昔話(次郎左衛門の話)
これは昔々の話...農民の次郎左衛門と巫女のお鶴の話の続き
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再会を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
昔々...ある村では次郎左衛門という名の普通で平凡な農民がいました。
彼はある日【豊穣の神様】の力を授かった豊穣の巫女と呼ばれた謎の女性と出会い、彼が住んでいる村に連れてきました。
不作を豊作に変えるその摩訶不思議の力を村人に見せた彼女は村人たちにとても歓迎され、今度こそこの村が救われると信じた矢先、彼女は一晩にして姿が消えました。
一時どうなるかと思ったが、次郎左衛門のおかげで無事に彼女を連れ戻せました。
無論、功労者である彼に賞賛でも感謝でももらえた訳でもなく...村人たちは豊穣の巫女の戻りをただ安堵し、喜ぶだけでした。
そして...彼女はその力で村の作物を豊作に変え、村が豊かになりました。
これ以上にない富を味わった村人たちは彼女に優遇として一つの家を建て、さらに隣には社まで建てた。
そこで彼女は豊穣の神様に祈祷したり、作物を献上したりしました。
加えて、村の村長は彼女がより村人たちに意思疎通ができるように言葉や読み書きを教えたり、村の生活での作法などを教えたりもしました。
彼女はこの村の正真正銘豊穣の巫女として村のために...村人たち全員の生活のために...与えられた役割を果たしていました。
例え、他の村や集落が不作に陥って、不幸になったとしてこの村だけは皆が幸せに暮らしていました。
そして...月日が経ち...季節は変わり行き...ある日
次郎左衛門は豊穣の巫女が住んでいる家に訪れました。
「ご免ください...」と彼は家の中に声をかけました。
「はい...」とい返事が来た共に彼女が姿を現しました。
「これ...今日採った野菜です。」と彼は手いっぱいに持っている野菜の数々を彼女の家の玄関に置き始めました。
「今日はジロウさんが来たのですね。いつも皆さんに感謝しています。」と彼女は次郎左衛門にとても優しい笑顔を見せて御礼をしました。
「いいえ...巫女様のためなら何でもお力になりますよ。」と少し彼女の笑顔が直視できずに彼は言いました。
「ふふっ...巫女様ではなく...オツルと呼んでもいいのですよ...」と彼女が次郎左衛門に言いました。
「あ、いいえ...あのときは巫女様のことをどうやってお話が通じるかと思って、勝手に付けた名前ですので、今になるとおこがましすぎることでした。」と真面目に答えた彼に対して、彼女はこう返しました。
「オツルと呼ばなければ、ジロウさんの畑だけ力を使いません。」
「え!?それだけはお許し下さい!巫女様!」
「巫女様?」
「あ、あの...はい...お鶴様...」
「オ・ツ・ル!」
「はい!...お鶴...さん。」
「これで許しましょう...ふふっ」とご機嫌な笑顔を彼女もまた次郎左衛門に見せました。
「はい...」と一つため息をした後、次郎左衛門は自分が名前を付けたお鶴の顔を見て、さらに家の周りを見ました。
「しかし...すっかり言葉も話せましたね。この村での生活が快適というのは少し違いますが、お鶴さんは何か不便なことがないでしょうか?」
「皆さんのおかげさまで良き暮らしができましたよ。この村の料理も慣れました。」
「それはお鶴さんの力のお陰様ですよ。こんなに皆と裾分けしても余るほどの量はあなたが村に来てくれるまでには想像ができませんでした。」
「それは良かったです。皆さんの役に立てたことをとても嬉しいです。しかし...」
「しかしなんですか?」
「う、ううん...料理が美味しくない...じゃないけれど...ただ何かが足りないなと思いまして。」
「その足りないものは何ですか?」
「...辛みと言いましょうか...それはどこかで懐かしく...食べたいと思うときがたまにあります。」
「辛みですか?この村なら...辛子があるっちゃありますが、それと違う辛みのあるものでしょうか?」
「そうですね...もしかしたら、ちゃんと言えませんが...あとは香料の香りもここにはありませんね。」
「香料...」
「この鼻が覚える香りです。それはここにない。ごめんなさい...この村が悪くないわ...」
「辛みのあるものと香料ですか...確かにそのようなものがこの辺りにありませんね。あ!」とここで次郎左衛門は何かがひらめいたような顔をしました。
「唐と言う国の辛子が普通の辛子とは違うと聞いたことがあります。もしかしたら、それかもしれませんね!あと、香料...ここじゃないどこかで売ってあるかもしれません。」と彼はお鶴の目を見て、こう言いました。
「私は隣の町に行って、聞いてみます。商人に聞いたら、何か分かるかもしれません。」
「そんなこと...いいですよ...私のために遠いところまで行かなくても。」と彼女は申し訳なさそうな顔をしました。
しかし、次郎左衛門の決意が固かった。
「今この村にも新しい野菜とか珍しいものを植えてみたいと思いましてね...ついでにお鶴さんが欲しいものも探してみます!」と彼は彼女に言って、お辞儀して家を出ました。
それからまたしらばく月日が経ち、次郎左衛門は村に戻りませんでした。
村人たちも彼の安否が心配し始めたころ、豊穣の巫女...お鶴も彼のことを心配しました。
無理を言ってしまいましたわね...
何か危険なことに遭わないのかしら...
もし...このまま彼が戻らなければ...それは私のせい...
と彼女は社に入って、祈りをした。
どうか...神様...
彼の安全をどうか...彼をお守りください...
母なる...神様...
母...?
なぜ私神様のことを母と...という僅かな違和感を感じた彼女だが、彼女の後ろから誰かの声が聞こえました。
「いた!お鶴さん!」
彼女が振り向くと、そこに彼女が待っていた人の姿が見えました。
「ジロウさん...」
「ごめんなさい...思ったより時間がかかってしまいました。でも...成果があります。」
とここで彼の手のひらにある赤く小さな細長い何かの実を彼女に見せた。
「これは...」
「唐からの辛子...唐辛子です。」
「トウガラシ?」
「これ...乾燥したものしかありませんが、食べてみて下さい。」
彼女はその赤い実に手を伸ばして、一粒を食べてみた。
!?
辛い!
私が知っている辛みと違うけど...でも...
確かに辛い!
不思議なことに耐えられなくもないが、かなり猛烈な辛みだった。
「やはり食べられたのですね。私の場合、もうかじっただけで悶絶しました。はは...恥ずかしかったですね。」
「これはどうやって...」
「商人を聞き回って、ありそうな町まで遠出しました。残念ながら香料にはにんにくやネギしか見つかりませんが、それはお鶴さんが探したものじゃないかと信じて持って帰りました。その中にある種は辛みのもとです。」
「種...ということは」
「はい!」
二人は家を出てすぐ近くにある土にその唐辛子の種を植えてみて、そして彼女の力で芽が生えた。
「これで生の唐辛子が食べられますね。お口に合うかは保証できませんが...」
「それだけで十分です。大変でしたよね。本当にありがとうございました、ジロウさん」とここで彼女は満面な笑顔を見せてこう言いました。
「このトウガラシの木は...二人の秘密ですよ...ふふっ」
その笑顔を見た次郎左衛門は...疲れたが吹っ飛ばされたことを感じた一方、彼女に対して別の感情が芽生えました。
決して許されないある感情が芽生えてしまいました。
それは禁断の果実を食べたときに得た感情のようでした。
舌に残る辛みを思い出しながら、彼はただ彼女を見つめました。
お鶴さん...あなたのこと...
(まだまだつづく)
今回の感想↓
前書きの方を見て、気づきましたか?
ある農民と不思議の彼女から...名前が付いた!
やっと農民から次郎左衛門という名前になりましたね。
昔話シリーズになりますが、これは次郎左衛門の話でもあって、彼が自らお鶴と名付けた謎の巫女様の話もあります。
優遇された彼女はいろいろ教えてもらって、本当に巫女になりましたね。
その力で村を豊かにしてくれたから、そりゃ祀られるわ...と思ったら、次郎左衛門の接し方はなんだか急にほっこりするというか...気軽と言いますか...特別と感じちゃいますね。
しかし...辛いものが食べたいと言われて、今時ならカレー屋さんとかいろんな店に連れて行けますが、その時代ってそもそも唐辛子を食べる習慣があまり普通じゃないし、売っているかも
香料というかスパイスも中々ないから、精々にんにくとかネギぐらいかなと思って足しました。
乾燥唐辛子は時代設定では限界でギリギリあるかなと思って、次郎左衛門を遠出させました。何ヶ月かかるでしょうね...
それはさておき、二人で試した唐辛子の辛み...そして、こっそり種で植えた二人...なんかちょっといい雰囲気になりましたね。
作者としてはこれがとても良かったと思った半分、これからの展開を考えると...
これ以上は言えませんが...(笑)
まだまだつづくと書いたからにはもう書くしかないですね。
この二人の関係は一体どうなるか...
あ、彼女が言っていた母の謎も来ましたね。
どういうことだろう...
そ、れ、は...
もうどうなるかそれは次回の楽しみとしか言いません!
乞うご期待!
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
第12回ネット小説大賞に再挑戦した結果、残念ながら通過できませんでしたが、これからも挑戦を続けます!
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
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