羅刹羅闍の追憶〜羅闍の最期〜
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...もしこの物語は運命によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか。
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
王の最期を一緒に見届けていただけますか?
意識を失って、また夢...いや、大昔の記憶を見た。
そう...余の最期の記憶
ヴィーナの奏でた旋律と共に金剛腕が動き出し、放たれた閃光が敵に的中して、輪の刃が敵の体を切り裂き、敵だと思われる者が次々と倒れてゆく。
繰り返した一方的な殺戮の後に余の目の前に映ったのはただ数え切れない抜け殻しか残らなかった。
目の前にいる者の息が止まるまで迷いなくとどめを刺し、誰も前に立つ者がいなくなるまで止まることが知らないその戦いの姿が冷酷で美しく、羅刹の王の名に相応しい戦いだった。
これが最後の戦いだとしても...
「猿どもよ!来るなら、来るがいい!羅刹の晩餐にされることを望むであれば!その命を無惨に捨てる覚悟があれば!余の前に立つがいい!」と余は叫んだ。
天まで轟く咆哮の如く放った言葉は周りにいる者が一瞬止まり、周りの空気も凍りつくように沈黙に包まれた。
しかし、一声が沈黙を破ってしまった。
「王様!あれは...風神の子です!何か手に持っています!」
余は声を上げて知らせた者が指差した方向を見ると、確かに遠くに一匹の猿が見えた。あのヴァナラの特徴から見ると、察しが付く。そして、あの者が持っている物も見当がついた。
「やはり...見つかってしまいましたか...」と思った余は演奏を止め、遠くにいる敵陣の中に一人の人間を探した。
見つけた...ラーマ...余の宿敵よ
人の王よ...
貴殿の手で殺されることはもはや避けられない運命なのか?
構えたあの弓で放たれた矢は余の体に刺さったと同時に...余の心臓も破壊される。
では、貴殿の矢でさっさととどめをさせ!と余は両手を横に大きく広げて、自分の運命を受け入れることにした。
さあ...外すなよ!
人間よ!
猿どもよ!
これは...これは余の死に様だ!
皆の者!しっかりこの姿を貴様らの目に焼きつけるがいい!
羅刹羅闍の最期を!
...
...
...
だから理解している。
これは負け戦なんだとその時に余はそう思った。
あの牢獄に再び目覚めたときまでは...
今になってなぜこれが負け戦なのか余は疑問を持ってしまった。
定められた運命のように余は最期を迎えるはずだったにも関わらず、余はまだ生きている。
今でも分からない...が、これからはその理由が見つかるかもしれない。
余はまだ生きればの話だが...
...
...
...
そして...目が覚めた。
聞こえてきたの第一声は聞き取れなかった言葉だった。
「ア、オキタノ?」
あの声がした方向を見ると、そこにはあの牢獄で出会ったあの小娘が立っていた。
小娘が無事だと安心した自分もいるが、より喜びたいのはどうやら余はまだ生きているらしい。
しかし、ここは余が知っている世界とは何かが...いや、かなり違う世界だとこれから思い知らされることになる。
最後までお読みいただきありがとうございました。
古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
最期だと思ったら、ここからまた別の物語が始まります。これで第1章が完結します。ここからは羅刹羅闍の新たな物語がスタートします。また楽しみにしていただければ幸いです。
ご興味ある方はぜひ登場した言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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