19
今回は消える事が無く正直ホッとしました。
◆
「じゃあ移動しましょー。ミクロンまたお願いねー」
ミラの号令で転移する。ミクロンは片手を上げパチンと指を鳴らす。すると闇の精霊達が集まりくるくると回る。精霊達が消えると部屋一杯に魔法陣が出来上がっていた。1番近い場所に居た私が先に乗る事になった、恐る恐る足先を魔法陣に乗せた、魔法陣の光が眩しいくらい輝きだした。辺り一面が青色からオーキッド色になる。アウラは私を庇う様に抱きしめる、何もおこらない事に2人して胸を撫で下ろす。
次に魔法陣に入ってきたのはルクバトに手を引かれたフィレムで、呆れた感じのため息を吐く、長い髪を揺らし魔法陣に入り私をチラリと見る。
「全くあの子はどれだけあの場所に魔力を使ったの?ねぇ・・・貴女もそう思うでしょ?」
「わ・・・分かりません・・・。それだけ王国の流行病を治したかったのでしょう」
フィレムは私の顔を探る様に見る、私は気まずさから目を逸らしてしまった。
正に今思い出した。湖に空の人族の羽根を使ったなんて言えなかった。(説明の時は思い出せず湖に入って魔法を使った。と簡単な説明のみだった。)
精霊王達が魔法陣に入り始めると。私は何とも言えない不安な気持ちになってきた。向こうに着いたら精霊王達にきちんと説明出来るか不安があった。
空翼の乙女を呼ぶ、だけど肝心な呼び方がイマイチ思い出せない、クルミのノートが確実に欲しくなる、そう言えば開発者の裏話がまだあった気がするのに思い出せない、
精霊王達が全員乗ったらしい、また一段と魔法陣から出る光が眩しくて私は目を閉じてしまう、目を閉じたと同時に私の手がギュッと握られた。
誰だかすぐに分かる、大きな手の平と少しゴツゴツとした感じの指・・・、いつも感じる手の感触に私はとても安心が出来た。私もお礼にギュッと握り返すと、更にお返しで恋人握りしてくれた。不安な時の好きな人の温かい手は安心出来る。
そんなやり取りをしていると、光が消え転移が終わったらしく、私はゆっくり目を開けた。私はまだ目が慣れてないからぼんやりとしか見えないけど、辺りを見れば、まだ明るく上を見上げれば太陽は真上にあった。私達がキョロキョロと見回している間、ミラはミクロンに時を止める様に言う、
「みっちゃんあの子との話が終わる迄お願いねー。」
ミクロンは「わ・・・分かった」と片手を上げる。私よりも背が低く(見た目は8歳位に見える)精霊だから歳は私達よりも遥かに上だと分かるが、手を上にあげた事で幼い感じに見えてしまう、
黒いレースの様なヒラヒラは手を覆い隠していて、ミクロンが手を上げたことで袖は肘まで上がった。足首まである真っ黒なドレスの裾を踏まずに歩き、その場で手を上にあげた。
「み・・・皆集まれ。」
闇の精霊があちこちから集まりだし、ミクロンの前には闇の精霊が大きな渦になっている、
ミクロンは沢山集まるのを確認すると精霊の渦の中に入って行った。中で何やらやっているらしい、最後にパチンと指を鳴らした音だけが聞こえた。
「出てくるわねー。」
「えっ何が?」
「お・・・終わった。つ・・・疲れた」
渦の中から声が聞こえた。最初に長い手が2本出て(そのまま手を伸ばした感じがする)、次にスラリとした長い脚が1つ地面を確かめる様に踏み出した。外を確かめる様にポンと黒い渦から頭を出すと、長い黒髪がサラリと落ちる、黒瞳はミラを見ている様で、「ミ・・・ミラお願い」と言っている。
私達は皆ポカンとしてしまった。顔が白く綺麗なので、まるで暗色ドレスのフランス人形の様にも見える。
「す・・・少し休憩する。つ・・・疲れた。」
「みっちゃんお疲れー!また大きくなったのねー!」
ミラはパチンと指を鳴らし、木陰にウォーターソファを作るとミクロンはそこに座ると、空間ポッケから飲み物を出して飲むと、ソファの肘掛け部分に手をクロスさせそこに頭を乗せ目を閉じた。見てるだけで色気が漏れ出しているのが分かる、またミューが教えてくれた。
「ミクロン様は魔力を沢山使うと身体が成長するのよ、沢山といっても回数でカウントしてるみたいだからわからなのよ。」
「そう3回使うと休憩なのよねー。」
光が落ち着きゆっくりと目を開くと、森の中の湖の近くに着いたらしい、目も落ち着いたのでキョロキョロと周りを見る、夢の中で見た時よりも木々は手入れされていて、湖もあの時と余り変わらない気がする。
「アウラ様ここの管理は」
誰がしているの?と聞こうとしたが、アウラは私の言おうとしている事が分かったらしくニッコリと微笑む、
「あぁ。ここは代々王家が管理する事になっているんだ。今は精霊の泉と呼ばれているよ。カーナに話を聞くまで精霊が多く住んでいるからだと思っていた。それにしても何も持たずにスっと行けるんだな。」
「そう言われれば・・・」
転移先も言わないのに着いた事に驚いた。
ミラに笑われた。横にいるスワロキンは肩を竦め説明する。
「知らないのは当然だろミラ、転移魔法陣を作れないから地の人族は空の人族を頼った。
転移魔法陣は簡単に説明するとだな、俺たち精霊や空の人族はその場所を思い出すだけで行ける、ただ地の人族は魔力量が俺たちに比べると極端に少ない、だから魔力がある石に頼るしかない、しかもその場だけと限定的だ、だからこうして空間ポッケも魔力量の関係で作れない、分かったか?」
「土の精霊王様・・・魔力量ですか?なるほど、なるほど・・・帰ったら試してみたいですね。」
スワロキンはそう説明をしてくれたが、私には少し難しい気がするが、隣りにいたザウラクは嬉しそうにローブから書き物を取り出すと、その場で器用にサラサラと書き始めた。ペンはあの魔力で書けるあのペンらしい、インクを使わないペンを見たミラは、ザウラクの隣りでマジマジとその手元を見る、
「ねぇー。それどーなってるのー?不思議よね?」
ザウラクはとてもいい笑顔をして話す。それはまるでいい情報源ゲットだぜ!と聞こえる様だ。
「魔法陣の意味等を教えてくれるなら、このペンをプレゼントしますよ。」
なんて聞こえた、ザウラクはなかなか交渉が上手そうだけど・・・どうかな?ミラの顔を見れば悩んでそうにもみえる、
口を閉ざしてしまったミラをそのままに、ザウラクは気にせずスワロキンにまたあれやこれと質問を始めていた様だ。ヒドゥリーはザウラクの横でスワロキンは少し引きながらも、淡々と質問に答えているから、嫌ではなさそうだ。
「お前ら俺に聞かずに自分で調べろ!」
「調べても考えてもわからないのですよ。土の精霊王様だからこうして質問しているのです。さぁどんどん質問しますのでどんどん教えてください」
そう言えば学園に行く時や王城に転移する時、石が着いたブレスレットやネックレスを付けたな。と思い出す。
そしてアルゲティの時を思い出す。確かに魔法陣を作ってその場所を思い浮かべていた。
そしてこの湖の持ち主の事も一緒に思い出した。確かアルゲティはミューにこの湖を渡すと言っていた。
「じゃあこの場所に行けたのはもしかしてミュー?」
「いいえ私よ、少し聞きたいのだけど良いかしら?」
光の精霊王フィレムが1歩前に出ると、手をスっと上にあげる。
ルクバトがどこからか椅子を持ってきてフィレムのそばに置く、フィレムは「ルクバトありがとう」と当たり前の様に座った。ルクバトはフィレムに微笑むが、私達の視線に気が付くと睨むとそっぽを向く、
「お前らは立ってろ!フィレムの素敵な声は俺だけのものだ」
「あら?ルクバト、私は貴方の事をそんな風に思った事は無いのだけれど?」
「フィレム?!」
フィレムは金色の瞳を細め、そこで暫く反省してなさい、と冷たく言い放った。ルクバトは四つん這いになると、地面に着けた手に頭を乗せ何かを呟いているようだよく聞いてみる、「フィレムが・・・俺のフィレムが・・・」聞かなかった方が良かったのかもしれない、
私達は気になるが気にしないようにしながらフィレムの方を見る、フィレムがパチンと指を鳴らすと、キラキラ光る長椅子か出来る、ミラが作るソファでは無いから柔らかく無いけど、と私達に座る様にジェスチャーする、私達は頭を下げ腰掛ける。
今ここに居るのは私とアウラ、ワルドとオレンジ髪の従者、ケーティを呼んだらなぜか一緒に来たスワロキンの6人、座り位置は私達の正面にフィレムが座り、横にはケーティ達が座っている、ルクバトはフィレムが座る椅子の後ろでまだ項垂れている、
「あら?スワロキンなぜ来たの?大人しく聞くなら聞いてもいいわ。」
「フィレムそんな事言うな、ケーティが呼ばれたから着いて来た。それに俺がいた方が話が進むと思う、いいだろ?」
「それもそうね。では始めましょうか?」
私は少し座り直した時ミラ達の姿が見えた。湖の砂を手に取り何やらミラに話しかけている、ヒドゥリーはザウラクと一緒に居て、ミラと話が盛り上がっているらしい、私は話をする為正面を向く、
「それで話だけれど、貴女ここで何をする気なの?」
「空翼の乙女を呼ぼうと思ってます。小さな精霊達とも話せるケーティの力が必要なんです。」
フィレムはケーティをチラリと見る、ケーティはローズピンクの瞳を大きく見開き、両手で口を押さえ私を見た。(私も他の人から同じ事を言われたら恐らく同じ反応をしてしまうだろう。)
けどこの説明では弱い気がする。前世ミクの話をしようか迷った時、ミューが湖の方から飛んできて空間ポッケから赤い果実を取り出した、それを手に持って私の膝の上に乗ると、私とフィレムの顔を交互に見て口を開く、
「フィレム様私があの時に・・・そっちに行った時の事覚えてるかしら?」
「えぇ、ミューはあの時私の元に来たわね。契約者が空に帰ったと慌てて帰って以来、私の所には来なかったのよね?」
「そうなのよ、契約の糸を辿ろうとしても糸が無いから、そのまま飛んで帰ったのよ。その時すでにアルゲティの姿はどこにも無かったのよ。契約の糸が切れている事でアルゲティとアウストが空に帰った事を知ったのよ。」
ミューは赤い果実をアウラにポンと手渡すと、私の顔をチラリと見るギュッと痛いくらいに私のお腹に抱きついた。グリグリと顔を私に押し当てる、
「契約が切れた時の事・・・思い出したくもないけどあの頃の話をするのよ。」
ミューは顔を上げ私に治癒魔法を掛けると、ゆっくり話し出した。
「アルゲティに頼まれてフィレムの元に行ったの、私に頼んだ事・・・それは・・・あの国を元に戻す方法と、アルゲティの力を消す方法なのよ。私は止めたのよ何度も・・・アルゲティの力を消す事は、空の人族をやめると言っているのと同じ事なのよ。」
「アルゲティの力を消す?どうゆう事だ?」
土の精霊王スワロキンは怪訝そうな顔をしてミューを見る、私も膝に座るミューを見てしまった。
力を消せると言われたフィレムは、困った顔をしてミューを見る、
「空の人族のチカラの方が精霊より強いの、それはミューも知ってる筈よね?いくら私が精霊王だからって・・・」
「フィレム様これはアルゲティが言っていた事なのだけれど、」
『あのねミューお願いがあるの。光の精霊王の所に行って欲しい、空の人族には使えない完全治癒の魔法があるのと、属性最強魔法があると聞いたわ、治癒系魔法が光属性なら何も育たないこの国に、いえ、私の力を消せないか聞いて欲しいの。ミューも見たでしょ?私のあの力を・・・不意打ちをされたアウストを庇ったシェダルが空に帰った時の事を・・・私自分がとても怖い・・・もしアウストが空に帰ってしまったら、私は制御が出来る自信が無いの、だから聞いてきて欲しい』
それで私が折れてフィレム様の所に行ったのよ。着いたら先にアウストが、その後アルゲティが空に帰ってしまったの。と前回言葉に詰まったけど、話に詰まる事も無く言えた。「話してくれてありがとうミュー」と頭を撫でると驚き顔で私の顔を見る、ケーティが恐る恐る手を上げる、フィレムがどうぞと手を出し許可をすると、私の方を向いた。
「トゥカーナ様、私は何を祈れば良いのでしょうか?」
「ケーティは母様の羽根を持ってる?」
ケーティは首を横に振ると、今の持ち主を教える、
「今ルピー姫様が持っています。羽根が持ち主を選ぶ様に飛んで行ってしまったのです。その日は丁度トゥカーナ様がお帰りになった日でした、それとピンク髪と瞳を持った空の人族のシャム様がいらっしゃいました。」
「ケーティはシャムちゃんの事覚えてるの?」
「あぁ!シイちゃんか?!」
アウラはあだ名で覚えたらしいくポンと手を打つ、
なんと!皆覚えてないのにケーティだけは名前を覚えていた。シャムちゃんならあの国の惨状を分かってくれるのでは無いだろうか?けど、問題は来てくれるかどうか?だろう、母様なら呼べば来てくれるけど、ケーティが呼ばなくてもいい気がする。
「シャムちゃんが来てくれるが分からないの、」
「シャム様はルピー姫様とお友達になられました。私が呼ぶよりもルピー姫様が祈った方が来るんだと思います。」
「おい!俺の妹を勝手に巻き込むな!」
私達の話が詰まった所でフィレムがスっと手を挙げ話し出す。
「あなたの名前はトゥカーナだったかしら?発言者の貴女が空翼の乙女を呼べばいいと思うの、はい!これで話し合いは終わりね。ルクバトいつまでしょげているのかしら?」
火の精霊王ルクバトの周りには、いつの間にか小さな赤い精霊と白い精霊達が沢山集まりフヨフヨと上下に動いている、精霊達がルクバトを慰めている様にも見えた。
フィレムの声を聞くとルクバトはスっと立ち上がり、小さな精霊達に礼を言う様にそっと撫でる、フィレムも同じ様に手を出し精霊をそっと撫で「いつもありがとう」褒める、何だかいつもって所に引っ掛かりを覚えるが、ここはスルーが1番だろう。
「分かりました。光の精霊王様それでは月が上に上がった時間に始めます。」
それに私も覚悟をしなければならない様だ。それなら夜が良いだろうそれまで少し考える時間が欲しい、だけど考えてもわからないまま時間だけが過ぎていった。でもアルゲティの時の思い出が少し整理出来たのは良かったと思う。
「カーナ無理なら止めてもいい、」
「いいえアウラ様ここで止めるなんて言えません。私なら大丈夫です。」
アルゲティの様に裸にはならないが、白く厚めの生地で出来たドレスを来た。母様から貰ったドレスは見当たらなかったので仕方がない事だと思う。聞くと私が記憶がない時には既に違うドレスだったらしい、シャムちゃんと一緒だったならシャムちゃんが着替えさせたのかもしれない、あの日だけの事はぼんやりとしか思い出せていない、
気を取り直しアウラに行ってきますと微笑むと、私は白い砂の上を裸足で歩く、精霊王達とケーティ達が見守る中私は1歩づつ湖の中に入っていく、今日は満月なのか空には大きな月がありそれが湖に映り綺麗だった。私が入る事で水波が出来て水面を揺らす。花の時期は終わったが代わりに赤い果実が見え、赤い果実が私の所に1つ流れ着いた。私はそれを手に取って食べてみると林檎みたいな味がした。ぜひうさきちゃんカットにしてルピーと王妃を喜ばせたい、
その時岸で話声がするが後から話を聞こうと思う、
夜の湖は少し冷たいが夏に入るには丁度いい水温で助かった。湖に腰まで入るとアルゲティだった時を思い出す。
「確か感じた事をそのまま言葉にして魔法にする。だったわね。」
私は空翼の乙女が来る様に祈る、そして感じたままを言葉にする。この時私は肝心な事を忘れていた。
「私は願う月と果実よ」
私は赤い果実を両手で持ち高く上にあげる、風は吹いてないがポロンと手から赤い果実が落ち、すると私の身体がほんのり月明かりで光って見えた。
「私は願う」
両手を胸の前で組み空を見つめる、その時アウラが岸で私を止めようと手を伸ばしているのが見えた。前世で見た乙女ゲームの画面そのままだが、今止める訳にはいかない、
「空翼の乙女をここに」
祈りが終わると同時に月の明かりと違う光が湖を照らす。私は目を細め光の先を見る、そこに現れたのは父様だった。私は訳が分からず首を傾げ父様を見る、父様は目を柔らかく曲げ手を私に差し出した。
「やっと元の姿になったのだな。さぁ帰ろう」
「えっ?何で父様が?」
私は父様に手を引かれ空に浮かぶと自分の姿が湖に映るが見る余裕がない、私は父様の手を振りほどきアウラの所まで飛ぶが、後ろから父様に拘束されてしまった。
「アルゲティ諦めなさい、元の姿になれば共に帰ると約束したでは無いか、」
「嫌よ父様!私は!地の人族で空の人族じゃない!離して!」
父様は言う事を聞かない子供に話す様に言うが、私は訳が分からず混乱していた。
その時後ろから風が吹く、この感じ知ってる夢で何度も・・・。
私は嫌な予感を感じながら後ろを振り向くと、白く大きな翼があった。父様の翼では無いかと何度も確かめたが、父様の翼では無かった。
「えっ?」
「さぁ帰ろう、そちらには後日私がそちらに行こう、」
父様はその場で転移魔法陣を作ると、そのまま私を魔法陣に乗せ父様も魔法陣に乗る、アウラは急いで走ってこちらに来る、スワロキンが手助けする様に補助魔法を掛け、更にアウラの走る速度が上がり私の近くに来た。私は手を伸ばしアウラの手を掴もうとするが届かない、
「カーナ!」
「アウラ様!・・・」
私はアウラに手を伸ばしたが、届く前に魔法陣が発動してしまった。
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