不思議な縁(猿と鷹)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...もしこの物語は運命によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか。
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
そして、運命の歯車は一つではなく、また別の歯車を動かしたようだ。
現在
アジアンレストラン「Herb, Spice & Monkey」
「ご馳走様でした。ありがとうございます、先生。」と言い出したのは少年の設楽駱だった。
「いいえ。君が熱心に私の話を聞いてくれてこちらも嬉しいよ。君のおススメの通り、ここはトムヤムクンが絶品の店だしね。本当に美味しかった。さすが門外不出のレシピ...」と鳳がラクに言われた礼を返して、さらに料理の評価を別の方向に話題を投げた。その話題のボールを受け取った人、オーナーのスリーヤはただ自慢げに笑い返した。
「気に入ってくれて、ありがとうございました!ぜひまた来てください。できれば、別のメニューもよろしくお願いしますよ。」
「いや、別のメニューは普通なので、トムヤムクンだけはおススメです、ここ。」
「おい、ラク!この店の商売を応援したいのか邪魔したいのか。どっちだよ!」
「ただの事実を述べただけです。」
「何!?」
「二人とも...大丈夫ですよ。次回は別の料理にも頼みますから...」
というたわいのない談笑が3人の間にしばらく続き、そこでラクが先に別の話題に移した。
「すみません、先生。僕はこれから講義がありますので、先に大学に戻りますが、先生はどういたしますか?」
「せっかくなので、私はまだあと少しここでくつろがせてもらうよ。もしかしたら、もう一杯のマサラチャイをいただいてもいいかな、オーナー?」
と言われたスリーヤは「ありがとうございました~」で返し、厨房に注文した。
「また先生の次の講義に出席しますので、よろしくお願いいたします。」
「ああ、また聞きたいことがあれば、私の研究室に尋ねてきてもいいから。今日は私の誘いに付き合ってくれてありがとうね、設楽くん。」
「はい!では、お先に失礼します。」と言ったラクは荷物を持って、店員の親戚にもネパール語で何か話しかけてから店を出ていった。
しばらく時間が経つと、厨房からマサラチャイが運ばれた。オーナーが自ら鳳のところまで持ってきて、そして鳳に話しかけた。
「いい子でしょう?ラクは理屈っぽいに見えるけど、真面目で家族思いの子だ。たまに手伝いに来たし、今日だってあんたにこの店を勧めてくれたのはアイツなりの思いやりだな。」
「そうですね。私の研究室の子以外にここまで私のこの話に興味を持つのは初めてです。まあ、逆に興味を持ちすぎて、暴走してしまう問題児もいますけどね...いや、こちらの話で失礼。」
「おお...ラクのことはよろしく頼むぞ、先...生!」
と笑顔で話したスリーヤだったが、その直後にシリアスな表情に変えて、鳳に一つの言葉を口にした。
「本当にいいのか?」と...
「何のことですか?」と鳳は目の前のマサラチャイを口にして、その質問を質問で返した。
「あんたが話した話の中で肝心なことが欠けている。例えば...あの羅刹の王はまだ生きていて、最近復活したとかね。」
そう聞いた鳳は表情を変えずにマサラチャイのカップをテーブルに置き、スリーヤの目を見て、話を続けた。
「例えそうだとしても、あの子とは関係がないことです。そうでしょう?スリーヤさん...いや、猿の王よ。」と鳳の放った言葉に対して、スリーヤ...猿王と呼ばれた男はすこし驚きの後にあきれた表情で鳳に話した。
「まいったな...いつから気づいたのかね、鳳先生...いや、ガルダの子よ。」という返しの言葉で鳳は眉をひそめた。
「少なくともあなたが名前を名乗ったところからですかね。まさか自分の父の名前をそのままに使うとは少し安直すぎたかと思います。私は能力を使わなくても勘で分かります。そして、私はガルダの子ではありません。私もちゃんと名前があります。」
「はは!失礼失礼。仕方ないさ。今の私はタイから来たスリーヤという人だからね。逆に実際の名前を使ったら、現地では目立ちすぎる。まさかこのような形で今世に出会えるとはね...どうだい?これから別のところで話の続きをしようか?」とその誘いに乗った形で了承した。
「そうですね...いろいろ話がしたいこともありますから。羅刹の王の復活とかあの子たちのこれから待ち構えている運命とか...」
「そう来たら、私の知っている酒場に行きましょう。おい!これからこの先生と一緒に出掛けるから、店は任せたぞ!」
それが聞こえたラクの親戚の店員はスリーヤに「分かりました。お気をつけてネ~」と言い出して、店を出て行った二人を見送った。
「さっき猿とかガルダとか聞こえたけど、何か変な話をしましたね...二人」とラクの親戚が不思議そうに自分に言い聞かせた。
そして、しばらく時間が経つと、店の扉が再び開かれた。
「いらっしゃいマセ~ようこそ、ハーブスパイスアン...ド...あれ?どうしたの?そんな顔をして...蘭華チャン」
どうやら一つの出会いと一つのすれ違いは物語を別の展開に運んでしまったようだ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
少し二人の登場人物の正体が明かされた回でした。出会いとは偶然なのか必然なのか的にこの展開にしてみました。ここでタイトルの伏線を回収できました...まだまだ一部だけですが
ご興味ある方はぜひ登場した言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。この回の会話で出てきたキーワードで二人の正体に近づけられるかもしれません。
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