。
ごめんなさいね...ヴァーユの子...
確かにあなたの力ではここから脱出するのはいかにも簡単なのか苦労しないでここに来た様子からではすぐに分かった。
でも...これは【不正】だわ。
ラーマ自分自身に迎えに来てもらわないと...
あの方の【愛】が試せないの...
違う...それは私への愛が試したいという言った方が正しかった。
たとえ...簡単にこの戦が止められる最善の方法ではなくても...
たとえ...大戦争が勃発して流血が止まらずにしても...
私はここで待つ...ただそれしかできないが、私はこの駆け引きの主導権を握る人物である以上...
もう結末が分かるまで誰にも邪魔させはしない。
それまではいつまでも待つわ...
本当の【愛】と...
そして、本当の【自由】を手に入れるために
最後までお読みいただきありがとうございました。
古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ついに...ヴァーユの子、ハヌマーンが登場!原作とは違った解釈を入れた結果、面白いやりとりになったような気がします。それでは、ハヌマーンが現代に登場するかはお・楽・し・み~(笑)さらにシーターの心の中をより深みを感じていただければ幸いです。
ご興味ある方はぜひ登場した言葉、特にハヌマーンをキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けますので、お楽しみいただければ何より幸いです!




