邂逅(ヴァーナラミーツナーガ)
顔見知り?の初対面
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再会を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
近畿地方のある大通りに接するあるホテル
ホテルの駐車場の前に一台の車が停まった。
その車から出てきたのはそれぞれ見た目や年齢がバラバラに見える3人組だった。
「ほ...中々良いホテルじゃ...」と言ったのはホテルの外見を見て、キラキラした目をして見た目と反したしゃべり方をした...肌と髪が白い少女だった。
「そうですね。この辺では車でのアクセスが多いので、あえて鉄道の駅から遠目のホテルを調べておきました。そこで、ここは評判がよく、宿代もリーズナブルという点で選びました。」と応えたのは白肌でありながら、顔立ちは日本の人っぽくない中年の男性だった。
「それはいいけどよ...ここを宿にして相手も分かったのか?もう連絡したの?」と今度会話に入ったのは見た目が完全に東南アジア出身の人っぽいもう一人の中年男性だった。
「はい...連絡は先日済ませました。」と簡単に答えた男性を見て、少女はやれやれの顔をして、もう一人の男性...スリーヤにこう言った。
「この人のことじゃ...もうとっくに分かったやら見えたやらでこんなことになるのは分かりきったじゃよ。だろ?」
それを聞いた男性...白城または参謀と呼ばれた男性は特に表情を変えずに「もちろん...あなたはさっき言ったセリフをすると見えましたよ。」
「なんという便利な力だ...でもよ、見えただけでなんでこいつの言うセリフまで分かるのよ。」とスリーヤは突然気になったことを口にした。
「あ...口の動きを読むという術を習得したので、それで読めるようになりました。」
「へ...そんな魔術があるのじゃ?もともとあったと思ったけど。」と意外そうな顔をしたのは少女...孫・悟空だった。
「いいえ。オンライン講座で習得しました。」
「最近のことじゃねーか!!!」とツッコまずにいられないのは肌色が濃いスリーヤだった。
「まあまあ...細かいところは気にせずに...ホテルに入りましょう。」と白城は会話を終わりにした。
「さすが参謀様じゃな...」と苦笑いしたサトラが言って、一緒にホテルに入った。
ホテルのロビーでチェックインをした3人組は客室に案内された。
その部屋は最上階にある一番広くて、寝室だけではなく応対室みたいなスペースまで備えた豪華の部屋だった。
「おいおい...いくらするんだ?この部屋!」
「こういうことがあろうかと思って予約しておきました。」
「いやいや...最近のオーバーツーリズムでこんな部屋を簡単に予約取れるわけねーだろ!」とまた驚いたスリーヤだった。
「何ヶ月前に予約しておいたので...もし使わなければキャンセルするだけです。」
「はは...抜かりねーな。じゃ、俺はベッドのふかふか具合を確かめに行くんじゃ!」
と無邪気な表情をしたサトラが動き出す前のそのとき、ドアがノックされた音が聞こえた。
「失礼いたします。お客様との約束の方を案内してきました。」というドアの向こうから誰かの声で言われた。
「どうぞ...」と言って、色白の白城は向かって、ドアを開けた。
「おい!確かめずに大丈夫なのじゃ?」と警戒したサトラ。
「大丈夫ですよ...彼は私たちの協力者なので...」と開けられたドアから入ってきたのは一人の男性だった。
見た目は肌色が濃いスリーヤより濃い肌色をしていて、顔立ちはどちらかというと色白の白城よりの方だった。
「では、失礼いたします。」とお辞儀したホテルの従業員は部屋の前から去った。
「さて...どうぞ座って下さい。」
「あ、はい。」と客の男性はお辞儀をして、ソファーに座った。
他の三人は向こう側のソファーに座った。
「誰だ?」と気になったスリーヤは隣のサトラにボソッと聞いた。
「うん...この匂い...羅刹のと...大蛇のが混ざっている。」とさらっととんでもない事実を口にしたサトラ。
「は!?ラクシャーサ!?じゃ、こいつは!」とここで驚きのあまりに目を大きくしたスリーヤ。
「落ち着いてください...彼は私たちに害がないのです。」と言ったのは白城だった。
「ここにお招き...途中にもかくまってくださり、本当にありがとうございました。」と男性は白城に御礼を言って、またお辞儀をした。
「いいえいいえ...これは取引ですので、お気になさらず...私たちもあなたたちにも用事があるのです。魔王の末裔であるラヴァン家の一族でありながら、ナーガラジャの一員であるあなたに...」
「この人を知っているのじゃ?」
「今日は初対面です。」
「じゃ、なんでそこまで知っているんだ...と聞くのはもうよそうか。」
「私が見えたので...ここで私たちが出逢う場面を...それで調べさせてもらいました。」
「私は今追われる身でして、そこであなたから連絡が突然来てビックリしました。ここまでの逃走経路とかくまう場所まで手配していただいて、ここまで来ました。
というか...そんなあなた...我ら一族の一番の標的であるあなたはなぜこんなことを...」と男性は感謝をしながら、不思議に思ったことを直接に白城に聞いた。
「やはり敵じゃねーか。」と警戒し始めたサトラに白城は手を挙げて止めた。
「安心して欲しいというのは何ですが、私の現状としては一族の裏切り者になったから、今あなたに何をする訳ではありません。ちなみに他の二方は...」
「まあ...用心棒だと思えば良いのです。」
「特にその白い髪と肌とその容姿...報告で聞きました。あなたはお兄様...うちの当主と一戦交えた...」
「ふふーん...やはり俺の活躍で名前が轟いたな...あの魔王にも戦ったぞ...それでそれで?」とドヤ顔をしたサトラ。
「あ、はい...生意気なところも含めて口が悪い最強の猿の戦士...だと。」
「ここで一発殴ってやろうか...」とさっきまでドヤ顔をしたサトラは拳に力を込めようとした。
「大体当たっているからいいじゃないか?」
「良い訳ねーじゃろ!」
「まあまあ...そして、もう一人はあのヴァーナラの王の現在の姿です。」
「あ、どうも。」
「はい...あの大戦で活躍したお三方に会えて、少し光栄です。」
「逆に憎むんじゃねーの?」
「それはおいといて...私の中にはあの大戦とは関係ない竜王も入っていますので、そっちとしては名高きの者には尊敬しますよ。」
「あ、そう...」
「そうですか...なら話が早い。」と白城は今度少し真面目に男性に質問をした。
「では、そのダブルスパイみたいな話をもっと聞かせてもらえますか?」
「はい。自分の竜王としての役割が完了して、あとはラヴァン家に戻って一族としてやり過ごすと思ったら、ある人が接触してきました。
最初は話し方や私たちの呼び方ではその人は竜王の中で一番地位が高いと思われた者だと...そう思っていましたが、勘違いでした。
要は私たちのことを探るために接触したのでした。それで...偽情報を伝えました。
そこからです。突然脅されて、手下の人も何人かに追われて...途中で同胞のもう一人とはぐれてしまいました。
「その同胞は...」
「その後連絡が取れませんでした。無事だと良いですが...こっちもこっちで命の危険があるので、必死でした。
そこで突然あなたからのメッセージでこのホテルに来てってということです。
最初は罠かと思いましたが...逃走中にうすうす思ったのです。その目を持っているあなたじゃないかと...だから、来たのです。
私にはもう帰る場所がありませんので...」
「で?聞いた限りにはお前さんのところで情報を漏らした密告者がいるっぽいけど、心当たりがあるのか?」とスリーヤは男性に聞いた。
「参号...」
「ん?三番って何?」
「あ、私たちは番号で呼び合うのです。私は睦号です。
はぐれた弐号が言っていました。
参号は生きているのかはもう分からない。でも、チャットには普通みたいに返事をしている。
それはなりすましで...もうグループチャットに入ったというところからその参号の可能性が高いって...」
「じゃ、あいつはスパイに決まりだな。何者なんだ?」
「私もよく分かりません。一族の仕業かまたは...」
「その話はとりあえず後にして。今話すべきことは取引のことです。」
「はい...あなた方に協力してほしいことがあります。
我々の目的...真の魔王への試練の続行ができるようにお力をお借りしたいです。」
「魔王への試練だと?なんだそれ?」
「私たち竜王は尊敬するお方から復活した魔王に試練を与えるためにこの世に現れました。
しかし、今のままだと...ラヴァン家か別の勢力に妨害されて、真なる魔王が誕生できません。」
「ちょっと待って...俺たちはあの魔王を倒した側だったんだぞ。あの魔王をさらに強くするってできるわけ...」と言いかけたスリーヤに
「分かりました。」
「おい!いいのか!?第一こいつはあの魔王の末裔でもあるぞ。」
「そこは...」
「私がこの目で見えたのは、ここで竜王と協力することです。これで...正しい手順になります。」
「あ...そうかよ。本当に参謀様には敵わねーわ。好きにしろ。後で大変なことになったら...」
「大変なことになるのは避けられません。しかし、この手順もまた重要なのです。」
「じゃ、こっちからは言うことはないや。」
「で?取引というのは何かの引き換えになるんじゃ...お前が差し出せるもんは何なのじゃ?」とサトラは相手を見て質問した。
「代わりに尊敬するお方に逢わせます。」
「その尊敬するお方ってのは誰なんじゃ?」
「それは...竜王の私でも分かりません。私たちはただ与えられた任務を遂行するようにというご命令をいただいただけでした。」
「なんじゃ...取引にならねーじゃん。」
「そのお方の居場所が分かるとすれば、さっき言った竜王の中で一番地位が高いと思われる【捌号】から探さないと…
手がかりはその人が持っているとあなたなら...分かるですよね?」とここで男性は白城の方を見た。
「分かりました。」
「そんな簡単に引き受けて大丈夫なのか?」
「はい。これもまた大事な手順の一つですので...
しかし、私は今外せない用事があるので、代わりに...」と白城は今度サトラに指を指して、
「この人を差し出します。」
「あ...こう来るか。」
「分身だけをこちらの共にして、彼の警護と手伝いをよろしくおねがいします。」
「参謀様には考えがあるというなら、了解じゃ。おい...言っとくけど、俺は優しくねーぞ。素振り一つ見せたら即消すからな。」
「はい。尊敬するお方のためであれば、この命に惜しみません。」
「それはそうと...もっと試練のことについて説明してもらえますか?」とここで白城は男性に説明を求めた。
「はい。今まで完了した試練も...次の試練も...」
取引...成立?
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
「第12回ネット小説大賞」に再挑戦した結果、残念ながら通過できませんでしたが、これからも挑戦を続けます!
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
ここでその三人!
何でも分かるような感じの参謀様
そこである程度分かったようで、結局直感に頼るサトラ
さらに一般人代表のスリーヤさん
とここで現れたのはあの竜王!?
ここで出逢わせてしまいました。
これで協力関係になるのか?
竜王の試練はどうなるのか?
8号は何者なのか!
尊敬するお方は何者なのか!
次の試練は?
謎がいっぺんに来ましたね。
どうなるのか...
そ、れ、は...
もうどうなるかそれは次回の楽しみとしか言いません!
乞うご期待!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://ncode.syosetu.com/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。




