第二小節:港町アルマダ
第二話です。
まだまだ拙い文章ですが、どうぞお付き合い下さい。
「いや〜、助かりました。それにしても、お強いですね〜」
恰幅の良い中年男がアリアに笑いかける。
ここは辺境の港町『アルマダ』に向かう街道の途中の森の中。
前回の闘いから一週間程が経っていた。
アルマダに行く予定の有ったアリアは、ついでに商人の護衛をしているのである。
「まぁ、一応傭兵ですので。野党ぐらいは…ねぇ」
そう応えながら、今回の雇い主の男に微笑みかける。
完璧な営業スマイルなのだが、そこはアリアの容姿である。
上手くすれば、帰りの車の心配も無くなるだろう。
この時代、乗り物と言えば馬車が主流ではあるが、徐々に自動車も普及しつつある。
話がそれてしまったが、ともかく先程襲ってきた野党達を軽くあしらったアリアに対して、雇い主は大満足だった。
しばらく雇い主と話しをしていると、不意にアリアの頬を潮風が撫でる。
「わぁ」
年相応の少女のような笑みを浮かべ、アリアは眼前に広がる青い海に喜びの声をあげる。
街道は緩やかなカーブを描きながら、海沿いを続いていく。
「アリアさん。アルマダが見えてきましたよ」
男の声に、街道の横に広がる海を見ていたアリアは顔を前方に向け直した。
巨大な港を擁する大都市が、アリア達を迎えているようだった。
「有り難うございましたアリアさん。またお願いします」
「こちらこそ。宜しくお願いしますね」
アリアは商人に別れを告げると、ギルドへと足を向けた。
ギルドは傭兵への仕事の紹介や、現在位置の把握などを行っている為、他の地方に移動した時には必ず報告しなければならない事になっている。
もっとも、アリアは今回アルマダで発注された依頼を受けるつもりで来たので、両方の用事で向かっているのだが。
アルマダのギルドは煉瓦造りの立派な二階建てである。
アリアは、まず二階の『現在位置報告係』通称『現置係』へと向かった。
ドアを開けると、周りの者達が奇異な目を向けてくるが、アリアは気にせず中に入って行く。
傭兵しか来ない所に、少女が入って来たのだから当然である。
それも、どこかの令嬢のような出で立ちなのだから。
アリアはそんな周囲の反応には慣れているのか、一直線にカウンターまで進むと
「現在位置報告に来たわ。」
と、係員の女性に告げた。
すると、部屋の奥のデスクで居眠りしていた眼帯の男が目を覚まして
「よう、アリアちゃんじゃないの。久し振りだな〜」
と声をかけてきた。
「シュルツ………。まだクビになってなかったのね」
シュルツと呼ばれた男は肩を竦めながら
「俺みたいにユーシューな男が、クビになんかなるわけ無いでしょ〜?」
と、『心外だ』と言いたげに応えると、奥の応接室へと手招きする。部屋に入ると、テーブルを挟んで二人は向かい合わせにソファーに座る。
「しっかし、ホントに久し振りだな〜。まだ生きてるなんて思わなかったぜ」
「わたしが、そう簡単に死ぬわけ無いでしょ。それとも、思い出させて欲しいのかしら?」
そう言われるとシュルツは、たまらんな〜と言いながら左目を覆う眼帯を掻く。
「それよりも、わたしがココに来た理由はわかっているんでしょう?」
アリアがそう言うと、シュルツの雰囲気が変わった。
先程までの飄々(ひょうひょう)としたものから、歴戦の戦士の雰囲気に。
「一応…な。此処から半日ぐらいの所に有る、漁村と最近連絡が取れなくなってる。それに、妙な魔物を見たって報告もな………『異人』だろう」
「で、反応は?」
「…有ったよ。馬鹿でかい『魔法陣』の反応だ」
それだけ聞くとアリアは立ち上がり、ドアへと向かう。
「アリア。今回はヤベェぜ?『異人』の目撃例が多すぎる」
ドアを開けようとするアリアの背にシュルツが声をかける。
アリアは振り返り微笑みかけると
「それでも…行かなくちゃ。わたしには、それしか無いんだから」
………アリアが出て行った部屋の中でシュルツは煙草に火を点ける。
「それしか無いなんて…。寂しいこと言うなよ、アリア」
吸い始めたばかりの煙草を、シュルツは苛立たしげに揉み消した。
如何でしたでしょうか?
前回よりも少し長めに書けましたよ(笑)
これからも宜しくお願いします。