英雄王の追憶~兄弟喧嘩~
王子二人の...初めての喧嘩
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「魔王ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
これで...良かった。
我は真の正義を貫き、魔王の封印に成功した。
これで...崇高なる我が神様から頂いた天啓の実現を果たし、この世界の未来は安寧に違いない。
そう...これで良かったんだ。
我の愛するシーターともまた一緒になれて、亡き父上が残した王位に継ぐことができた。
これからのこの国...そして、我の人生には悔いも残らない。
そう...これで...
と外の満面のお月様を眺めながら思った我の後ろに突然扉が開けられた音がした。
それからは何者かの足音は我に近づいてきた。
「ここにいらっしゃいましたか、兄上。」という言葉を聞いた我は振り返らずにその者にこう答えた。
「ああ...ラクか。ここから夜に包まれて、月明かりに照らされた私たちの王国は中々絶景だと思わないか?」と相手に意見を聞くかのような言い方にしたが、その相手のラクはそれに応えてくれなかった。代わりにラクは別の質問を言葉にした。
「本当にこれで良かったでしょうか?」
「...何のことかな?」
「誤魔化さなくてもいいのです。一緒に大戦争で戦ってきた兄上と私ですから、兄上の嘘はすぐに分かります。今ここで月を眺めることだって、悩みがあるときの癖は子供の時から変わりませんし...」という言葉を聞いて、我は少しため息をついてから、振り向いた。
ラクの表情はいつもより険しかった。
「さすがラク...全部お見通しということなんて...」
「兄上...ここまで来て、ハッキリ言わせていただきます。義姉上のあの馬鹿げた儀式は取りやめるべきです。」
それを聞いた我は、なぜか嬉しいような笑顔を浮かべ、ラクにこう応えた。
「珍しいね...ラクが私に意見を申すのは...いいえ、初めてだね。」
「兄上を尊敬する私だからこそ、こんなことは止めるべきだと思って、失礼だと分かりながらどうかお許しください。」
頭を下げたラクを見た我は彼の一番聞きたくない言葉を言った。
「それはできない...」
「なぜです!兄上は義姉上のことをこの世界の誰よりも愛しています。義姉上の兄上への愛を分かっているはずです。なぜその愛を証明することまでしなければなりませんのか私にはどうしても納得できません。」
「私の気持ちを代弁してくれてありがとう...私とシーターのお互いへの愛は揺らぐことなんてありません。彼女を奪還すると決めた日のさらなる前から確信しています。」
「では...なぜ...」
「王になる私は、国民からの信頼を得なければなりません。これはこの国を左右するほどのことです。民を思う良き王であるために...国民が抱えている疑惑を払拭しなければなりません。そのためには例え愛する者に対して、儀式を行うこともまた避けられないことです。」と説明したが、ラクの目には納得したという表情が示されていなかった。
「重々理解しております。ですが...あまりにも義姉上にとっては残酷すぎます!ただでさえ長年あの忌々しい魔王に攫われたにも関わらず、今度は貞操が疑われるなんて...あまりにも理不尽です。兄上!どうか...もう一度お考え直しを!」と自分の気持ちをここまで訴えたラクを見て、我は少し驚いた。
ラクはいつも我の意見も命令も忠実に疑いもなく従ってくれた。
ここまで意見が対立しているのは初めてだ。
これはまるでそう...平民たちの兄弟喧嘩のようだ。
王族では味わうことのない悲しくて、寂しかったこの気持ちはまさに今我が味わっている。
ラク...本当に君は我の弟であって、心から天に感謝している。
だが...
「大丈夫だ。これもまた天啓...天が私をもう一度試しているんだ。ここで自分を曲げたら、私は王として失格になるだろう。第一...シーターがこの儀式に挑んでも問題は起こらないはずだ。心配する必要は何一つもない。私は自分の妻を信じている。」と言いながら、自分の覚悟が満ちている眼差しをラクに見せた。それを見たラクはさっきまで納得しないその目はもう消えた。
「そう...ですね。私たちが義姉上を信じないでどうする。さすが我が王!我が兄上!民のことも自分の妻も全て考えておられるのですね。私...どうかしていました。どうかこんな愚弟をお許しください!」
「そんなに謝らなくても良い。私とシーターを何より大事に思っている君がそばにいてくれたこと...逆に感謝しきれないほどだ。ありがとうね。」
「そんな勿体無いお言葉!」
「よせよ、ラク。私たち兄弟の絆は強い。今ここで証明されたということだ。」
「はっ!」
「では、私もそろそろ休むことにするから、ラクも早く自分の妻のそばに行ってやれ。留守のときに長年眠りについて、二人の時間が過ごせなかったからな。お互い...今を大事にしよう。」
「はい!かしこまりました!では、失礼します!」と言ったラクは部屋から去って行った。
それから我はまた月を眺めて、考えた。
そう...真の正義を貫くために、例え孤独な道を歩もうとしても我は証明してみせる!
我こそが【正義】そのものであるということを...
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ヨシ!兄弟の水入らずの会話を楽しむときが来た!と思ったら、別の兄弟の会話になりました。笑
追憶シリーズになりました。
こんな感じにした方はもっと深みがあるではないかと...いかがですか?
英雄王と彼を敬愛する第三王子の初めて意見が対立して、これは兄弟喧嘩だと言えるのでしょうか?
前回も兄弟のことを話しましたが、兄弟を持っている方は誰しも経験するかと思います。些細なことでも喧嘩になってしまう。しかし、その中にはもう取り戻せない喧嘩もあったり、大人になっても後悔することもあるかもしれません。
そうなる前に...仲直りしましょう。と作者は思います。
二つの時代の兄弟が何らかの方法で繋げてみた結果、こんな感じになりました。
英雄王の決断...第三王子の反対...その馬鹿げた儀式とは...
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
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毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は新作も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
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