業の矢先(翠猿)
翠猿...ある提案をする
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
場所は「Herb, Spice & Monkey」に変わる。
店の入り口になっているところには小さな看板が掛けられた。
看板にはオープンとクローズに書いたものであり、今はクローズの面がひっくり返る。
店内にはオーナーのスリーヤさんが誰かと話している。
その話相手は身なりがきちんと整えたスーツ姿をして一重の目と笑顔が特徴な男性である。
一方、スリーヤはあまり笑顔じゃない顔をしている。
「こうやって実際に会うのいつぶりですかね...叔父さん?」
「その呼び方をやめろ。俺はお前の叔父さんじゃないし、呼ばれる資格もない。」
「...そうですね。僕はあなたの親戚だと言っても遠い遠い遠い親戚さえもないぐらいです。でも、水に近いほどの薄さでも血が繋がっていますから...」
「...好きに呼べば良い...正直今世で会うのは初めてだからな。容姿が変わったとしても我ら猿は臭いで認識する。だからさっきは驚いた...お前はわざわざ俺のところに来るとはな。」
「ええ、お会いできて嬉しいです。」
「連絡先だけは知っているから、この前依頼した件は直接会わなくて別の人が電話に出たな。その件は感謝する。よろしくない依頼を引き受けてくれて。」
「いいえ。あの人は無事にこの国に滞在できたなら、お役に立てれば何より幸いです。」
「ねえ...そのかしこまる態度はやめてもらっていいか?」
「親戚でも遠い遠い親戚であるあなたに今世で会うのも初めてですし、今日の用件からにしてもこの態度が一番適切ではないかと思います。」
「用件?」ここでスリーヤは眉をひそめた。
「ええ」と言った男性は自分の胸ポケットから名刺を取り出して、スリーヤの前に机に置いた。
その名刺には【翠猿】という二文字が書いてある。
「翠猿トレーディング有限会社...」
「はい。僕はその会社の代表を務めています。」
「翠猿ね...」とここで別の人の声が二人の会話に割り込んだ。
それは厨房でさっきまで話を聞くだけだった女性...綺麗な女性の姿に変身した孫・悟空だった。
それを聞いた男性は厨房の方を見て、サトラに話しかけた。
「おや?綺麗なお姉さんが何か気になることでもあるのですか?」
「隣の大国でもかなりの業績が誇る企業グループ...というのは表の顔で、稼いだ金と蓄積した権力で勢力をアジアのいろんなところの裏社会に最近伸ばしているマフィア集団...翠猿と呼ばれた輩には風の噂で耳に入ってね。
この国にも拠点を置き始めたと聞いたが、要するにお前はその頭をやっているわけか。」
「ええ...そうです。日本支部では僕が仕切らせていただいています。今はまだ伸びが遅いですので、様々な協力が得たいところでもあります。」
「協力?」と言ったスリーヤは気になる顔をした。
「いいえ...決してあなたたちにビジネスの協力をしてほしい訳ではありません。強いて言うなら、バナナジュースの店には大変興味深いビジネスモデルだと思います。うちの傘下に入って...」と言いかけた男性は背後から何かの鋭いものの先を背中に当たった。
「俺の店に手を出すと言ってみろ...不死身じゃないあんたの体にこの包丁が突き刺すことになるんじゃよ。」と言ったのはさっきまで厨房にいたサトラだった。いつの間にか男性の後ろにいた。
しかし、このような状況でも笑顔が消えない男性はただ手を上げて、
「とても残念ですが、この話はここまでにしましょう。あなたも一応同胞の僕を殺してもいい気分にならないじゃありませんか?」
「おい...余計な殺生をするな。一応元僧侶だからさ。そんなことを目の前にほっとくわけにはいかないぞ。」
「冗談だよ...冗談...全く...ユーモアが足りないね。でも、さっき言ったのはマジじゃけん。同じことを言わせるなよ。」と言ったサトラは包丁を風で厨房に戻した。
「で?ビジネスじゃなければ、何の協力をして欲しいのじゃ?」
「お二人もご存じの話...魔王の復活です。」
それを聞いた他の二人はさっきより相手の話を真剣に聞く姿勢に変わった。
「魔王が復活して、今日本のどこかにいるというのはすでにご存じかと...しかし、僕が懸念しているのは魔王自身ではなく、別の存在です。」
「というと?」
「魔王の末裔と自ら名乗った...【ラヴァン家】という人たちです。いや...人というのは違いますね...羅刹の生き残りです。」
「一応話は聞いたことがある。実際こいつは戦っていたしな。俺より詳しいと思う。」と言ったスリーヤの目はサトラの方に向けた。
「まあ...手合わせ程度であまり情報が得られなかったけど、普段では手には入れない不思議な力が宿る武器を使っているところから中々手強い相手なのじゃ。まあ...俺には絶対負けないけどな。」
「そうです。羅刹たちは何を企んでいるのか正直はっきり分かりませんが、いいことではないのは確実です。
だから、ここで僕から一つの提案がしたいと思います。」
「その提案とは...」
「...ラヴァン家との全面戦争...あの古の大戦の再来です。」
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
ランカちゃんの話にすると言いましたが、別の物語が進行してしまいました。
店に現れた男性...オーナーのスリーヤとサトラにはどのような関係でしょう...前の追憶シリーズを読んだ方はなんとか推測できるではないかと思います。
さらに大国のマフィアって...なんかヤバい臭いがぷんぷんしますね。
そして、その提案の内容もまたとんでもない話になりました。
一体どうなるのか...はお楽しみに!
来週は何を書くか...分かりません!(おいおい)
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます!
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、よしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://ncode.syosetu.com/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。




