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悲劇の妃の追憶~攫われた妃~

古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍(ラクシャーサラージャ)「ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...もしこの物語は運命によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか。


時は現代日本、ある女子大学生「椎谷(しいたに)蘭華(ランカ)」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。


自由を求めて、その先には何が待っているだろうか...

私...()()()()のか?

今の状況になった私は自分の人生を振り返った。


運命の人だと思われる方と出会った。

父上が私の結婚相手を探すために「ピナカの儀」を行った結果、あの聖弓を軽々と持ち上げる方が現れて、しかも力のあまりに聖弓まで折れてしまった顛末とは父上も予想外であろう。

()()()王子...コーサラ王国の第一王子であり、この方こそは私がこれから人生を共にするお方...

彼はとても心優しくて、紳士的で、勇敢かつ寛容でまさに一般の人とは違う王の器を持っている人だ。

これからこの方の側に支える未来の国王の妃として不自由のない人生を尽くし、そしてこの世から去る。

ただそれだけの使命を果たす人生だと思っていた。


それからの国王(義父)様からの追放命令...ラーマ()ラクシュマナ(義弟)と共に森の徘徊生活...

それでも私は一緒に運命の人だと思われる夫と一緒にいればそれでよかったと思っていた。

外の世界を旅する機会ももらい、今まで不自由のない人生から何かが変わるかもしれないと少し期待していた。

しかし...

あの羅刹女(ラクシャーシー)との遭遇がきっかけで、私の運命がまさに元の人生に後戻りできないほど大きく変わってしまった。


あの鹿...()()()鹿()に興味を持たなければ、

別に獲りに行かなくてもいいのに...夫はどうしても私を元気つけようとあの鹿を追いかけた。

彼のあの優しさが、結果的に災いを招いてしまった形になってしまった。

そして、突然助けを求めた彼の苦しそうな叫び声が聞こえた私は、自分の安全より彼のことを思い、義弟を助けに行かせてしまった。


彼と義弟の戻りを待っていたその時、()()()が私を攫いにやってきた。

気がづいたときはもうあの巨体の腕の中に、空を飛んでいる戦車の上に乗っていた。

どうなってしまうだろう、私?

この人は誰?そもそも()()

と頭の中が謎だらけだった自分には後で答えを知ることになった。

夫の友である【大鳥】が私を助けようとして、私を攫った人と戦っていたそのとき、見てしまった。

あの姿...あの肌色...あの20本の腕...9の頭...

()()じゃない...

天界から冥界まで名を轟かせた羅刹(ラクシャーサ)の王、【ラーヴァナ】

可哀想...それは自分に対する言葉ではなく、私を救おうとしてくれた大鳥に送る言葉だった。

私なんかのために羅刹の王との死闘へ挑んだ果てに翼が千切られ、地に落ちて、命を落とした。

ごめんなさい...()()()()()

あなたは夫と交わした約束を守り、私を助けるために命まで犠牲にしてくれた。ありがとう。

しかし、謝罪の言葉も感謝の言葉も述べられないまま、私はその場から連れ去られた。


そして、今は羅刹の王国...()()()()にいる。


私、これから羅刹に食われるか死より残酷なことをされてしまう。

それを思うと恐怖という気持ちが湧いてきたが、恐怖の中になぜか安堵の気持ちが芽生えた。

これでいい...と思ってしまう。

思い浮かべたのは最近まで共に人生を送った運命の人だと思われる夫だった。

ラーマ...あなたといる時は幸せだったよ。あなたは立派な王になれる。私が側にいなくても…

しかし、一つ言えることは私が求めていた自由とはあなたといることでは手に入れないみたい。

考えていたわ。

もしかすると、これで...真の()()()()()()かもしれないわ。

死を受け入れることで…

とそのとき、私の前に現れたのは私をここに連れてきた羅刹の王だった。

あの巨体の前にして、死を覚悟した私はもう決意を固めた。

短かったが...不自由のない人生だったと自分に別れを告げて、

私をこの人生という牢屋から自由にしてください。できれば一思いに頼みます...と相手に言葉を放った。


しかし、相手が次に取った言動は思わぬ展開だった。


どうすれば良いだろうか?


羅刹の王に()()()()()()()()...

最後までお読みいただきありがとうございました。

古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。


日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。


第9話の自由不自由の次の悲劇の妃の追憶になります。別の話ですが、「攫い」の漢字と「一攫千金」の漢字が一緒だということを知って、驚きました。興味深いですね...


ご興味ある方は「シーター」や「ジャターユ」など登場したラーマーヤナ関連の言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。


もしお気に入りやご興味があれば、「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も受け付けます。


毎日更新とはお約束できませんが、更新をできるだけ頻繁に続けますので、お楽しみください!


(2022/4/29:辻褄を合わせるために内容の一部を修正)

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