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話しのお直しは、時間がある時にゆっくりしています。


 私のお見舞いが終わると、お母様の今日はこれ位にしましょう、この言葉で解散になる、兄様は兄妹とはいえ、女の子の部屋は落ち着かないらしい、そそくさと出て行った。姉様はこれから行儀見習いがあるらしく何度も私を見て、心配そうな顔をして部屋から出て行く、


 最後まで残っていたのは両親で、お父様はこのまま看病すると言い、私のそばから離れないつもりらしい、お母様は優しく微笑み、私の頭を撫でて暫く寝てなさいと、私の頬やおでこにやさしく手を当て、上質な上掛けを肩まで掛けもう一度頭を優しく撫でてくれた。ミクだった時も私の母さんが看病してくれたのを思い出し、とても嬉しくて涙目になった。

 涙目の私を見たお父様は見るからに驚き、辛いのか?と私の側にきて手を握りしめる。私が大丈夫だと首を横にフルフルと振っていると、お母様はお父様の肩にポンと手を置く、


「そんな顔していても、体調も良くなりませんよ、体調が落ち着いたらお話なさればいいと思います。」


「そ・・・そうだね、体調が落ち着いたら沢山ハグしよう!」


「・・・お父様治ったら・・・沢山お話しましょう」


 お父様は頷くと私の手をギュッと握る、

 なかなかベッド脇から離れようとしないお父様を、苦笑いのお母様が背中を押して連れて行く、

 お父様は名残惜しそうな顔をしていたが、

 私は連れ出されるお父様に小さく手を振ると、お父様はとても嬉しそうに手を振り出ていった。


 家族が居なくなり、私はベッドの中で丸くなる、頭を何かで叩かれている様に、ガンガンと痛い、でも寒気がする訳ではないので、多分寝すぎだと感じる、

 上掛けから顔を出し、ベッドの上でゴロリと寝返りをする、上質な寝具が私の身体を受け止め身体がフワリと沈む、すると途端に眠くなる、子供は寝る事で成長すると自分に言い訳をする。


「もう少し寝るわ・・・天使様が素敵な夢を運んでくれます様に、おやすみなさい・・・」


「お嬢様・・・わかりました。天使様が素敵な夢を見せてくれます様に。ゆっくりとおやすみ下さい。」


 心配そうな顔をしたメイドは、「体調が悪くなりましたら、直ぐにベルを鳴らして下さい」と言い残すと頭を下げ出て行く、寝る前の挨拶が変だけど、そんなものだろうと感じ、私はスっと眠った。


 ◆


 ぼんやりとして目が覚めると、カーテンの向こう側は夜の闇が広がっている、あんなに痛かった頭痛は消えていて、私はベッドに座る、一度自分を見つめ直す事にした。


 今世の私の記憶だと、私は貴族で公爵家の子供に生まれ変わっていてた。

 頭の中が前世と今世で混乱しているが、今までの記憶と、前世での記憶を振り返ってみる、


 まずは前世での記憶。


 私は後藤ミク(25)として生きていたはず。

 成績、顔、スタイル共に平凡以下だと私は思っている、実際付き合った人もいない、それにそんな暇もなかったけどね・・・。


 趣味は無かったが、妹がしていた乙女ゲームを時間がある時の暇つぶしに、ポチポチと進めていた。私自身も弟の世話や家事等で、余り時間が無かった為、妹程はしていない、妹指導の中で、妹推しの王子ルートばかりしていたと記憶している、1回か2回は違うルートをした様な・・・。思い出そうと考えるとチリリと頭が痛くなる、


 家族はお母さんと私、妹2人と弟がいて、

 4人兄弟の長女、高校で人間関係に疲れてしまい、高校卒業前に母さんと相談した結果、私は家事手伝いをする事になった。


 うちの家族は俗に言うシングルマザーで、

 お母さんは私達を育てる為日々忙しく、上場企業の課長という立場だった。会議があるからと朝早くから出掛けていき、夜は残業で遅くなる、そんなお母さんにお疲れ様と言う為に、帰って来るまで起きていたりもしていた。


「ただいま・・・ミク起きていたの?今日もありがとう、とても助かります。」


「お母さんおかえりなさい。私が好きでしているからいいの、一緒にご飯食べよ」


 たまにしか出来なかったが、お母さんと夜ご飯を一緒に食べて、朝バタバタと出て行くお母さんに言えなかった事や、最近の出来事や悩み事等も話す、

 私はお母さんや妹弟の為に、掃除、洗濯、料理等もしてきた。無添加にも拘ったが、時間がある時だけしか出来なかった。


 私が下の子(主に弟)の面倒を見ていた。

 2人の妹は高校生で、よく家事等も手伝いをしてくれた。


 妹達は一卵性の双子で上の妹はクルミ、この子は乙女ゲームにドハマリして、私に一緒にやろう!と言っては、

 王太子推しで、乙女ゲームのイベントの為、日々バイトをしている。

 そんなクルミは何周も何周もしていて、買ってきたノートには、攻略対象の事がギッシリ書かれていて、それはまるで攻略本そのものだ、と下の妹が言っていた。



 下の妹ミユキは本が好きで、ミユキの部屋の本棚は本が沢山並んでいた、特に多かったのは、ラノベと呼ばれる本で、沢山読み漁っていた。

 読んでいる本の影響を受けやすく、私によく分からない事をブツブツと言っていて、いつも私はミユキの話を遠い目をして聞いていた「この左の瞳には秘密がある」とか「お辞儀はこう膝を折る」とか様々だったが、絵はとても上手かった。犬等の動物も何故そんなに上手に掛けるのか謎だった。


 弟は小学生低学年で手が掛かるのは下の弟だけ、授業参観に行ったり、泥だらけで帰って来たから、お風呂を慌てて沸かしたり、(家にはシャワーは無かった)

 オムライスに絵が欲しいと強請られ、犬を書いたら怪獣と言われたり・・・

 マサが小さな石や虫を取ってきては、夜に逃がす作業をした。

 森へ帰りなさい、と石は小さな庭に放り投げた。

 掃除してたら後ろから膝カックンされたり、トランプして負けると勝つまでやったりもした。


 一緒に笑いながら、怒ったりもした。思い出すとマサは悪ガキだな・・・と苦笑いしてしまう、


 弟が池でザリガニ取りをしたい!と私を引っ張る、その為私が付き添いで大きな池のある公園に行き、弟が深みに行っていた事に全く気付かず、弟の声でわかった程だった、池に飛び込み弟を助け出したが、強い胸の痛みから記憶が無い、


 ◆


 んー・・・私は心臓麻痺で死んだっぽい。

 それで異世界転生なんてミユキが聞いたら喜びそうだな・・・そこまで考えると次々と前世での思い出が溢れてきて、涙と鼻水が出る、


 暫く泣くと、頭を切り替える為立ち上がるが、数日寝込んだ身体はふらつき、柔らかなベッドにペタンと座り込む、それでも気分は変わらず家族の事ばかり考えてしまう、


 助け出した記憶がある、マサは助かったと思うが、あの後に自分を責めていないかな?


 クルミとミユキは好き嫌いしないで、ご飯食べてるだろうか?私がいないから家事もしてくれていると思いたい、


 お母さん・・・私が今言える事は「先に死んでごめんなさい」

 もう少しお母さんと色々な話をしたかったよ、


 私はベッドに入ると上掛けを頭から被った。そこで声を殺して泣いていた。


 コンコンとノックの音がする。私は狸寝入りをして今をやり過ごすことにした。


「失礼します。お嬢様夕食を食べて元気になって下さいね。」


「・・・ありがとうでも今・・・ごめんなさい、見せられる顔じゃないの、」


「お気になさらないで下さい、お嬢様は元気になる事だけを考えて下さい。」


 狸寝入りは出来なかったが、心配してくれている、それを聞いて私は胸が熱くなる、扉が閉まる音がして、私はゆっくりベッドから降りる。


 消化の良い夕食を取り終わると、私は姿見の前まで歩く、ミク(享年25)よりも長生きする為に、健康に気を付け、老後は猫を膝に乗せて過ごしたいと思ったから、贅沢を言うなら最後は孫に囲まれて・・・目標は長生きだな、


 姿見には布が掛けられていて、私はその布を引っ張った。

 シュルリと布が落ちる音と同時に、見た目フランス人形の様な容姿が見える、手を動かせば姿見の中の人形も動く、ビックリして頬に手を持ってきて摘んだ・・・痛い・・・、


 今の記憶を辿ると、私の歳は5歳、改めて姿見をじっくりと見る、

 色白の肌、鼻筋が通った小鼻、ふっくらとした薄紅色の唇、髪の色はプラチナブロンド、少しつり上がった瞳の色はオーキッド(薄い紫色)


「おぉー!もしかして、私ってかなりの美少女なんじゃない?」


 姿見の前で変顔しても一緒に動く事でやっと納得する、考ればあの両親(美男美女)から産まれているから、と更に納得した。決して前世のお母さんを侮辱している訳では無く、素材が違うのだと言い聞かせ頷く、


「髪はプラチナブロンドで、少しつり上がっているけど、オーキッド色した綺麗な瞳・・・」


 私はここで何故か乙女ゲームを思い出す。しかも妹がどハマりしていたゲームだった。

 頭の片隅でクルミの声がする。


 「この悪役令嬢姑息なんだよね。ヒロインの引き立て役って感じはするけどさー、

 プラチナブロンドの髪を縦巻きとか、つり上がったこの目とか見ると、ザ悪役令嬢だよねw」


 私は妹の言葉を更に思い出す、それは悪役令嬢の名前それは確か・・・


 イプシロン・トゥカーナ


 「カーナ嬢・・・」


 私は姿見の前で両手と膝を着き項垂れる、悪役令嬢と同じ名前だった。


 ゲームの事を思い出せるだけ、思い出す事にした。

 タイトルは忘れてしまった。仕方が無い、その内に思い出すだろうと、まず内容を思い出す。


 ヒロインは全寮制の学園に入学する、そこで生徒会長をしている王子と出会う、

 カーナ嬢の魔法を使った嫌がらせもあったり、それを王子に助けられ、ヒロインはイベントを笑顔で乗り越え王子と結ばれる、


 なんでだろう・・・?妹激推しの王子の事ばかり思い出す。


 「魔法・・・使えるのかしら?」


 私は小さな手を開いたり、閉じたりしたが、使い方がよく分からないので、カーナ嬢の記憶を思い出す。


 「そうか教会で魔力検査受けないと、使えないのね。治ったら聞いてみようかな?」


 横で攻略本片手に、あーでもないこーでもないと、言っていたから耳タコ状態だったが、ここである点に気がつく、


 虐めなきゃいいんだと、

 ヒロインを虐めるつもりも無いが、他の人を虐めるつもりも無い、いじめダメ絶対!


 確かカーナ嬢の最後はこんなだった気がする。

 ハッピーエンドなら国外追放

 バッドエンドなら領地の塔に入れられ、一生幽閉される、その2つしか無かった事に安心して、私は大きく息を吐く、死罪とか言われたら泣いていたかも・・・。

 そして最大のポイントは、学園でヒロインと会わない様に過ごす事だな、


 私が考え事をしている間に、身体は熱くなり、頭がフラフラしてきた。

 姿見の前で倒れてしまい、音に驚いたメイドが慌てて部屋に入って来た所で、私は意識を失ったらしい、

お読み頂きありがとうございます。

ブックマークと評価ありがとうございます。

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