英雄王の追憶~渇望~
英雄王が溢した...弱音
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再会を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
「我は...正しかったのか?」
それは、寝台の上で横になった我の口からこぼれた...生涯で一回だけの【弱音】
「何をおっしゃったのですか?兄上はいつも正しいに決まっております!いいえ、兄上は【正義】そのもの!
神から真の王のみに授かったその正義を示した兄上は英雄の中の英雄!兄上が正しいと思えば、それは神様のご意志...正しくないはずじゃありません!」
「このようなことを言い切れたのはこの世界にたった一人...君だ...ラク。」
「とんでもありません!この世界の全ての者に兄上の正義が知り渡ります。」
「はは...もう良いのだ...この弱き老体にそこまで激励の言葉を言わなくても...」
「冗談はよしてください!あなたはまだまだこの国の王です。王として...この世界の英雄として...やるべきことを果たしたまでです。例え残酷な結果になったとしてもそれは正しくないということにはなりません。」
王としてか...
我が誇るべきなのは、
国のため...
民のため...
そして、正義のために全てを捧げる覚悟だ。
それは王としての責務...我はそれを果たした。
しかし...それは果たして何の意味がある?
我は所詮...普通の人間
今になっては何の力もない...ただの老いぼれ...
「兄上の英雄譚は永遠に語り継がれるでしょう...法の守りし者にして!世界の悪に勝利した英雄として!」
「我は自分の愛する者を取り返すために大勢の仲間の命を犠牲にした...その上にその愛する者まで犠牲にした...これは英雄として語り継がれるべきことだろうか?」
「大義を成すために犠牲は避けられません。義姉上のときも...兄上が義姉上のことを信頼したからこそ、その儀式に挑ませたじゃありませんか...私としては二人がその形で最後の別れになったのはとても...残念で仕方ありません...が、これもまた神様のご意志...運命だと思います!」
我が信じて貫いた正義はこの結末...
それでも、崇高なる神に疑いの曇りはなかった。
運命だと我も思った。
この体になっては初めて感じた。
いいえ...
あのときの啓示に従い、魔王を打ち勝った瞬間からわずかだが、このような思いをすると感じた。
あ...我は、大したことをやり遂げていないと。
この世に残せるのは我の英雄譚だけ...
「我の全てを捨てるまで行ってきたこと...それは正義のためだ。
我のこの肉体はこの世から消えてなくなっても...
我の行い...我の正義は永遠に...」
...
!?
違う!
我が成し遂げた大義には...もっと...もっとあの大戦が比べものにならない何か...
我はただその巨大の何かの発端だけかもしれない...
そうだ...
そういうことですか...神よ!!!
「次に...暗黒時代が訪れるときには我はもういない...しかし!何者かが我の正義を受け継ぐ!そして、この世界を正す!我が成し遂げなかったことはその者に託すしかない!」
「突然どうかしましたか?兄上?」
我はラク...我が弟ラクシュマナの目を真剣に見つめて力を込めた手をラクの腕を掴み、こう言った。
「必ず...必ずだ!必ず現れる!
そうじゃなければ...我が行ってきた全てには...
大義も...その意義も...その意味も...
なくなって...し...ま...い...」
我は衰弱した体で必死に訴えかけた結果はこの様か...
最後まで伝えたいことが言えずに、力が尽きた。
目を閉じたまま、聞こえたのはラクの声だった。
「あなたがここまでやり遂げたこと...決して無駄じゃありません。ちゃんと受け継がれます...あのときが訪れたら...またご一緒にできるなら...そのときはお供いたします...」
とラクの足音が遠さげていくが、声はまだ聞こえた。
「兄上...あなたに従えて光栄至福です。
今はお体をご無理せず...
よくお眠りください...王よ。」
...
ありがとう...ラク...
その感謝の言葉を言おうとしたとき、我はもう分かった。
...
体が重い...思うように動けない。
瞼を開ける力さえも残らなかった...
あ...これは...我の最期なのか...
これでいい...
我が成し遂げた正義を受け継ぐ者が必ず現れる...
これもまた我が信じて貫いた正義のためだ。
...
しかし...
いざ最期のときが訪れると...
自分の最期がいつか分かるならば...もう一度君に会って、お話しがしたかった...
シーター
我のことを憎んでいるのか?
我のことを軽蔑するのか?
その答えが聞けないまま、この世を去るのは唯一の心残りかもしれない。
今君はどこにいるのだろう...
そこは天なのか...奈落なのか...それとも...
それはどうだっていい...
我は...今まで聞けなかったことを君に問いたい...
君は...幸せなのか...と
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
「第12回ネット小説大賞」に再挑戦した結果、残念ながら通過できませんでしたが、これからも挑戦を続けます!
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
英雄王の弱音...
今まで正義を貫いてきた英雄がこぼした言葉...
それを完全肯定するラクシュマナ...その敬愛っぷりは最後までブレませんね。
英雄王でも弱音の一つぐらいがあるし、それを吐き出したときはちゃんと相手がいると心強い...特に信頼できる相手にはなおさらですね。
それでも自分が信じた正義に迷いがないのもいいところでもあるかと思います。
なんか最期とか本人が言っていましたが、本当に最期なのか分かりませんよ。
作者でもこのような体験がないので断言できませんし...
とりあえずお疲れ様でした!(また登場させるかもしれませんが、そのときはそのときで)
最後にシーターに問いたいことも...答えが聞けたらいいですね。
ってこれは本編と繋がっている?w
でも、たまにはこっちの追憶シリーズにするのも現代のキャラクターに何か感じるとか思うところがあれば幸いです。
さて...今年の最後の更新になります。
気づいたら、英雄王の追憶...最後に書いたのも一年前です。早いですね。
来年もよろしくお願いします!
一体物語はどうなっていくか!
そ、れ、は...
もうどうなるかそれは次回の楽しみとしか言いません!
乞うご期待!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://ncode.syosetu.com/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。




