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第四小節:心の枷(かせ)

第四話です。

読んで下さっている皆さん、本当に有り難うございます。

今回も最後まで、アリアにお付き合い下さいませ。

受注した依頼が重なってしまった三人は、とりあえずカウンターに向かう事にした。

基本的に一つの依頼を受ける事が出来るのは、一つのチームだけである。

これは、報酬などの問題による争いを防ぐ為でもある為、傭兵達の間でも比較的に守られている規定である。

もっとも、『基本的に』なので必ずしも守られているというわけでは無い。

依頼を受けた傭兵自身が、戦力等の理由から他の傭兵を雇うという事も有る。

その他にも、正式に複数のチームで一つの依頼を受ける事も有るのだが。

ともかく、そういった規定が有る為、三人はギルドの係員と話し合いをしなければならなくなったので有る。


三人はギルドの係員に連れられて依頼係の室内に入って行くと、そのまま奥の応接室へと通された。

部屋のレイアウトは、二階の現置係に有った応接室とほとんど同じである。

三人が楽に座れそうなソファーが、向かい合わせに二つ。

その間に膝ぐらいの高さのテーブル。

部屋の奥には木製の立派なデスクが有る。

三人はソファーに並んで座り、正面に座った係員と話し合いをしている。

もっとも、


「わたしの方が先に申請し終わってたんだから、この依頼はわたしのモノに決まってるでしょ!!」


とか


「ジュースおごってあげたんだから、依頼は譲りなさいよ!!」


とか言い合っているのが、『話し合い』と言えるならばという但し書きを付け足さなければならないだろうが。

ちなみに、先程飲み物を奢ったのは『ゴルド』なのだが………。

ともかく、部屋の中の半数が否建設的な話し合いを、残りの半数がオロオロしている時、誰かが応接室に入ってきた。


「よ〜ぉ。みんな楽しそ〜だねぇ」


と、部屋に入ってきた眼帯の男が声をかける。

ギルドの係員の女性は男に向かって「課長〜」と、目に涙を浮かべながら助けを求めている。

一方、言い争いをしていた二人は


「シュルツ!!あなた、どうしてあの依頼をわたしに取って置かないのよ!!」

「シュルツさ〜ん。ヒドいんですよ。アリアがね、アリアがね」


とシュルツに詰め寄る(?)。

リディアの普段と違った態度に、ゴルドは一人でひっそりと落ち込んでいるのだが、残念な事にこの部屋には彼を気にしている余裕の有る人間は居なかった。


「おいおい。二人いっぺんに話しかけられても、わからんよ」


そう言いながら、シュルツは係員の横に座る。


「まぁ、大体の事情は聞いて来たから解ってるけどな」


煙草に火を点けながらシュルツは話しを進めるが、すぐにアリアに取り上げられてしまう。


「ちょっと、女の子の前で煙草なんて吸わないでよね」


そう言うと、アリアはテーブルの上に置いてあった灰皿で火を消してしまった。

仕方無く、シュルツは火の点いていない煙草を寂しそうにくわえながら、話しを続ける事にした。


「とにかく。俺は係が違うんだから、お前の為に依頼を取っておくなんて出来るワケ無いだろぉ?」

「でも〜」

「まあまあ。俺が取って置きの『解決方法』を持ってきてやったんだからさぁ」


そう言うと、シュルツは制服の内ポケットから一枚の書類を取り出した。

三人は書類の内容を見ると


「………シュルツさん…、これって…」

「冗談じゃ無いわよっ!!こんな…、共同受注なんてっ!!!」


シュルツが持ってきた解決方法と言うのは、ギルドが公認で複数の傭兵に一つの依頼を受注させる『共同受注』と言うものだった。


「なぁ、アリア。この依頼は、やっぱお前さん一人じゃキツいぜ」

「でも…、わたしは…」


アリアにだって、シュルツの言っている事は解っている。

自分を本当に心配してくれている事も解っているつもりだ。

しかし、これは自分の問題だという思いがある。

『魔法陣』や『異人』の関係している事件だけは…。

そんな思いに捕らわれてアリアが悩んでいると、リディアが声をかけてきた。


「そんなに悩むコトじゃ無いでしょ?誰がどうやって解決しようと、結果的に村が助かればそれで良いじゃない」


その言葉に、自分がワガママを言っているだけだという事に気がつき、アリアは急に恥ずかしくなった。


「けど、助けるってのは?一応『調査』って事になってるんだけどな〜」


とシュルツが聞くと、リディアはねたように「二人で深刻そうに話しておいて、なに言ってるんですか」と答えていた。

アリアは、リディアの顔を見ると


「あなたって、時々スゴいわね」


と言って、右手を差し出した。

恥ずかしそうに、そっぽを向いたリディアは「当たり前じゃない」と呟くと、アリアの手を握る。


「じゃ、そ〜ゆ〜事で。よろしく頼むわ」


シュルツは二人が『共同受注』を承諾しょうだくしたのを確認すると、応接室から出て行った。



次の日、アルマダから一台の馬車が出て行く。

目指すはアマ村。

戦場は、すぐそこだった。

第四話いかがでしたか?

やっとアリア達が出発してくれました。

なかなか戦闘シーンに入らないので、『残酷な描写……』って警告は必要無いんじゃないか?とも思いますが、アマに着けばアリア達が暴れまわってくれると思いますので、戦う女の子が好きな方はもう少しお待ち下さいませ。

それでは、第五小節でお会いしましょう。

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