表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/218

羅刹の王国(ランカ島)

古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍(ラクシャーサラージャ)「ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...もしこの物語は運命によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか。


時は現代日本、ある女子大学生「椎谷(しいたに)蘭華(ランカ)」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車が再び動き出す...前の【先日譚】である...


運命は抗えずに同じことが繰り返す...そのようなこと、誰が言った?


断じて認めぬ!なってたまるか!


どれだけ運命に抗おうとしても...


例え神と戦うことになっても...



余は愛する人、「シーター」を幸せにする!

某大学の食堂の中、2人の女子の会話はまだ続いている。


「え?」と小さな驚きの声を漏らしてしまったのは蘭華(ランカ)の友達である香蓮(カレン)だった。


「スリランカ?...ランカ島?」という蘭華の答えから出たキーワードをうまく脳内で処理できていない|香蓮。蘭華とは違い、香蓮は南アジアに関する知識は一般の知識プラス蘭華に吹き込まれた知識しかないため、キーワードで分かることと分からないことを比較すると、断然...分からないことの方が多くある。

たぶん他の人に同じキーワードを話しても、あ...分かる分かる~という反応をする人はほぼいないだろう。残念ながら、これは蘭華と香蓮の一番合わない話題である。


と...その香蓮の疑問が込めた言葉を完全無視して、逆にそれが分からない人に自分が知っていることを教えることが大好きな癖を持つ蘭華であり、だからこそまだこの二人の関係性が絶妙に保てる要因とも言えるだろう。香蓮のハテナが付いている顔に蘭華はさらに説明を追加した。


「あ!ランカ島はね!「ラーマーヤナ」の物語に存在する島で、羅刹(ラクシャーサ)の王が築いた国なんだよ。拐われたシーター妃を取り戻すためにラーマ王子は配下の軍勢と共に敵の本拠地であるランカ島まで行進した目的地になっているんだ。そして!ランカ島は実際にどこにあるのかといういろいろな諸説の中で一番有力な説は…なんと!今のスリランカはそのランカ島ではないかという話はすごく興味深いでしょう?ね?スリランカはインド半島から少し離れた島国だから、位置としては合っていると思わない?」と目がキラキラしてノンストップで説明した蘭華のそのキラキラとした目から放たれた目力を避けながら、香蓮は冷静に対応した。


「あ...分かった...ご説明ど~も。頭を整理するから、あんたは一回落ち着いてくれる?」

ここで怒ったり話を聞かなかったりするのはしない香蓮もさすがに対処法は分かって、付き合いが長い証だなとも見える。


「つまり...あの...ラクシャーサ?という魔物たちが住んでいるとされた島は今のスリランカということだよね?日本でいうと鬼ヶ島みたいに?」


「そうそう!さすが香蓮ちゃんは話について行くのが早いね~」


誰のせいだと思っているのよと心の中に思い止め、相手の顔を見ながらまたため息をついた香蓮だった。


「...で?じゃ、なんで今回の目的地はあの鬼ヶ島みたいなところなのよ。前の目的地は確かに、王子様と姫様が結婚した場所でしょう?もっと興味がありそうな別の場所は他にあるじゃない?」という香蓮の質問は起爆剤みたいに蘭華の心の火が付いたみたいに次々と説明した。


「ふふん...いい質問だよ、香蓮ちゃん!私が思うには今のスリランカ、つまりランカ島の中にはまだ究明されていない謎はあるんだよ...いいかい?羅刹たちが住んでいるとされた島ということは桃太郎伝説みたいに金銀財宝が眠っているかもしれないし、もっと言うと...そこに羅刹という異世界とかでいうと【亜人】がいたとすれば、今はどうしたのかという謎もある。例えば、人間の世界に溶け込んで、その子孫はまだそこにいたりして...こういう話ってロマンがあるよね~香蓮ちゃんもそう思わない?」という説明に対して、何かが悟ったような顔で香蓮は蘭華を見て、次に問いかけた。


「...まさかだと思うけど、スリランカ(あそこ)に行ったら、いい研究論文が書けそうの話って...まさかこの話をテーマにするとかじゃないわよ...ね?」と香蓮の鋭い眼差しがまさに蘭華にクリティカルヒット級に的中した。


「さすが香蓮ちゃん!やはり私の考えが読めたね~いや...その通りだよ!これで何かのうってつけの研究テーマが手にいれば...と?」とまだ話の途中の蘭華だったが、先に香蓮の忍耐度メーターが頂点に達してしまったようで、怖い顔で蘭華のほっぺを両手でつねた。


「あ・ん・た...ね...今までは何で卒業できていないのか忘れたの?あんたはいろんな旅をして、手にした成果は神話とか物語とかと関係するから、仮説が検証できる決定的な証拠とかはないから...論文にしては向いていないからよ。あまり残されていない時間にまたヒントを手に入れても研究テーマとしては難しいわよ!分かった?」


「え~痛いよ~香蓮ちゃん...でも...」

「でもじゃないわよ!ここはまず現実を見て、大学を卒業することは最優先だと考えるべきよ。研究とか旅行とかはまず社会人になってから、それが実現できる財力と職が確保できないとそれもそれできついよ。あんたのことが心配なんだから...」と怒りが悲しみに変化し、泣きそうな顔になっている香蓮。


「今のままだと...大変なことになる前に...友達として忠告しておきたいの。」


香蓮は単に怒ったわけじゃなく、目の前にいる友達が心配しているからこそ怒っている。

自分も大学を卒業して普通の会社で就職して、社会人4年目だが...やはり経済的な理由で不自由になることは大学の時に思ったことと違って、無尽蔵だと思った時間も限りがあると知り、明るく見える未来もまた思った通りに上手くいかなかった。


だからこそ、友達には分かってほしい...大学を門出した後の大変さを...


その香蓮に対して、蘭華は優しく微笑んでいた。


「ありがとうね...香蓮ちゃん。私のことをいろいろ心配してくれて...」


その言葉に香蓮の涙線がさらに出崩壊しそうだった...と思ったそのとき


「でも大丈夫!今回はかなり自信があるから、必ず論文の研究テーマを持って帰るから!」と言って、無邪気なスマイルを香蓮に送った。それを見た香蓮は...もう話す言葉が残らないようにまたため息をついて、呆れた顔で蘭華を見つめた。


「は...分かった。もう...何も言わないから、気を付けて帰ってきて。」


「うん!」という一言の返事は、やはり蘭華(この子)は変わらないね...私の方が変わりすぎたのかしらとふっと思ってしまった香蓮であった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。


日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。


いよいよスリランカの話が出てきますね。現在のご時世の影響で実際は行けなかったが、ぜひ検索してどんな場所か分かれば幸いです。


もしお気に入りやご興味があれば、「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も受け付けます。


毎日更新とはお約束できませんが、更新をできるだけ頻繁に続けますので、お楽しみください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ