レベル1
本日2回目の更新です。
【――生命反応確認】
【――新規人格形成】
【――エラーが発生しました】
【――再形成開始】
【――エラーが発生しました】
【――タイムリミットにつき、既存のまま形成します】
【――基本構築完了】
薄暗い部屋。
土壁に覆われたこの部屋を、質素と言うべきか、雑と言うべきか悩む。
木製の寝台に寝かされた少女は身動き一つしない。
肌の色は病的なほど白く、整えられた髪は漆黒の闇を連想させる。
【――開始します】
機械的な礼儀正しい声が部屋に木霊した瞬間、少女の胸が上下に動き出した。
【――呼吸確認、覚醒させます】
ドクン。
強い衝撃を感じ、目を開ければ自分が寝ていた事に気づいた。
「んだぁ……ん?アレ寝てたんだっけ?」
少女は身体を起すと、寝ぼけているようで、焦点の合わない瞳であたりを見回した。
【お名前をどうぞ】
「はっ?誰?」
【ワタシはダンジョンコアです】
「ダンジョンこあ?」
【はい。名前の登録をします。お名前をどうぞ】
少女の動きが止まる。
瞳が動いているところをみると、脳内でなにやら考えている事が分かる。
「あのさ、これってダンジョン転生?」
【転生とはなんでしょうか?】
「……なんで!?どうせなら乙女系ゲームが良かった―!!」
少女は頭を抱え、涙を浮かべている。
冷静な声が促すが、少女は戸惑うばかり。
【名前の登録をお願いします】
「名前……私の名前は、なんだっけ?」
【個別に識別させるための名です】
「名前の意味なんか聞いていないし。って言うか、なんでダンジョン系なの?私は乙女系しかやったことないし。三十路超えた女がダンジョンだなんて、どんな罰な訳?」
ブツブツと愚痴を言い始めた。
見た目は幼き少女。
しかし、本人は三十路を超えていると言っている所をみると、少女が言うように転生なのかもしれない。
「どうせなら悪役レイ嬢が良かったのに……」
少女の声が誰かに届く事はない。
誰かがいるとしたら……。
【タイムリミットにより『レイ』とします】
【知識への干渉をはじめます】
泣きそうだった少女の動きが止まる。
そして、仰向けに倒れ身体をビクビクと痙攣させ始めた。
【知識混入完了。起動を確認します】
【3、2、1。お名前をお願いします】
「私はレイ。ダンジョンマスター」
【正常起動を確認しました。マスター、御指示を】
「ダンジョンマスター……え――――――私、ダンマスになっちゃったの?」
自称三十路過ぎ女がダンジョンマスターになった瞬間だった。
ご覧いただきありがとうございます。