サンサーラ(鬼と鷹)
鬼と鷹の因縁...クリームソーダとホットサンド添え
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
鬼無町にある純喫茶【桃太郎】
コーヒーの香りが漂う店の中...静かな雰囲気を楽しんでいる客は今一人になった。
さっきまでは会話をした相手はすでに店を出たからだ。
店に残った一人の男性、自ら白鬼と名乗った彼はお代わりで注文したクリームソーダを見つめながら、何かを考え込む顔をしている。
それを見た純喫茶の店長は相手を見ずに目の前にある作業を進めて、こう言った。
「これでいいですか?」
それを聞いた男もまたアイスが少し溶けているクリームソーダのガラスを見つめて、こう応えた。
「何のことでしょう?」
「彼にいろいろ教えた割に...肝心なところを言っていませんよね。」
「あ...その話ですか?いずれその真実を知るときが必ず訪れますから...まずは彼と彼の血筋の使命を気付かせることは最優先です。私は知っていますから...」とそこでようやく細長いスプーンでアイスをすくって、口に運んだ。
「あなたが良ければそれで構いません...そう言えばさっきの電話はお嬢様にですね。」という店長の言葉が聞こえた白肌の男はストローでメロンソーダを吸うことを一旦止めた。そして、少し笑みを浮かべた。
「ああ...久々ですね。あの子に連絡したのは...」
「わざとこちらの方向に向かわせるとは、これもあなたが見た未来の通りですか?」
「まさか...これは私の使命である同時に、見えてしまった未来を少し変えてみたい気持ちが入っている結果の行動です。結果的には未来を大きく変えることができませんが、ちょっとした小細工でも何かが影響するのは確かです。」
「あなたなりの...抗いということですね。お嬢様を巻き込むのは...もともと避けられないことか。」
「そうです...この筋書きでは彼女は中心として物語が運ばれるので、もう私とか誰がどうもこうもする話ではなくなりました。そのために彼女をずっと見守ってきたのです。あの方との約束を果たすため...でもあります。」
「なら...せめてあなたが思うようになれるといいですね。」とここで店長は男の前に何かを置いた。
それは香ばしいトーストの間にハムとチーズが挟まれたサンドイッチ、ホットサンドだった。
「はい。お待ち。」と言って、店長は少し離れたところに座り、テレビを付けた。
テレビではニュース番組が流れている。
司会の方と何人かの評論家らしき人物がある話題について議論しているみたいだ。
「あれは間違いなく今まで見たことがない生物の仕業です!」
「しかし...発表によると、盤石の中にある空洞でガスが溜まり、限界に達したことで爆発が起きたということになっています。」
「では...目撃者が見たのはなんですか?ただの石が飛んだとかには見えませんよ。」という議論がヒートアップしたそのとき、男はホットサンドを完食した。
「ご馳走様でした。は...本当に来た甲斐がありましたね、ここのクリームソーダは...」
「まいど...サンドイッチも絶品だと言ってください。」と顔慣れの客に少しの文句を言いながら、会計をしている。
「私たちも気づいたら付き合いは長いですね。」とお金を払った男が言った言葉に対して、会計で釣りを準備している店長はなんだか呆れた顔でこう応えた。
「それはどの時代に遡りますか?」
「お互い第一印象は最悪でしたが、こうしてまだ生き残って...また会えるとは、我が主に感謝ですね。」
「私の場合はあなたと違って、肉体じゃなくて...記憶だけが受け継がれますが...あのときは本当にまさか自分を殺した魔王の弟にあの形で会えるとは思えませんでした。これもまた【縁】というものですね。」
「そうです...あのときにあなたが桃太郎と同行しなければ、今はこうしてあなたが作ったクリームソーダを食べることなんて...」と言った男はなんだか懐かしそうで嬉しそうな顔を見せた。
「では...また...元鳥の王...ジャターユ。」と言った白鬼は、店の扉を開けて、出て行ってしまった。
そして、彼はこう考えた。
私は自分の居場所に戻ることにします。そう...桃太郎が私のために用意してくれた【鬼ヶ島】に...
そして、待つのです。
次に来る未来...私を待ち構えた運命を...
さてと...何かが変わるだろう。
楽しみです...
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ついに第3章開始!先週はお休みになってすみません。
おかげで第3章の構想はあるところまでできました!
そこで第3章の幕開けにはどうするかと考えたところ、ここであの白鬼を登場させ、さらに店長のこともパーっとカミングアウトしようじゃないかと思い、こうなりました。
これで次の旅の目的地が明らかになる(はず)!
まあ、簡単に到着させる気はありませんが
未来が見える者の自分なりに抗い方とはどのように物語に影響するだろう(それは作者次第というものです笑)
しかし、これもまた面白い組み合わせになりましたね。実際の物語では出会うはずのない2人はこうして会いました。
これはまさに創作のいいところですね。
ぜひ登場人物のこれからの動向を注目していただければと思います。
ああ、ホットサンド食べたくなりました。
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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