魔王降臨(来日)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は運命によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
魔王...ついに日本上陸
アジアンレストラン「「Herb, Spice & Monkey」
なんじゃ...こりゃ...
唖然とした表情で自分が経営している店の前に立ったオーナーのスリーヤ、またの名は元猿王スグリーヴァ。
店員からの電話で居酒屋から駆けつけた結果、いつもの店の入り口にデカい穴ができてしまった。
痕跡から見ると、突然何かがぶつかったというより、鋭い刃物のような何かによってきれいに丸く切り取られたようだった。
周りの店とかに被害がないのは不幸中の幸いだが、これはどういうことなのか...嫌な予感が当たってしまった感覚が体中に走っている。
これ...人間の仕業じゃない。
まさか...さっきサムパーティー、いや鳳先生が言っていたことは本当なのか?
さらに、ついにここまで危機が迫ってくるのか?
振り向くと、ラクの親戚である自分の店の店員がお巡りさんらしき人物と話している。
「本当ですヨ!信じてクダサイ!ラクシャーサ...鬼が店を風穴にしたのデス!」
と必死に説明しようとしたが、お巡りさんの表情から察するに信じないようだ。
「では、あの鬼は店の入り口を破壊したと言いたいのかな?こりゃ...電動のこぎりみたいなもので切り取ったのような跡だけど...誰に恨みを買ったとか何かいけないことをしたんじゃないの?」
「いいえいいえ!私は善良の市民デス!税金は...支払い期限ギリギリだけど、ちゃんと払いました。私を雇ってくれたオーナーは厳しいけど、いい人デス。そのような恨みを買われる人ではありまセン。」と自分も含めて身の潔白を証明しようとしたそのとき、誰かに肩を叩かれた。
「もういい...後で私が対応する。」とその声の主はオーナーのスリーヤだった。
「オーナー...」と店員さんが少し涙目になって、スリーヤに向かって説明しようとした。
「実は...店に来た大男...いや!あれは羅刹に違いないデス!突然叫んで、それで何かを取り出して、大きな輪で店の入り口を切り取ったんですヨ!」
「ああ...それはさっき聞いた。店の中は大丈夫なのか?」と店員の安否が確認できたスリーヤが次に心配したのは店内の状況だった。
「それは...その後はまた叫んで、どこかに行ってしまったようで...店の中は大丈夫でした。揺れで皿が何枚か落ちて割れたぐらいデス。」と状況を説明した店員に対して、安堵の表情を見せたスリーヤ。
「そうか...それならよかった。あんたも無事で店も大きな損害がないなら、それでいい。」と店員に話してから、お巡りさんがスリーヤの方に話しかけた。
「失礼します。あなたはこの店のオーナーで間違いないですね?」
「はい。そうです。スリーヤと申します。私が留守の間にお騒がせしてすみませんね、お巡りさん。」
「いいえ。目撃者がいなくて、店員さんだけは目撃者だけになりますが、彼の話によると、誰かが店の入り口を刃物で破損してから逃走したっていうことになりますが、何か心当たりがありますか?」
「ありませんね...うちもこんな小さな店を一人で経営したのですが、借金もトラブルは特にありませんので、全く見当がつきません。」とスリーヤは首を振って、自分には心当たりがないことを説明した。
「では、店に被害があったということは事実なので、被害届を出したら、器物破損という線で捜査を進めることになりますが、いかがでしょうか?」
「いいえ。それは必要ありません。」
「え?それはよろしいですか?」という不思議そうな目をしたお巡りさんに対して、スリーヤは少し安心したような笑みでお巡りさんに答えた。
「うちの人も無事だし...念のために加入した保険でなんとか修理代をカバーしますので、この件はこれで大丈夫です。お巡りさんこそお騒がせしました。お疲れ様でした。」
「そうですか。これは無差別の犯行なのかあなたかあなたの店員を狙った犯行も考えられますので、とにかく気をつけてください。では、失礼します。」と言ってから、お巡りさんは自転車に乗って去った。
お巡りさんが本当にいなくなったことを確認してから、スリーヤは大きなため息を吐き出した。
「全く...とんでもねー災難だわ。おい!とりあえず穴を塞ぐものとかを買ってくる...今日はもう営業するところじゃないから、店を閉める支度をして...何だ?その顔?」
スリーヤは店員の妙に口ごもっている顔を見て、何かが隠しているではないかと推測して、問いかけてみた。
「実はさっきおマワリさんに言っていませんけど...あのラクシャーサと一緒に、蘭華チャンがいました。」という店員からの白状を聞いたスリーヤはさっきより目が丸くなって、驚きが隠せない表情になった。
「なん...だって?おい!まずはもっと詳しく話を聞くことにするから、店の中に入れ!」
どうやら...話が想像以上にややこしくなった方向に進行しているようだ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
魔王降臨!というすごいタイトルにしたのですが、まだその魔王が出ていません(笑)。これは第28話からの第33話の後の話になりますので、時系列がだんだんめっちゃくちゃになってすみません>_<
第28話の後に何が起きたのかお楽しみいただければと思います。(と思いながら、次話は別の話になるかと思います。ごめんなさい。)
ご興味ある方はぜひ登場した言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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2022年の初投稿になります!2022年もどうぞよろしくお願いいたします!




