不思議な縁(鬼猿の仲)
永遠の宿敵...切れない縁
古代インドに語り継がれる叙事詩【ラーマーヤナ】、ヴィシュヌ神の化身【ラーマ王子】の愛する【シーター妃】を奪還するために耗発した羅刹羅闍【魔王ラーヴァナ】との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再会を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生【椎谷・蘭華】がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
田舎の一本線の道路でさっきまで騒がしかった声が今になっては静かになった。
道路に寝転がっている何十人の黒いスーツの男の姿があちこちにいる。
その中で立っているのは白い髪と肌色をして、白いワンピースによく似合う可憐な少女の一人と対照的に黒に近い肌色と強面の巨漢だった。
一仕事が終わったかのように少女、孫・悟空は両腕の上げて、ストレッチのような仕草をした。
「ふ...片付けたな...全然運動にもならないけど...」
そんな言葉を聞いた巨漢、終焉の魔王と呼ばれる屈強の男はサトラを見て、沈黙を保った。
「でも...まだまだ全然...暴れ足りないよな...な?魔王様よ...」と今度はサトラが巨漢に視線を送って、次のように言った。
「一発...やるか?」
ニヤリとした笑顔とその少女らしくない煽りの挑発を聞いた巨漢は何も返事しないまま、ある方向に向かって、歩き出した。
そして、こう言った。
「愛する我が君のところに行かないといけない...貴様に付き合う時間なんぞ今はありやしない。」
「そんなに冷たくしなくてもいいじゃないのかな...助けてあげたのによ...少しだけ...ね?ね?」とサトラは歩いている巨漢の前に少女のあざとさ満載の顔をした。
「興味がない...」と巨漢はサトラに目向きもしないで、ただ歩き続ける。
サトラはそれにめげずに今度は宙に浮いたままにして、巨漢の横と平行にして、追っている。
「知っているか?まあ、たぶん知らないと思うけど...この国では犬と猿は仲が悪いという話で有名なんだ...なんか昔話でいろんな由来説があるけど...猿の俺でもいまいちピンと来ないだよね...
しかもこの国で超有名なおとぎ話では主人公と一緒に犬と猿と鳥か...3匹が鬼退治をするんだよ...なんか矛盾しているよね。そんなに仲が悪いなら、一緒に戦うなんて...
まあ、犬抜きでも結局猿は鬼と戦うから...鬼と猿は敵同士ということは変わらないけどな...」とここでまたサトラが巨漢の目を見つめてこう言った。
「俺たちみたいだな...さっき一緒にあいつらを片付けて思いついちゃった。」
それを聞いた巨漢はやっと自分の口を開けた。
「...それは確かだ...だが、余は貴様の助力など頼んではいない。それに貴様が勝手に一方的に暴れているにしか見えない。だから、それが共闘だと言うのはほど遠い。」
さらに、巨漢もこう言った。
「余の同胞は数え切れないほど殺されてきた...猿共のこざかしい真似で騙された挙句、貴様らに命を落とされたてきたことは永遠に忘れもしないぞ。」
それを聞いたサトラはまた別の意味でニヤリと笑った顔で巨漢に言葉を返した。
「そんなことを言われる筋合はないと思うけどな。俺の兄弟たちも大変な目に遭った。
犠牲者がいないという訳じゃねえ。そもそも頭が固いお前らが勝手に俺たちの罠に引っかかっただけだ。
ずるい?...それは結構!
だってほら...屈強の羅刹の方々を相手にか弱~い俺たちはどう戦うの?
ラクシャーサと真っ向勝負で挑もうとする愚か者がいないぞ。少なくとも俺の兄弟たちはそこまで頭が悪くない。まあ...頭が固すぎるお前らには永遠に理解できないと思うけどな。」
と言った言葉に少し相手のかんに障るのか巨漢はサトラを強面のままに睨み付けた。
それを機会にサトラはさらに煽りを足した。
「弱者は弱者のやり方がある。まあ...俺はそれに当てはまらないけどな...」
「よく喋るその口...永遠に閉じようか」
きききという笑い声が聞こえたかのような笑みをしたサトラは、
「いいねいいね...そうこなくちゃ...」とやる気満々で戦闘態勢に構えたサトラ
しかし、相手の巨漢はただ次の言葉を放った。
「貴様の強さは余も認めるほどだ...そのこざかしさもだ...ラクシャーサである余はヴァーナラの貴様らのことを永遠に分り合えないだろう。それでも愛する我が君を助けようとするその気持ちに...感謝する。」
中々の想定外の言葉を耳にしたサトラは少し動揺した。
「へー...お前の口から御礼を言われるなんて天地がひっくり返ってもこの一生では聞けないと思ったわ。一応...任務みたいなもんだから、御礼は要らないぞ。でも...なんだろう...この気持ちは新鮮というか不気味というか...鳥肌立っちゃった...俺は猿だけとな...かかかっ!」とどこかで照れ隠しをしているようなその笑い声に巨漢は話を続けた。
「余にとって一番大切なのは...愛する我が君を幸せにすることだ。そのためであれば、貴様のようなヴァーナラ共の助力など惜しまない。例え、余だけでもそれだけは余の命が尽きるまで果たしてみせる。」
「...」
サトラは逆にツッコむ言葉を失った。やっと自分の中にある気持ちを整理できたときにはこう巨漢に訪ねた。
「ね...一つ聞いていいか?」
「質問によって、貴様に答えてやる...」
「...その愛はどんな気持ちなんだ?」
質問を聞いた巨漢はサトラの方を妙な目で見た。
しかし、巨漢の口が開いて、いざ何か言いようとしたときにサトラは突然会話を止めた。
「いや!やっぱり答えなくていい!ラクシャーサが愛を語るところ...見たくないわ。想像するだけなんか吐き気がする...オッエー。」とその可憐な顔で凄く嫌そうな表情をしたサトラだが、巨漢はただ歩みを止まらないで進んでいる。
「やはりヴァーナラの考えていることには理解できん。」
「けっ!奇遇だね...俺もだ...」
そして、二人はそのまま一本道を進み、愛する我が君と呼ばれた女性、蘭華がたどり着いた場所に向かっている。
例え、宿敵同士が永遠に分かり合えなくても...
今は...今だけは...二人は一緒に同じ道を歩んでいる...
今回の感想↓
一週間休みました...
いろいろありましたが...でも、こうやってまた更新できることは本当によかったと思います。
前回はランカちゃんのあれ?で途中に終わりましたが、今回の話では一旦同時で起きた出来事で場所を変え、黒いスーツの人たちをやっつけたサトラと魔王の方にしました。
前回を書き終わったときから、ここで繋いでみようと思いました。
犬猿の仲ではなく...鬼猿の仲にしましたw
永遠に分り合えないであろう二人が同じところにいると、こんな会話が出ますかね。
突然なお礼の言葉...心の中で聞きたかった意外な質問...
なんか一歩近づけられるかと思ったら、また引いて前のところに戻るそのような関係...
中々興味深い感じになっているかと思います。
どう感じ取るかも皆さん次第です。
最初は拳を交えながら、友情を高める?クロスカウンター的な展開を考えましたが、こっちの方がより伝わるかなと思って、歩きながら話すことにしました。
いかがでしょうか?
煽りまくるサトラと意外に冷静な魔王...この二人が喧嘩をしないでこう話し合うときが来るなんて...作者も思いもしませんでした。(自分で書いただろうが!)
さて...次に登場するのは...誰になるでしょうか?
そ、れ、は...
もうどうなるかそれは次回の楽しみとしか言いません!
乞うご期待!
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改めて最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
今年の第13回ネット小説大賞に再挑戦します!
また、お陰様で...この作品は30000PVに達成しました!!!
本当にありがとうございます!
この作品を描き始めてあと少しで4年が経ちます。
それでもまだ読んでくれている読者がいる限り、やめるつもりがありません。
(もしかしたら、別の作品を書くこともあるかもしれませんが...並行にしたいです)
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://ncode.syosetu.com/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。




