羅亜夢(工夫②)
彼は...一工夫する
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再会を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
場所はある小さな町工場に移る。
その町工場の奥に隠されている部屋で一人の青年が自分の目の前にあるものを見て戸惑っている。
その戸惑いの原因はその部屋の壁や棚に飾ってある武器の数々...ではなく、一緒に部屋の中にいるもう一人の男性...ここの町工場を工房と呼んだ工房の主、上川・工夫の言葉からだった。
「えーと...要するに僕が持ってるこの斧に追加できる要素を選ぶというのは、その特殊能力が神様と同じ力を持つぐらいの破壊力があるということですか?」
「そう...だと言ったら?」
「えー...すみません...中々スケールが大きすぎて...そこまで求めるほどじゃなくて...」
「若い者にはこういう分かりやすい力の方がいいと思ったけどな...お前の先祖...あの英雄が魔王の体を貫いた弓もわしが作った作品じゃ...それぐらいでもいいだろう?」という問いかけに青年、設楽・羅亜夢はそれを聞いて、少し驚いた。
「驚くことないだろう...アイツの指示でここに来たから、あんたが魔王を倒さないといけないことぐらいはすでに気づいたはずだ。それとも何だい?魔王と戦わずに別の方法が思いついたとか?」という今度は問い詰めに近い質問でラームに向かった。
「あ、そうですね...正直誰にも傷つけないで解決できればそれでいいと思いました。」
「は...最近の人間の考えが昔と変わったのは頭で分かったつもりだけどな...だから、神々にもこれらの神器を使わなくなったことも...人間が平和のことを思うのは昔より多くなったからかもしれない。しかし!」と今度タクオと名乗った工房の主はパン!とその辺の机に手で叩いた。
「武器は誰かを傷つけるための道具だけだと思ったら大間違いだ。持っているだけで抑止力になる...つまり力の均衡、最近の横文字だとパワーバランスだ!あんたが持っているその斧は証明書...あんたのアイディーカードだけであって、何の力もない!何かを追加しなければ、あんたが...あれだ...マイバーカードを携帯しているだけで何もできないぞ。」
「あの...恐らく...マイバーじゃなくて、マイナンバーカードです...」
「だから横文字が苦手なんだよ、わしは!」とラームの指摘に少しキレ気味になった。
「はい。すみません...僕に気を遣ってくれるのですね...本当にありがとうございます。」というラームの素直な謝罪と御礼を聞いたタクオは急に機嫌が直った。
「あ、あ...分かってくれればいいのさ...ったく...さすがあのお人好しの血筋...わしでも許してしまった。」
「え?」
「こっちの話だ...それより...あんたは傷つけない選択がしたいというのは分かった。じゃ聞くが...どんな追加要素がいいと思っているのか?」
改めてそう聞かれたラームは少し考え込んでいる。
「うん...そうですね...相手を捕らえる力とか...眠らせるとか...」
「どっちもつまらないな...」
「いや...真面目に考えていますが...」
「確かに束縛効果とか睡眠の術をかけるという効果は追加できるよ...でも、それじゃあんたが本当に望んでいることなのか?」
「と言いますと?」
「武器じゃなくても物を作るときには一工夫で自分しか持っていない独創性...オリ...オリジン?」
「もしかしてオリジナリティーですか?」
「それ!あんたにとってもわしにとっても他の者が真似できない...唯一無二の物になる。わしはそういうものが作りたい。そして、あんたも自分にしか持っていない力を手にする。悪い話じゃないはずだ。」
「そう...ですね。」とラームはタクオの話に納得したようだった。
ラームはまた考え込んでいる。
「今までにない...僕だけの力...うん...難しいですね...」
「今すぐここで決めなくてもいい...まだ時間の猶予がある...と言いたいが、それはどれぐらいあるかはわしもわからん。」
「...」
「あんたが望んだものを言ってみたらどうだ。何でもいい...今一番思いついたことでも言ってみな。」
「...皆が...ただ幸せに暮らす世の中にしたい...ですかね...」
それを聞いたタクオは眼を大きくして大笑いした。
「あ、あの...これはあくまで僕の願望であって、さすがにそれができるほどの力が...」
「ははは!...いや!さすがお人好しの血筋...絵空事とか綺麗事が得意ってこった...」
「それはいいことなのでしょうか?」
「良いも悪いも関係ない!わしも囚われすぎたかもな...武器に破壊力とか抑止力とか言って...こんな盲点が気づかないなんて。」
「え?できるのですか?」
「できるできないじゃない!やってみないと分からない!完全にわしでも初めての試みだから、どうなるか知らんが...あんたの望みをその斧に入れてみる!」
「は...」
「わしの傑作になるか...それとも駄作になるか...イスレーションが湧いてきた!」
「それ...インスピレーションかと思います。」
「はっ!何でもいい!あんたにも付き合ってもらうぞ...これが仕上がるまで...」
「はい!」
「ヨーシ...それじゃ...工夫の時間が始まるぞ!」
「...タクオタイムと呼びましょうか...」
「お?それ...採用!タクオタイムスタートだ!」
青年...その願望がいかに...
今回の感想↓
今回はラームくんの話でした。
作者も思うのですが、もはやラームくんのそのお人好しは能力なんじゃないかと...少なくても才能ですね。
タクオという工房の主は職人気質のおじさんで、創作が好きという感じを感じさせたら嬉しいです。
マイスターという感じで...
あと古風感を出したくて、わざわざ言い換えた横文字が間違って、ラームが訂正するというやりとりが急に降りてきました。
ちょっと面白くて、悪気のないラームもまた天然たらしでいいですねw
迷っているラームも自分の素直な願望を口にしたラームも...人間味を感じさせて、だからこそ自分の使命を探している途中なんだね...とここで今後の展開はどうなるやら...
その斧にはどんな効果...能力が宿るだろう...
そして、魔王との対峙はいつになるのか...
終焉は一体...どう阻止するのか...
そ、れ、は...
もうどうなるかそれは次回の楽しみとしか言いません!
乞うご期待!
改めて最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
今回の第13回ネット小説大賞に再挑戦します!
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://ncode.syosetu.com/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。