邂逅(竜王達)
ただの歓談...のはずだった
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再会を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
蘭華と巨漢がまだオカヤマのある愛のホテルに向かう前のその夜に遡る。
駅から近い繁華街の中にある居酒屋の中に二人の男性が座っている。
片方はラフな格好に対して、片方の男性はきっちりスーツの姿をしている。
顔立ちなどの外見からにしては日本の居酒屋を堪能してみたい海外の観光客にも見えるが...
二人の口から出てきた流暢な日本語が聞こえる人にはさらに疑問が浮かんでくる。
「ここの料理...本当に美味しかったね、弐号。」と言ってから片手に持っている生ビールのジョッキを飲んだ。
「さすがコスパの評価が高い店だ。特にここの名物...【ままかり】と海鮮系がとても新鮮で美味しい。」
「この魚...初めて食べた。この辺の名物なのか?」
「まま...この辺ではご飯という意味で、隣の家からご飯が借りたくなるぐらいの美味しさでこの名前になったらしいよ。実際の魚の名前はサッパだけどね。」
「さすが弐号!何でも知っているね。」と言った男性はそのままかりを箸で上手に取り、口に運んだ。
「いいえいいえ...スマホですぐに検索できる今の時代では、こんな私は何でも知っているとは呼ばないよ。」
「それでも、取り纏め役のあなたなら、様々な情報を握っているに違いないはず。だから、ここでいろんなことが聞きたい。もちろんこっちの情報も伝えるつもりだ。」
「じゃ...君から話してもらおうか...」と言って、日本酒のお猪口を一口飲んだ弐号と呼ばれた人は少し真面目なトーンで相手が話しをする目で見つめた。
「あ...そうね。」と少し戸惑いの表情を見せた相手は一旦頭を整理して、話し始めた。
「魔王の末裔と自称しているラヴァン家の目的はあなたも知っているかと思うが...主に3つに分かれる。
一、魔王の復活
二、ラーマの血筋の殲滅
そして、三...ある人物への復讐だ。
私が関わるのは、一の方だけで...それ以外には例え家族でも詳細が聞かされていない。」
「君はラヴァン家での立ち位置としてはどうなっているの?」
「私は...三人兄妹のラヴァン家の次男として生まれた。長男は誰か分かっているでしょう。」
「あ...最近来日したクリケットのスター選手、ヴィシュワ・ラヴァンだね。」
「そう...兄様...あ、」
「ここで自分の存在を否定する必要もないよ...いつもの呼び方でいい...陸号。」
「はい...兄様のヴィシュワは今のラヴァン家の家長だ。彼が稼いだお金はクリケットの普及とは別に、ラヴァン家の目的を達成するために使われる。僕は次男だと言ったが、腹違いなんだ。だから、私は本当の母と義父と一緒に子供の頃から日本に来た。」
「ということは...一番の権力を持っている長男と違って、君はお兄さんの配下になったわけか...」
「そうとも言える。おかげで自分の竜王としての責務が支障なく遂行できた。そして、ある程度情報を持っている。」
「それにしても魔王の復活という目的はあまりにも規模が大きすぎて、核心が分からないな。
ラヴァン家は魔王を復活させて、何をするつもりなんだ。第一...すでに復活したし...」
「ただの復活じゃない...真なる魔王への復活だ。」
「真なる魔王...それもまた曖昧だな。具体的に何をするつもりなんだい?」
「詳しいことは分からないが、第二目的のターゲット...ラーマの血筋と関係があると聞いたよ。」
「ラーマの血筋?かつて対立した魔王と英雄を会わせたり...戦わせたり...するのか?」
「そこまでは分からない。今私が知っているのは、兄様はラーマの血筋に接触するつもり...もしかしたら、今はすでに...」
「そうか...気になる点はいくつかあるけど、その結果は待っていることにしよう...報告を待っているよ。」
「分かりました!私が知っているのはこれぐらいだ。もっと何か分かればよかったのに...」
「気にするな。私たちの目的は竜王の試練を復活した魔王に与えることだ。
それに邪魔しない限り、そっちはそっちで好きにすればいい。
情報を教えてありがとうな、陸号。危ない橋を渡らせることになるが...」
「構わないよ。全ては尊敬するお方のためだ。」
「そう...そして、この世界の行方のためにも...ね」と弐号はお猪口を上げて、こう言った。
「まずはそのねぎらいで乾杯!」と陸号も持っているビールのジョッキをお猪口に軽くぶつけて、二人は一気に中身の酒を飲み干した。
「は~!任務の後の酒は美味いぜ!」
「そうね。」と返した陸号だが、何かに気になることがあるような顔をした。
「どうした?」
「すみません、弐号...結局私が最初に知りたいことに関してはまだ答えてくれないよね?
...捌号は一体何者ですか?」
「そうか...悪かった。今度は私が知っていることを言うね...」と何かをまとめようとした弐号はついに口を開けた。
「捌号は...」と話した途中、誰かの声が聞こえた。
「そこのお兄さんたち...ちょっといいですか?」
その声の主を見る二人。
そこには10代...20歳になったばかりぐらいの青年が立っている。
青年は二人と違って、この国の人間には間違いないかと思われる服装と見た目だった。
「何でしょう?」と弐号はその青年に尋ねた。
「いや...盗み聞きのつもりじゃないですけど...実は少し興味ある言葉が聞こえるので、それを確かめたいだけです。」と言われた青年の言葉に陸号は突然表情が険しくなった。
「まさか!あなた...翠猿!?」
「翠猿?ということは別の勢力か!」と聞いた弐号も警戒し始めた。
一方、警戒された相手の青年は無邪気に微笑んで、こう言った。
「安心してください...私はあなたたちの使命を邪魔する者ではありません。」
「じゃ...何者だ。」と言った陸号は相手に問いかけた。
相手の青年は少し考えごとをして、こう答えた。
「うん...こういう接触は避けるべきだと分かったのですが、まさかこの場所に巡り合うなんて...
運命...いいえ、【尊敬するお方】のお導きと言わざるを得ないですね...
ね?
弐号...
陸号...
我の同胞よ...」と。
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
このような作者ですが、また今月から「第12回ネット小説大賞」に再挑戦しています。
今後ともよろしくお願いいたします!
今回はしばらく出ていない竜王の二人が登場!
さらに今回はグループチャットではなく、対面で酒!
ままかりは美味しそうですね...食べてみたいな...
前に岡山に行ったのはいつだろう...そのときはこれが名物だと知らなかったな...
きびだんごしか買っていないw
そして、明かされたラヴァン家のこと...そして、陸号の立ち位置...
ラヴァン家の者であり、竜王の一員であるこのキャラクターは中々二重スパイっぽいですね。
とここで、謎の捌号の話しをすると...その青年が登場しました。
一体誰だろう...
皆さんは誰だと思いますか?(丸投げw)
そ、れ、は...
もうどうなるかそれは次回の楽しみとしか言いません!
乞うご期待!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://ncode.syosetu.com/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。




