羅刹羅闍の追憶~後悔~
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹王「ラーヴァナ」との戦の末、羅刹王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした...もしこの物語は運命によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか。
運命は抗えずに同じことが繰り返す...そのようなこと、誰が言った?
断じて認めぬ!なってたまるか!
どれだけ運命に抗っても...
例え神と戦うことになっても...
余は愛する人を幸せにする!
これは負け戦である...
「...様!完全に突破されました!」
僅かな記憶の中には紅く炎に包まれた。
宮殿の外から轟く戦の音...
金属がぶつかり合い命と命、魂と魂がぶつかり合う戦の響き渡る音と声の中に誰かの声が聞こえた。
「チクショウ!猿どもめ!もうここまで来たか!」
うろ覚えの記憶でもあったが、
その虚ろのように思える曖昧な記憶に深く刻まれたのは複数の感情の欠片が残っていた。
「人間への憎しみ」
「余(自分)への失望」
そして...「愛する我が君への哀しみ」
これは負け戦である。
そして、我ら敗者は「悪」という烙印に押され、永遠に語り継がれるだろう...
そのような戦なんだ...
それでも最後まで余(自分)の「理想」と歪んだ「愛」のために戦う。
この国の王として余は行く、そして逝く...
羅刹羅闍の名の下に...
我が同胞...
我が兄弟...
我が家族...
どうか余のことを許してほしい。
命までかけて、戦いの果てに命を落としてきた
この愚かの王のために...
どうか...
許してほしい...
気が付くと...覚めたくない夢から起きたような感覚に襲われた...
何だろう?この感覚
懐かしい夢を見た気がするが、遠い昔のような夢...
鉛のような重たい瞼を開けて周りを見渡す限り、暗闇の中が続いている。
どうやら余が閉じ込められたであろうとそのようなことが徐々に脳内で理解した。
今覚めたばかりの意識と共に取り戻すつつであった...
ついに実感できた自分の状態は
体に刻まれた傷跡、
胸に刺された...一本の...矢?だろうか...
痛みは感じない
そして余でも行方がわからなかった余の心...
否、残っていないではなく...残っているのは胸の中の心があった空っぽの穴...
心臓と定義した方が適切かもしれない...
この場所にいるのはいつからかわからない。
暗闇の中に上の方向から小さな隙間を通り抜けて照らされた光...
もう...どれぐらい時間が経っただろう...
漏れてきた光に向かって、自分を「余」と呼ぶ彼はつぶやきはじめた。
「愛する我が君よ、そなたに愛してしまったのは「罪」だろうか...」
「愛する我が君よ、余が今でもこの空ろの胸の中に残っている「愛」の気持ち、そなたに届けるだろうか...」
「愛する我が君よ、いつまで余の心を苦しめるこの「罰」を解放してくれるだろうか...」
と心が残らない自分の胸の中に秘めた想いを誰かに聞かせたいようなつぶやきが止まった次の瞬間。
目の前の暗闇から隙間ができて、徐々に光が広がり、やがて光が扉のような形は映し出し、次第に塞がれたその扉が開かれた。
光が彼を包むように...
まぶしく
暖かく
その光の先に現れたのは一人の人間。
逆光から見ると少女のような姿が彼の目に映った。
そして物語が動き出した。
彼が放った言葉はある人の名前...
決して忘れられない名前
その名は...
...
...
...
「シーター」
最後までお読みいただきありがとうございました。
古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
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