悲劇の妃の追憶〜恋愛〜
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...もしこの物語は運命によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか。
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
妃が思う...恋愛とは何かと
まさか...
初めて殿方?に愛の告白されることになった。
ここ、羅刹の王国の中でされるとは予想もできなかった。
何より一番の驚きは、最強の魔王と呼ばれる羅刹の王が人間の私に直接的に言葉を告げるとは...とても信じ難いことだった。
今まではずっと父上が選んだ数々の候補者の王子様ばかりだったが、隠れた場所からお顔だけを眺めていた。
どの方にも自信が溢れるお顔で、王族の風格がすぐに見えてきた。
しかし...あの候補者の方々がピナカの儀に挑んで、どのような強靭で自慢げな体をしても弓をびくっとも動かすことが一度もなかった。その事実が理解した瞬間、誰しも挫折と絶望の表情に変わってしまった。
私はただただいくつかの儀式を遠くから眺め、「可哀想に」と思うしかできなかった。
儀式を成功させないと、私と候補者の方々が面会することも会話することも許されなかったこの掟のおかげで、私は愛だの恋だのの前に...そのような感情を知る術がなかった。
恋愛とはまるで誰かに語られた神話みたいな別の世界に存在するものだと感じた。
しかし、あの日からは私の中に何かが変わった。
ラーマ
あなただけは特別な存在だ。
私に「愛」を教えてくれた。
私に「愛」を与えてくれた。
私に「愛」を...
違う
確かにあなたからもらったものは「愛」だということには違いないが、それは大地の全てを包み込む青空のような果てしなく無尽蔵の「愛」だと私が気付いてしまった。
誰にも平等に与えてくれるその「愛」に対する不満なんてない。
私を愛してくれたから、私はそれに応えてあなたを愛することにしてみようと思った。
そのはずだった。
そして、今私の目の前に立っている魔王と呼ばれる存在は私のことに「其方に一目惚れだ。余の妻になってほしい。」という想定外な言葉を口にした。
あまりにも唐突すぎたから、この想定外の展開に対して、私も言葉を失った。
今...私に一目惚れしたと言いませんでした?
私に?
出会ったこともない私に?
第一...私を攫った本人が何を言うと思ったら、まさかの告白!?
恋愛については無知な私でもこれがさすがに違うと分かった。
男女が出会って、出会いを重ねてお互いの気持ちを何度も確かめ合い、そして愛し合うという段取りがあるはずだ。
しかし、段取りを何段階も飛ばして、すごい速さで二人の関係を変えようとしている。
天界から地獄まで名を轟かせた羅刹の王は私に恋をしている?
今でも信じがたいことだが、それでもさっきの言葉が誠であれば、それは真実だ。
その気持ちにどう応えるべきか言葉が見つからなかった。
何かを言わないと...と思った瞬間、目の前に異変が起きた。
目の前の魔王は強面の顔が赤色に変わった。
気のせいだろうか...居心地が悪そうだ...
「え?もしかして、恥ずかしがっているのですか?」と言葉が無意識に出てしまった。
いけない!怒らせてしまう!
魔王に対して何たる言葉だ!
と自分の口をすぐに塞ぎ、自分が放った言葉に後悔し始めた。
しかし、憤怒で暴れるかと思ったら、思っていた反応とは真逆だった。
顔だけではない!体全体が赤色に染め上げられたように変化した。
これは...私が言ったことが図星ということか?
「フフッ」と突然笑い出しました私。
なんだ...魔王だって恥ずかしがるんだ...
皆が恐れる魔王は私の返事を待つだけで赤面...赤体になるとは...
この話は誰に言っても信じられないだろうな...
そして、頭の中に今の自分が思う答えを見つけた。
そこで私は、体が真っ赤になった強面の魔王に向けて、微笑みと一緒に今の自分なりの回答を述べた。
「ごめんなさいね...あなたの気持ちを受け入れることができないわ。」
そう...今は...ね
恋愛というのは何なのか
そして、これが本当の愛かまず時間をかけて確かめるべきだ。
それまでにはこの恋愛という試練を勝手ながらもあなたに課すよ、魔王ラーヴァナ。
もちろん、あなたもです...ラーマ
そして...私自身にも...ね
最後までお読みいただきありがとうございました。
古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ついに第二章がスタートします。第一章の羅刹羅闍のの後悔から悲劇の妃の恋愛の話になりました。ここからは羅刹羅闍の心の行方を探す旅が始まります。
ご興味ある方はぜひ登場した言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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