サンサーラ(猿共)
猿たちの...共演
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
場所は「Herb, Spice & Monkey」
店の入り口である扉はまだ仮設のままで完全に修理できていないが、とりあえず営業再会することにしたここでは今日も相変わらず客が少なかった。
今のところでは客は一人だけだった。
そして、料理を食べ終わろうとした。
その客は立ち上がって、「お会計!」と声を掛けると、二階から誰かが降りてきた。
それは、この店のオーナーの中年男性であり...かつては元猿の王でもあったスリーヤさんだった。
「ランチ一人で500円ね...」
「はい...ちょうど。」
「毎度ありがとうございました。」
「ご馳走様。前に通ったときはびっくりしたよ...どうやって入り口にそんなでけー穴ができてしまうんだ?」
「あ...車が突っ込んだんだ。最近よく聞いたニュースでしょう?アクセルとブレーキの踏み間違い...的な?幸いのことに中までは入らなくて済んだけど、扉はまあ、ご覧の通りだ。」
「大変だね...でも、まだ店ができるのはよかった...ところで、いつものシェフじゃないよね。」と言われると、スリーヤが厨房の方に振り向いた。
「あ...あいつ、突然休みやがって...【自分サガシします。さがさないでクダサイ。】というふざけた紙を置いて、どこかに行ったんだ。まあ...そのあと、連絡が取れて...急用で地方に行かないといけないって言われたから、少し休暇を与えたわ。でも、戻ったら3倍ぐらい働かせてもらう。」
「そうか...面白いやつだな。大事にならなくてよかった。で?...そのシェフの代わりに厨房に立っている綺麗な姉さんは誰なんだよ?」とスリーヤしか聞こえないようにボソボソ言って、その客の視線は厨房の方に向けている。
そこには、白い肌とまとまった長い黒髪の若い女性の姿が立っている。
そのエプロンの可憐な姿は厨房とは中々ミスマッチに目立っている。
その女性は客の視線を感じ取ったのか優しい笑みを送った。
それを見た客も中々ドキドキとした様子を見せた。
「凄く綺麗じゃないか!いつものバイトの子は素朴で可愛いけど、これはまた違う...こう...厨房の女神様みたいだ。誰なの?というかなんでこんな美人を接客じゃなくて料理を作る方にさせた!?」という客の興奮具合を見て、スリーヤは少し苦笑いをして、応えた。
「まあ...古い友人...の...親戚みたいなもんだ。休んだあいつの代わりに料理を担当させるだけだ。こういう見た目で料理もプロ並みだ。というか資格を持っている、一応ね。」
「へ...すごいなそれ。料理の腕もいいし、一層...ここで働かせば?客が喜ぶぞ。看板娘?というか美人女神シェフ!華麗なる降臨!カレーだけに...ははっ」というダジャレを聞いたスリーヤはそれをスルーした。
「だめだ。この子も普通の仕事がある。あくまで臨時でヘルプで要請しただけ。あと...こう見えて」とまだ話の途中で厨房からその女性から声が聞こえた。
「あらまあ...美人女神シェフ...そんな褒め言葉、ありがとうございましたわ...」という言葉と一緒に可愛いウインクを送った。その攻撃を受けた客は自分の心臓が止まるかと思って、自分の胸を手を当てた。
「おじさん...キュンとしちゃったよ。ありがとうね、姉ちゃん!また食べに来るから、また会えることを楽しみにしているわ。じゃ、本当にご馳走様!」と満面な笑みを浮かべて、店を出た客。
「毎度...」という言葉を送って、ちゃんと客がいないことを確認したスリーヤはやれやれという顔をした。そこで厨房にいる綺麗な女性がスリーヤにこう言った。
「お客さんの言う通りじゃ。よく考えてみると、なんで俺が厨房担当なんだよ。こんな綺麗な女に...」
「お前な...接客とかさせたら、いろんな意味で大変なことになりそうだからに決まっているだろうが」
「見ろよ。俺の見事な変身ぷり!最近雑誌で見かけた美人特集からまとめて、この姿にしてみたのじゃ。どの角度を見ても綺麗でしょう?まあ...いつもの可愛い女の子の姿でもいいと思ったけどじゃな。」
「いや...この国では幼女に労働をさせるなという法律があるから。さすがにそれはマズい。お前も知っているはずだ。一応お前も経営者じゃないか。」
「まあ...ね。」
「中身は何千年生きてきた猿だと分かったら、普通の人間はどれだけ驚くだろう。」
「大丈夫...伊達に変身の達人をやっていないのじゃ。どんなキャラでも演じ切る自信がある!」というさっきの可憐の姿と裏腹に年寄り感が見えてきたその女性はドヤ顔をしている。
「それは助かる...正直それなら一般的に男性に変身することもできるじゃないかと思わなくもないが...」
「それじゃ...つまらないのじゃ!長く生き続けた俺には刺激が必要なのだ!ちやほやもされたい!」
「あ、そう...まあいいや。好きにしろ...ちなみに昨夜話したラームくんの件は?」と話題を変えたスリーヤ。それを聞いた女性は自信満々の顔でこう応えた。
「あ...今のところは大丈夫だ。旦那とあの弟くん両方はね。一応俺の分身をつけておいたから、何があればすぐ知らせが来る。今でも風で居場所を特定することもできるぞ。」
「そうか...それでいい。」と言ったスリーヤは少し黙っていて、次の言葉を口にした。
「お前はどう思う?」
「何が?」
「ラームくんは本当に...かつて我らの主の血筋に間違いないのか?」という質問に対して、女性は何かを言おうとしたそのとき、仮設の入り口に誰かが入ってきた。
自動的に接客モードに切り替わったスリーヤは「いらっしゃいませ!」と言って、入ってきた客の顔を見た。
すると、その自動モードが停止し、驚愕の顔に変わった。
「お前...」
「...久しぶりです。」
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
魔王と蘭華ちゃんの話でもなく、ラームたちの話でもない!まさかの猿の2人が登場!
この2人が同話に登場させるのも初めてですね。作者もびっくり!
知り合いでやりとりもしたのは分かったが、どんな感じで絡ませるかと考えたら、こうなりました笑
インド料理屋さんに行ったことある方には作者と同じく、料理人は男性だという先入観を持っていると思います。
そこに綺麗な女性を立たせてみたらどんな感じになるかという試みです。
中々目掛けない光景ですね。
その綺麗な女性の正体は誰だろう(秒でバレるわ!)
変身できるという設定って便利ですね。
そして、店に入ってきた者はいったいっ!誰だ!(また伏線を落としちゃった。すみません)
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://ncode.syosetu.com/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。




