豊穣の呪縛(末裔)
末裔たちの逃れられない...呪縛
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再会を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
ある山の奥に大きな西洋式の豪邸が佇んでいる。
周辺が山森の中に突如現れるその豪邸にはとても違和感を感じさせる。
中を覗いてみると、数え切れない部屋の数が無限のように並んでいる。
しかし、その大きさと部屋の数に比べて...生活感が全く感じない。
ここには住人があまりにも少ないことは静けさだけが物語る...
そして、一番奥にある部屋の中には誰かがいる。
それは、一人の老婆の姿が...執務机でお茶の湯飲みを持って、穏やかに飲んでいる様子が見える。
彼女の目の前の机にはいくつかの書類や本が綺麗に置いてあり、恐らくこれから目を通すものであろう。
ここでしばらくの静けさが部屋の外からの扉からノックした音で消えた。
「入りたまえ。」という老婆の声に反応して、部屋の外にいる者が扉を開けて部屋に入った。
その者の服装からして、この豪邸...すなわちこの老婆を仕えている執事のような者だった。
その執事は駆け足で老婆の元に来ると、用件を申した。
「ご当主様...」
「なんだ?」
「報告いたします。【お社】エリアに侵入者が発見されました。」
それを聞いた老婆は手に持っていた湯飲みを置いて、その執事を見た。
「モニターに映せ。」
その命令を受けた執事はすぐさまにリモコンを取り出して、何かの操作ボタンを押した。
そうしたら、天井から巨大スクリーンが降ろされて、映像が映された。
映されたのはある神社の映像だった。
そこには本殿が前に一人の女性らしき人が倒れている。
そして、もう一人の少女らしき人がふすまが開けられた本殿の中に入った様子が見られた。
その様子を確認した老婆は執事に命令を出した。
「侵入者をここに連行する...今すぐ。」
「...すでに対応しております。」
その映像が流れる間もなく...映像の中に黒いスーツの男性らしき人の何人かがその本殿に近づいている。
彼らの手には銃らしき武器も持っていて、本殿の中に向かって構えている。
それから本殿の中に侵入したと見られる一人の少女らしき人は両手を上げて本殿を出た。
特に抵抗する様子もなく、その少女は黒いスーツの男性に連行された。
もう一人の女性は別の黒いスーツの男性に担架で運ばれた。
その様子を見た老婆は眉を寄せた顔で執事に次の命令を出した。
「この少女をここに連れてくるように...もう一人は客室で休ませておけ...」
「かしこまりました。」と執事が頭を下げ、すぐに耳に付いている通信機で伝令を伝えた。
「やれやれ...私はただ可愛い孫の迎えだけを期待していたが、先客が来たのか...」
しばらくにして、再び扉が開けられた。
「連れてきました。」という声を共に黒いスーツの男性はさっき映像で見えた少女らしき人を部屋に入って来るように合図をした。
連行された少女は大人しくというより...とても興味津々な目で部屋の中を見ている。
「ご苦労...もう出ていい...君も...」と執事の方にも部屋を出るように指示した。
「ですが...この者は...」
「構わん...二人だけにしてくれ。」という言葉で執事の男も頭を下げて、部屋を後にした。
二人きりになった老婆と少女は少しの間に沈黙が続いている。
そして、やはり先にその沈黙を破ったのは侵入者でここに連れて来られた少女の方だった。
「やっと出逢えたね...」
「あんたのような者には用はないが...」
「冷た~い...もっと喜んでよ。この私と出逢って喜ばないの?」
「もう一人の女性に何をした...」
「ここでスルー?こんな私でも落ち込むよ...」
「何をした...」
「...別に...ただ眠らせただけだよ。」
「それで...お社の中に入って、何が目的だ。」
「中を見られたところで怒らないんだ...ね...あれはどういうこと?」
「答える義理がないな...」
「あるよ...だって私は...」
「シーターの生まれ変わり...と名乗ったらしいね」
「なんだ...知っているじゃん...私もお婆さんのことを知っているよ。」
と言って、少女は少し執務机に近づき、老婆の目を見て、こう言った。
「日本の農業を支えて、界隈では最大手の企業グループ...この国の裏権力を握っていると噂された【イシュタルの恵み】グループのトップ...その会長を務める...椎谷・恵子さん...」
「私のことを知った上で...お社に侵入するのか...愚かな娘だ。」
「娘と呼ばれるのは心外だな...私は正真正銘シーター妃の生まれ変わりだよ。つまり...あなたの...」
「あんたみたいな紛い物はシーターと名乗る資格がない...」
「...頑固なお婆さんだね...まあいいや、信じてくれなくても...そろそろ説明してくれない?あの神社とその中にある...いるあれは何なんだ。」
「...あれは我が一族の呪いの本当の姿だ...」
「それは豊穣の神様の恩恵の代償?」
「そうだ...それは我々...豊穣の巫女の血を受け継ぐ末裔の...逃れられない罰だ。」
「ふーん...じゃ、あなたは?」
「私は...その呪いを私の代で終わらせる...そのためなら何でもする。」
老婆はそう言って、少しの間目を閉じた。
そして、こう言った。
「あんたはどうだい...ラーヴァナの末裔よ。」
豊穣の呪縛が出逢わせた...末裔たち
今回の感想↓
今回でなんと!200話になりました!
ここまで書いてきた物語を読んでくれた皆さんにはとても感謝しています。
そして、200話になってもまだ終わりが見えさそうというところは作者でも驚いていますw
どこまで続くんだ?
これからの展開はちゃんと考えていますが、どうやらキャラクターたちが簡単に終わらせてくれない感じです。
どうか温かい目で見てくれると嬉しいです。
しかし...記念すべきの200話でなんと急展開!?
その謎?のお婆さんの名前が明かされた!
ただのおっかない老婆だけじゃない感をすごく伝わりますかね?
只者じゃないのは分かるが、まさかの大手企業のトップとか...
ちなみにイシュタルの恵みはある企業の名前からインスピレーションをもらいました。
あの...乳製品とか...スから始まったあの会社です。
え?イシュタルは誰かって...
メソポタミアの神話に出てくる豊穣と美を司る女神様ですよ。
豊穣の女神はいろんな神話に出てきたから、こっちにしました。
それはさておき、この二人の対面は中々感情感ありますね。
紛い物と呼ばれ、魔王の末裔と呼ばれたシーターと名乗った少女...
そして、正体が明かされたトップ企業の会長であり、豊穣の巫女の末裔である老婆...
一体この会話はどうなっていくのか...
そ、れ、は...
もうどうなるかそれは次回の楽しみとしか言いません!
乞うご期待!
改めて最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
今回の第13回ネット小説大賞に再挑戦します!
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://ncode.syosetu.com/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。




