終末の伝承(英雄論)
元鳥の王が語る...この世界の英雄を
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再会を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
都内の某大学
ある講義室
講義室内では、一人の男性が講義をしている。
「この文献からすると...このような推測ができます。当時の文明としては発展している。他の王国に比べてはできませんが、これを証拠にさらに深掘りすると...」という説明が続いている。
参加した生徒の人数がそこそこいるが、本当にこの講義に興味があって参加したのはあまりいないということが多いという事実は講義する側の人間からにして目で見れば分かる。
そこで講師を務める、鳳・タカオは講義の途中にも関わらず、一旦メガネを外して、メガネ拭きでメガネを拭きながらいきなりある質問を投げた。
内心には...この講義には簡単に単位が取れるという噂が広がって、集まる人はそれが目的だと分かったが、やれやれだな...と思いながら。
「皆さんはアンドロメダ型神話という言葉を聞いたことがありますか?」
その瞬間、室内の空気が一変した。
皆が同じ顔をしなくても、同じ意味を持つ表情になった。
それは...【疑問】
まるで顔にその言葉が書かれているような感じだった。
そして、生徒のリアクションも待たずに鳳はメガネをかけ直して説明を続けた。
「皆さんは英雄という言葉をよく知っているかと思いますが、よく創作物に出てくる主人公の勇者...または現代だと正義のヒーロー...その中に超能力を持っているスーパーヒーローもありますよね。
彼ら...と言ってしまったら、男性限定になってしまうので...その人たちにしましょう。
その人たちには特殊な力を持つとされる。そして、選ばれし者として責務を果たす...よくある話です。
私から見ると、確かにその原点としては神話に登場する英雄のことだと思います。」とここで一息をついて、次のように説明を続けた。
「神々から授かった不思議な力や...あるいは神々の血筋であるいわゆる半神半人という理由で英雄になる伝説上の人物が世界中の神話に登場します。
日本神話だと一番知られているのはやはり日本武尊ですね。ギリシャ神話だと...ヘラクレスやペルせウス...インド神話だともちろんラーマーヤナのラーマ...マハーバーラタのクリシュナやアルジュナ...北欧神話だとドラゴン殺しのジークフリート...まあ、その辺にはドラゴンと英雄の伝説がいっぱいあるので、私の専門外ですが、要するに世界中に英雄とされる人物が数え切れないほどいます。そこで、アンドロメダ型神話です。」とここで一回講義室の様子を見渡した。
そして、また話の続きをした。
「アンドロメダに関しては自分で簡単に調べれますので、割愛しますが...簡単に説明すれば怪物の生贄になった姫様です。そこで、さっき名前も出てきたペルセウスに救われて...最終的に結婚しました。
皆さんがこの話を聞いて、よくあるある話だと感じませんか?
魔王や怪物みたいな悪または敵的な存在を倒し、姫様的な存在を救い、そのあとは結ばれて...めでたしめでたしみたいな話...これは【アンドロメダ型神話】と呼ばれています。そして、世界中には似ている伝説がたくさんあります。
しかし、英雄とは言え、その人たちは決して楽な道で英雄になった訳ではない。
怪物退治などの無理難題という【受難】...それを乗り越えたその果てには名誉や賞賛...金銀財宝...自ら君主になるとか【栄光】を手に入れる。そして、ノブレス・オブリージュ...力を持つ者は弱き者を助ける責任があるということでもあります。
最近のヒーローでも大抵...これに当てはまるじゃないかと思います。もちろんアンチヒーローとかを除きますが...あ、たぶんこう思う人もいるかと...先生ってこういうのも知っているんだ...と。一応子供の時は普通に漫画とかアニメとかゲームをやっていたので、あとは趣味として神話が好きなので...専門外のことでもこの程度は話せますよ。興味がある方にはぜひ直接でもいいし、うちの研究室でも歓迎します。」とここで少しお辞儀をした鳳は話しのトーンをよりシリアスに変えた。
「でも、本当に...めでたしなのでしょうか?
もしの話...その英雄が悪側になって、世界を滅ぼそうとしたら...誰が止められますか?
よく最近だと、主人公が闇落ちするという展開がありますよね?逆に勇者が世界を滅ぼすという展開も珍しいことじゃないです。
以前の講義で話した終焉の話に変わりますが、ヴィシュヌ神の10番目にして最後の化身...汚物を破壊するもの。暗黒時代を終わらせて、次なる黄金時代を導く救世主だと言われています。
その者は英雄と呼んで良いのだろうか?人間を救うというより、全てを滅ぼして、世界を作り直すみたいな規模が違いすぎる話ですが...
まあ...それはヴィシュヌ神のアヴァターラであって、人間?とは言い難いのです。アヴァターラは半神半人とは違うという点だけ理解してもらえればそれで良いのです。
少し話の軌道をさっきの話に戻すと...ラーマーヤナでは、見事に魔王ラーヴァナを討伐し、長い間の追放と放浪の生活から王国に凱旋した英雄ラーマは王となり、シーター妃と共にめでたしめでたし...という訳じゃありません。実はその後の話の続きがありまして、それは...」とここまで説明した鳳だが、終了時間を告げるチャイムの音が講義室に鳴り響いた。
「残念ながら、もう時間です。今日はここまでにします。もしご興味があれば次の講義にも話しますが...本来の講義をちゃんと受けることを条件にします。では...」と言って、講義の終了を告げた。
講義の後、鳳は講義室の一番後ろの席に残って、座っている人に声を掛けた。
「先生...いかがですか?」
そこで、派手な青色の髪の男性、球磨・治はこう答えた。
「悪くないですね。こうして生徒に興味を持たせる話を挟んで、話の続きは次回の講義にするスタイル...私は大学など通っていませんでしたので、こうやって授業を受けると、とても新鮮です。」
「今の時代の人間には分かってもらいたいだけです。英雄だからって楽に稼げないし、なってからは責任やら試練やらがいっぱいあるということ...あなたが仕えたその方も例外ではありません。」
「はい。そうですね。」
「そう言えば...」と突然誰にも残っていない講義室を見渡した鳳。
「何か...」
「あ、すみません。よく私の講義に参加してくれた一人の生徒がいないと気づきました。理系ですが、こういう話に興味を持ってくれましてね。」
「ほ...その生徒は?」
「あなたも知っている...設楽・駱くんです。」
「!?」
「それで?さっき研究室でお話ししたこと以外にはまだ何がありますか?わざわざ待ってくれて。」
「あ、そうです...実は一つ言い忘れたことがありまして、まさにその設楽・ラクくんと関係する話です。」
「それは?」
「実はラクくんの血を分析で調べたとき、呪われた血以外に別の何かが混ざっています。」
「と言いますと?」
「人間とは別の...何かが...しかし、サンプルが少ないので、はっきり断定できませんでした。もし本人がいれば、ぜひご協力をお願いしたいところですが...」
「そう...ですか...もし彼と会えたら、この件について伝えておきます。」
「では、私もこれで失礼します。さっきの打ち合わせした件については結果が分かり次第、ご連絡します。」
「こちらも例のものを調べておきます。では...」
そして、先に球磨が講義室を出た。
鳳は何か考えているような顔をして、そのまま後を追って講義室を出た。
彼らが探しているラクが数時間前に彼らがいた研究室の前に立ち尽くしていたことを知らずに...
今回の感想↓
アンドロメダと言えば、瞬ですよね...聖闘士星矢懐かしい...
おかげでめっちゃギリシャ神話が好きになった作者でしたw
アンドロメダ型神話というワードも作者が神話のことを調べたときに見つけたワードで...ああなるほど!と納得しました。
勇者が魔王を倒し、姫様を救うというテンプレの原点とも言えるでしょう。
久々に鳳先生メインの講義ですね。
突然の英雄の話をされて、生徒はどんな反応をするでしょうね...実際。
でも、個人的にこういう教科書にない雑談の話が好きなので、もし作者がその生徒なら、めっちゃこの先生好きになるわ...
本当に英雄の話って世界中にありますね。どんな地域もどんな神話も...どんな時代も大衆が英雄を求めるとよく言われますが、最近は誰でもヒーローになるので...皆さんも身近なことでも些細なことでも良いと思うことをやりましょう!
果たして、その結果はどうなるであれ...ということも考慮しながら...です。
闇落ちとかもそうです。
スーパーヒーローがスーパーヴィランになると、めっちゃ厄介ですよね...
そして、全てはめでたしめでたしと言うわけじゃない...と授業はここまで!(え~)
クマさんが言ったことも気になるますね。
ラクは...人間...?
一体どういうことか
そして、次は誰が登場するか...
どのような展開になるのか!
そ、れ、は...
もうどうなるかそれは次回の楽しみとしか言いません!
乞うご期待!
改めて最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
今回の第13回ネット小説大賞に再挑戦します!
また、お陰様で...この作品は30000PVに達成しました!!!
本当にありがとうございます!
この作品を描き始めてあと少しで4年が経ちます。
それでもまだ読んでくれている読者がいる限り、やめるつもりがありません。
(もしかしたら、別の作品を書くこともあるかもしれませんが...並行にしたいです)
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://ncode.syosetu.com/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。




